インタビュー特集:米国発3DCGアニメーション『RWBY』仕掛人が語る 日本とアメリカによるアニメの「新しい形」
-
日本のカルチャーに影響を受けた米国発の3DCGアニメ。幻想世界レムナントを舞台にハンターを目指すルビーと仲間たちの活躍を描く。YouTubeでの累計再生回数は1億回を突破している(全シーズン累計)。
-
『RWBY』の日本版公開を実現させたワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社 ジャパン・コンテンツ事業グループ アニメ事業部のメンバー。右から飯田尚史氏、高寺祐太朗氏、塚本祐一朗氏。
2014年、驚きのニュースが世界を駆け巡った。日本のポップカルチャーに強い影響を受けた米国発の3DCGアニメ『RWBY Volume1』の日本版ブルーレイ&DVDが、ワーナー・ブラザース・ジャパンからリリースされることが発表されたのだ。日本ではまだ知る人ぞ知るという作品だった『RWBY』をなぜ買い付けたのか。日本展開の仕掛け人が、知られざる舞台裏を明かした。(文:山田井ユウキ)
全会一致で大絶賛だった企画会議
―― 昨年、ワーナー・ブラザース・ジャパンが『RWBY』の日本語版をリリースすることが発表になり、世界中のファンがざわつきました。当時、『RWBY』は日本では知る人ぞ知る作品でしたよね。そもそも、どのようにして知ったのですか?
高寺2012年に「Red Trailer」が公開されたときです。その時から興味を持つスタッフはいましたが、一旦は話が流れました。もう一度、話が出たのが2013年の今ごろ(11月ごろ)です。
塚本アニメ化作品検討のための企画会議を定例的に社内で行っているのですが、そこに参加していたとある社員が『RWBY』で何かやれないかと言い出したのです。トレーラーもすべて公開になり、「Volume1」のエピソードも出そろっていたタイミングで、会議の中でも「このアクションはすごい!」と話題になりました。
高寺『RWBY』を制作した「Rooster Teeth Productions」とのつながりはまったくなかったので、公式サイトのお問い合わせフォームから直接連絡を入れました(笑)。実はその時点ですでに何社かから話があったそうですが、やりとりを重ねてなんとか弊社にお任せいただけることになりました。
―― 先方の反応はいかがでしたか?
塚本『まさかワーナーから話がくるとは思わなかった』とのことで、かなり喜んでもらえたようです。
高寺作品的にも日本のカルチャーに影響を受けているとこともあり、先方のビジネスとしても日本市場のプライオリティは高く判断されていたようです。ひょっとすると、自分たちも知っているワーナーからリリースできることに親近感をもって頂けたのかもしれないですね。
―― こういった形で連絡をとって作品獲得をすることはよくあることなのですか?
高寺海外のアニメでは初めてですね。2011年にワーナーにアニメチームが発足して以来、初めての作品でした。
―― 日本でヒットするだろうかという懸念は?
塚本『RWBY』についてはまったく心配しなかったですね。
高寺とにかく「作品力がある」という判断でした。企画会議には作品を吟味する経験の豊富な人間が集まっていますが、実は彼らが全会一致で「これはいい」と賛同したのは『RWBY』が初めてだったのです。
日本と海外、それぞれの良さが融合
―― それはすごいですね。皆さんは『RWBY』のどこに魅力を感じましたか?
高寺まずはアクションの迫力ですね。緩急入り混じりながら流れるように展開されるアクションとカメラワークで構成される長尺の殺陣は、観ていて鳥肌が立ちます。特に、「Volume1」本編中盤のクライマックスとなる遺跡でのアクションは必見です!ボーカル曲と映像・SEなどのマッチングが素晴らしくて、非常に力のあるシーンになっています。それに、武器の発想もすごいですね。例えばシーズンの最後の最後で2挺のショットガンをつなげたヌンチャクを両手に凄まじいアクションを展開するキャラクターが登場したり、遠隔操作できる大量の短剣で大勢の敵を圧倒し、ビームを発射して飛行機を真っ二つにしたり…あれを限られた予算と公開ギリギリのタイミングで考え出して実現させる、というのは尋常じゃないこだわりですね。監督のモンティ氏はいわゆる「アクション映像オタク」だった方で、ゲームや映画などあらゆるジャンルのものを膨大にインプットしているから引き出しがすごく多いのです。それが作品に現れていますね。
塚本アクションだけでなく、キャラクターも『RWBY』ならではの魅力ですよね。制作したのは米国人ですが、すごく日本人がとっつきやすいキャラクターデザインです。僕は日本の深夜アニメが好きでよく見るのですが、その視点から見ても『RWBY』のキャラクターは親しみが持てて入りやすいと思います。
高寺その一方で、キャラクターが日本的な文脈で類型化・テンプレ化されてしまってはいないんですよね。一見ありがちに思える造形でありつつも、掘り下げていくとキャラクターの背景や解釈が日本のトレンドとはと全く違っている。キャラクター一人ひとりが独特な個性を持っていて、それがしっかりと表現されていると思います。
塚本日本の良さと海外の良さを融合したような、いい意味での違和感や新鮮さがとても魅力的で
海外ドラマファンにもおすすめしたい骨太の作品
―― 日本的な部分と海外的な部分について、もう少し詳しく教えていただけますか?
高寺キャラクターと演出は日本的なのですが、脚本と音楽の使い方は北米のフォーマットだと感じますね。たとえばBGM(劇伴)は脚本の内容に基づいて一エピソードごとにまるごと一曲ずつ長尺のもの作り、映像と音楽とを合わせていく。シーンと音楽が個別にリンクしているので、劇伴の使いまわしは基本的にありません。こういう作り方は日本ではあまりしないと思います。脚本にしても、学園もの自体は日本でもライトノベルなどで見慣れたフォーマットですが、そこに人種差別やスクールカーストなどが絡んでくるのは北米的ですね。日本ではあまり馴染みがありませんが、向こうの映像作品ではある意味典型的で、馴染みのある内容です。
飯田『RWBY』はキャラクターこそ日本的ですが、脚本やセリフ回しはむしろ海外ドラマのフォーマットで制作されています。普段アニメを見ない人や、海外ドラマが好きな人が見ても必ず楽しめる作品だと思うので、「アニメだから」と敬遠しないで洋画や海外ドラファンもぜひ見てほしいですね。
アニメに詳しいお笑い芸人 サンキュータツオも絶賛!
見どころはアクション!
アニメの様式美と海外の映画のメソッドが融合している作品。 日本のアニメ好きクリエイターが集まって作ったというバックボーンを抜きに、この作品を楽しむ大きなポイントはアクションです。
3DCGアニメだからこそできる表現を追求していて、映像作品としても新しい。今までなかったアクションシーンを体感していただきたいです。海外のクリエイターが日本のアニメや美少女キャラをどう解釈しているかが見えるところも面白いですね。