日本の技術がブドウを守る救世主になろうとしています。

12/03 23:50
ワインに欠かせないブドウ。その生産の現場にも、温暖化の波が押し寄せる中、日本の技術が、ブドウを守る救世主になろうとしていました。

ドイツ最古のワイン産地として知られている、ドイツ西部のネーフ村。
涼しい気候で知られるこの地方では、白ブドウが、生産の大半を占め、それを生かして白ワインを製造してきた。
しかし、ワイン農家が試飲していたのは、白ワインではなく、赤ワイン。
その理由について、ワイン農家のハンツ・ペーターアムリンガーさんは、「完熟の具合が変わった。ここ20年は、気候が、ピノノワールにとって、よい方向に変わった」と話した。
ピノノワールとは、赤ワインの原料となる代表的なブドウの品種の1つで、これまで、フランスのブルゴーニュ地方以外での栽培は、難しいとされてきた。
しかし、温暖化の影響で、この村でも、質の良いピノノワールが収穫できるようになってきたという。
そして、逆に、温暖化の影響により、この地方本来の特産品が、絶滅の危機にひんしている。
この地の特産品は、冬場の厳しい寒さを利用した「アイスワイン」。
原料の白ブドウは、マイナス7度以下の寒さの中で、木になったまま、凍らせて収穫。
糖度が高く、成分が濃縮されることで、芳醇(ほうじゅん)な香りに仕上がるワインとなることから、最高級ワインの1つと言われている。
しかし、ワイン農家のクリスティアン アムリンガーさんは、「冬は、もっと暖かくなる。霜が少なく、降りる時期も遅いので、アイスワインは希少になるだろう」と語った。
温暖化の影響で、冬でもブドウが凍らず、アイスワインの製造ができなくなっている。
あるワイナリーでも、2012年を最後に、アイスワインの製造を断念。
2015年も、厳しい状況だという。
現在、パリで開催されている「COP21」のテーマも温暖化。
そのCOPの舞台で、日本のある農業技術が、注目を集めている。
富士通グリーン戦略統括部・藤井正隆統括部長は、「人がやるべきものと、ITでやった方が、早く合理的なもの、そこを峻別(しゅんべつ)して、気候変動、その他災害に備えるということに取り組んでいます」と語った。
その技術を使ってブドウを育てている、山梨・勝沼のワイナリーを訪ねた。
ブドウ畑の真ん中に垂直に伸びた装置。
奥野田葡萄醸造株式会社・中村雅量代表取締役は、「10分に一度、温度、湿度、雨が降っているかいないかを観測している」と語った。
この装置によって、10分ごとに観測される温度・湿度・雨のデータは、インターネットを介して、サーバーに蓄積される。
ここに、スマホでアクセスすれば、いつでも、10分前の畑の様子がわかる。
奥野田葡萄醸造株式会社・中村代表取締役は、「畑に近づいてくる病気の危険を察知することが、すぐにわかるようになって」と話した。
青い線が気温、赤い点線が湿度の線。
このように、日中、温度も湿度も高い、蒸し蒸しした状態が長く続くなどして、カビなどの悪い病気が畑に発生するおそれがある場合、そのリスクを正確に把握できるようになった。
奥野田葡萄醸造株式会社・中村代表取締役は、「(このシステムがないときは?)勘です、勘。僕たちの祖先が、月を見ながら、毎日、そこで感じて対処していたことを、センサーと通信でやっていくっていう」と語った。
このシステムを導入したことで、このブドウ畑では、殺菌剤などの散布回数が、格段に減ったという。
こうしたIT技術を生かして、効率的な生産方法を実現することも、温暖化時代の農業の在り方を変える、1つの鍵となっている。

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