金融庁がいま全国の企業1千社を対象に、取引金融機関への意見や要望を聞き取る初の試みに取り組んでいる。地方企業には、地元の金融機関に融資を求めても聞く耳をもってくれない、という不満が少なくない。そんな生の声を直接集め、金融機関側に示すことで、企業に資金を回して産業を育成する金融本来の業務を強めていくことを狙っている。

 金融庁の試みについては「役所の過剰介入だ」「新たな裁量行政を招きかねない」という見方もできよう。しかし、いまの地方金融は、地元企業を生み育てるという本来の仕事からほど遠い。地方金融の問題に取り組む金融庁の試みは、やってみるだけの価値がある。あとは、金融機関側がこれにどう応えてくるのか。その点に政策の成否がかかってくると言える。

 金融庁といえば一昨年大ヒットしたドラマ「半沢直樹」に登場する黒崎検査官のように不良融資に厳しいイメージが強い。発足以来、15年間にわたって「金融処分庁」と呼ばれるほど多くの金融機関に業務改善を命じ、破綻(はたん)処理してきたからだ。それもバブル崩壊や金融危機を通じて生じた負の遺産の処理に迫られていた事情があった。

 不良債権問題を収束した今、焦点は銀行経営そのものから、融資先企業や地域経済の再生に移ってきた。地元の工場や商店が事業の手をいっそう広げ新しいビジネスに挑み、より多くの雇用を地元で生まなければ、地域再生は実現しない。それには新しい投資資金が必要となり、金融機関に前向きな融資を奨励する行政が必要となる。

 ところが、少なからぬ地方金融機関がみずからの経営安定を優先し、疲弊する地元への融資に後ろ向きになっているという。地元そっちのけで、東京や大阪など大都市での融資事業に傾斜する地銀も増えている。金融庁の意見聴取では、ある旅館経営者から「銀行担当者が訪ねてくるのは担保追加を求める時だけ」という批判も飛び出したそうだ。

 これでは金融機関が自分の首をしめているようなものだ。地元経済の発展なくして、地域金融としての成長もありえない。すぐ業績にあらわれなくとも、地域おこし百年の計で地元企業を育てていこうという発想が欠かせないのではないか。不動産などの担保がないと融資しないという従来のやり方でなく、それぞれの事業の将来性を適切に評価し、ときに助言や協力も惜しまず企業を育てていく。

 そんな金融が今、必要だ。