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【社会】

空自基地の表示外し 施設案内、部隊名…安保法の影?

東日本の空自基地内にある掲示板。以前は部隊名を示す看板が掲げられていた

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 航空自衛隊の航空総隊で10月以降、部隊名を表示する看板などを外す動きが進んでいる。人工衛星などを使った外国による情報収集を防ぐ狙いというが、対象はなぜか隊員がかぶる帽子にまで及ぶ。自衛隊や防衛省内部からは「自衛隊の一部だけでこんなことをして効果はあるのか」といぶかしむ声も聞かれる。 (中山高志)

 航空総隊は実戦部隊を束ねる組織で、総隊司令部は二〇一二年に空自府中基地(東京都府中市)から、日米の連携強化のため米軍横田基地(同福生市など)内に移転した。総隊司令部などによると、十月一日付で当時の総隊司令官が、全国の空自基地内にある所属部隊に通達を出した。文書は「基地案内」「庁舎案内図」「正門の名札」「部隊の看板」「部屋などに貼ってある印刷物」について、出入り業者など部外者向けに必要な物を除いて外すよう促している。野球帽の形で部隊のマークなどをあしらった「識別帽」も対象になった。

 総隊では、基地内のどの建物にどの部隊が入っているか公表していない。通達で対象となった看板や案内図、帽子、印刷物は部隊名が記されているものが多く、総隊司令部は、外国の人工衛星で基地内の部隊の位置を知られることを防ぐなど、情報を守る保全活動の一環として通達を出したと説明している。

 東日本の基地に勤務する隊員によると、通達後、建物ごとに掲げる総隊所属部隊の看板、基地入り口で部隊名を表記する名札、部署名を示す廊下のプレートが外された。識別帽だけでなく、部隊名を示したTシャツの一部も着用が止められたという。

 隊員は「ずっと昔から立つ看板を、今ごろ外してどうするのか。仲間も『無意味な対応』と嘆いている。九月の安全保障関連法成立で、テロなどの発生を想定した過剰反応ではないのか」と疑問を投げかける。

 総隊司令部は、安保法と通達との関連性を否定した上で「平素の保全活動の一環。今回は試行段階で、現場の意見を吸い上げて検討する」とする。防衛省関係者は「自衛隊の中で同様の通達が出た例は、ほかにほとんどない」と言う。

 元空自幹部で軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹さんは「安保法成立で日米が共同作戦に当たる場面が増えることから、情報保全に取り組む姿勢を米国に示す狙いがあるのではないか。今後は、自衛隊内部の情報保全の動きはより強まるだろう」とみる。

 一方で「基地内の看板程度の情報は、すでに外国に把握されている可能性が高く、今ごろ保全対象とすることにどれだけの意味があるのか。看板などをなくすことによる内部的な混乱の方が懸念される」と首をかしげる。

 <航空総隊> 航空自衛隊の中で、実際に戦闘任務に当たる第一線部隊を束ねる組織。具体的には、レーダーや空中警戒管制機などにより日本の空を監視し、領空侵犯のおそれがある飛行機を発見した場合には緊急発進して侵犯を阻止する。横田基地にある総隊司令部のほか、各地の空域で防空を担う北部(司令部・青森県三沢基地)、中部(同・埼玉県入間基地)、西部(同・福岡県春日基地)の航空方面隊、南西航空混成団(同・沖縄県那覇基地)などで構成される。

 

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