千葉雄高
2015年12月4日07時33分
菅直人元首相が、東京電力福島第一原発事故時の対応を批判した安倍晋三首相のメールマガジンの記述で名誉を傷つけられたと訴えた裁判で、東京地裁は3日、菅氏の損害賠償などの請求を退けた。「菅氏が止めた」と記述された原子炉への海水注入について、判決は「菅氏には注入を中断させかねない振る舞いがあった」と指摘。「記述は重要な部分で真実だ」と述べた。菅氏は控訴する方針。
判決によると、安倍首相は野党当時の2011年5月20日付のメルマガで、原子炉を冷やすための海水注入について「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」などと書いた。
判決は、海水注入をめぐる官邸での会議について、国会の事故調査委員会が「総理の発言を契機に海水注入の議論が仕切り直しになり、東電本店が注入停止を決断するに至った」と指摘した点を引用。「記述は重要な部分で真実」と判断する根拠とした。
海水注入は、実際には中断されなかったことが、後の東電の発表で明らかになっている。
判決後、菅氏は東京都内で会見。判決について「海水注入は中断していないと認めているのに、『中断した』との記述を真実だとするのは論理矛盾だ。とても納得できるものではない」と批判した。
安倍首相は事務所を通じ、「官邸における原発事故問題の本質を真正面から認めていただいた。真実の勝利ではないかと思います」との談話を出した。(千葉雄高)
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