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LINEの「巨大グループ」に迫る

12月2日 18時47分

鈴木笑記者

「スマホネイティブ世代」ということばが、今注目されています。幼いころからパソコンよりスマホに慣れている今の10代の子どもたちの情報やコミュニケーションに対する考え方は、上の世代とは大きく異なっていると言われています。
国内の10代のスマートフォンの利用率は、昨年度の調査で68.6パーセント(総務省調べ)。幅広く普及したスマホで10代によく利用されているのが、無料通話アプリの「LINE」です。この「LINE」を入り口に子どもたちのスマホの利用について取材を進めたところ、大人たちには思いもよらない世界が広がっていました。
報道局遊軍プロジェクトの鈴木笑記者が解説します。

「LINEで誰と話しているの?」

まずは原宿で中学生や高校生に尋ねてみたところ、大半の子どもたちが、顔も名前も知らない、会ったことのない人とLINEのやり取りをしたことがあると答え、中には600人もの友達がいるという子や、会ったことのない人と実際に会う約束をしている子もいました。
LINEには「グループ」という機能があり、最大200人が同時に文字やイラストで会話をすることができます。自分の名前は自由につけることができ、個人情報は明かさずに多くの人とやり取りできるわけです。
そこでどんなことが話されているのか?メンバーのほとんどが中高生だというグループに、私も入ってみました。
しかし会話の内容は「んんんんんんんんんん」や「は」など、意味のないことばがひたすら並ぶだけ。これで楽しいの・・・?
グループに所属している高校1年生の女の子に会って話を聞いたところ、「全く意味のないような会話でも、多くの人が自分のつぶやきに反応してくれるのが楽しい」とのこと。

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友達増加を請け負う「拡散屋」

この女の子は学校の友達に誘われてあるLINEのグループに入りました。LINEではやり取りする友達を登録する機能がありますが、そのグループに入ったとたん、友達の数が急激に増えました。
「『拡散屋』っていう人がいるんです」
彼女の説明によると「拡散屋」という役割の人がいて、友達を増やしたい人から依頼を受け、その人の情報を他のグループにも流し、興味を持った人が、その人に連絡をしてくる仕組みだということです。
拡散してもらったことで、女の子の友達は一時は300人まで増えました。
女の子はスマホの画面でイラストを描くのが好きだということです。(パソコンでは描いたことがないそうです)
そして「いつでも誰かに絵を見てもらったり、やり取りできるようになった」と話していました。

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浮かび上がる巨大グループ

さらに聞くと、彼女が所属しているグループも、拡散屋が情報を流す複数のグループも、ひとつの大きな組織のもとに統率されているということでした。ネットで見つけた、その「帝越」(みかごし)というグループのサイトには、「会員数1万5000人」「安心と繋がりを提供する」とありますが、実際にどのような活動をしているのかはよく分かりません。
その組織の「総裁」を名乗る人物とコンタクトを取ることができました。東京都内の待ち合わせ場所に姿を現したのは、あどけなさの残る男の子。1万5000人もの組織を束ねていたのは、都内の高校に通う高校1年生の黒川祐希さん、15歳でした。
組織を立ち上げたのは、中学2年生のときだということで、もともとはLINEでどれだけ大きなグループを作ることができるのかという、好奇心からだといいます。
「LINEにおける僕のアカウントの拡散力や影響力が少なかったら、つまらないじゃないですか。そのアカウントの影響力が強ければ強い方がいい。(ツイッターの)フォロワーを増やしたいのと同じです」(黒川さん)

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子どもたちの居場所にも

好奇心や、自分を知っている人を増やしたいという思いで運営し始めた組織は、メンバー数が一時3万人を超えるほど急成長しました。ふだんは中高生たちの気軽な雑談がほとんどです。しかし顔も名前も知らない人どうしがつながるグループでは、学校などで面と向かって話せないような深刻な悩みが打ち明けられる場面もあるということです。
黒川さんは以前グループで知り合った女の子から、「父親から暴力を受けていて、自殺を考えている」と相談を受けました。
「実際にそういう人がいる」ということを実感して「そういう人の居場所になれれば、グループにも価値があると思った」と話します。
「親の世代にも自分たちが子どもだったころを想像してみてほしいんです。子どもだったころ、誰しも思春期ってあるじゃないですか。それで孤独を感じたり、夜にすごい寂しくなったりしたときに、スマホがあってLINEを開いたらグループがあって、仲のいい人と連絡できる、コミュニケーションがとれる環境があったらどうでしょう?同じようにLINEで会話するのではないでしょうか」(黒川さん)

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大人がその世界に歩み寄ること

スマホという便利な道具の普及によって、子どもたちのコミュニケーションが大きく変わり、悩みや寂しさを共有したり、解消したりする方法も多様になってきています。
一方で、見知らぬ人と簡単につながったり出会えたりすることは、思わぬ危険につながりかねず、やはり心配です。
子どもたちを危険から守るには、大人が、スマホの世界の仕組みを理解できないからと言って聞く耳を持たなかったり、単に禁止したりするのではなく、理解する努力をして歩み寄ることがまず必要なのではないかと感じました。

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