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 シリアでは、アサド政権を支えるロシアが軍事介入した9月末以降、空爆が激化している。過激派組織「イスラム国」(IS)ではない反体制派の勢力圏で顕著だ。トルコに一時避難した住民らが、記者に現状を証言した。

 「警告なしで空爆を受けたのは、初めてだった」。シリア北部イドリブ県カンソフラ出身の無職モハマド・サヤディさん(22)は、10月6日の空爆を振り返った。

 その日はサヤディさんの婚約式だった。婚約指輪とタキシードを店に受け取りに行こうとちょうど自宅を出た時、道で遊んでいた隣家の少女(6)が「飛行機!」と遠くの空を指さした。

 今まで聞いたことのない轟音(ごうおん)が、瞬時に上空に達した。自宅から数百メートルの範囲で少なくとも4カ所、爆音とともに黒煙が上がり、地震のように地面が揺れた。サヤディさんは、立ち尽くす少女を抱いて逃げた。

 カンソフラは、米国などが支援する反体制派の自由シリア軍と、国際テロ組織アルカイダ系のヌスラ戦線が二分し、共存する。これまでも政権軍の空爆を受けてきたが、「政権軍の動向を監視する反体制派から、住民が持つ携帯用の小型無線機に必ず警告が入った」という。住民には、無線機の警告が命の綱だった。

 だがその日から、虚を突く空爆が続く。反体制派が警告できないのは、監視が及ばない基地から発進するロシア軍機だからだと、サヤディさんは考える。「9月末から、空爆で町がどんどん壊れていく。でも生き続けなければ」