Updated: Tokyo  2015/12/04 00:14  |  New York  2015/12/03 10:14  |  London  2015/12/03 15:14
 

木内日銀委員:出口で損失7兆円と試算、引当金見直し「十分でない」

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    (ブルームバーグ):日本銀行の木内登英審議委員は3日午後、都内で講演し、量的・質的金融緩和の出口で日銀の損失が7兆円に達するとの試算を示した上で、日銀が財務相に要請している引当金制度の拡充も「十分ではない」との見方を示した。

木内委員は「量的・質的金融緩和の出口では、正常化の過程で付利金利を上げないといけない。この場合は掛け算で利子負担が増えていく。今は0.1%だが、たとえば2%の物価安定目標が達成されたとして2%にすると、当座預金残高は今は242兆円だが、2年くらい経ち2017年あたりになるとどこかで400兆円くらいになるので、利子負担が8兆円増える」と述べた。

一方で、「利子所得については、保有長期国債の残高は増えるが、利子は減っていくので、1兆円くらいで比較的横ばいだろう。これはわれわれのメーンシナリオではないが、計算上は7兆円くらいの損失になる」と語った。

その上で、「損失が7兆円出ると、日銀の資本は7兆円くらいしかないので、これが1年でなくなってしまう可能性がある。バランスシートをこれだけ拡大させたことによって、正常化の過程でわれわれの収益に対する影響は非常に大きなものがある」と語った。

日銀は量的・質的金融緩和の下で巨額の長期国債を買い入れており、9月末の残高は262.8兆円に達する。日銀に長期国債を売却した金融機関は日銀の当座預金に資金を積み上げており、その残高は242.2兆円に膨らんでいる。日銀は長期国債の購入をスムーズに行うため、当座預金に0.1%の金利(付利)を付けている。

財務相に引当金制度の見直しを要請

日銀は11月13日、量的・質的金融緩和の出口に伴い日銀の財務に赤字が発生することを避けるため、2015年度以降の決算で引当金制度の見直しを行うよう、麻生太郎財務相に要請した。

黒田東彦総裁は11月19日の会見で、「基本的に量的・質的金融緩和を行っている間は、当然だが長期国債の買い入れ等が大きく増えるので、利息収入が増加することで収益が大幅に増加する」と指摘。他方、「将来金利が上昇する局面になると、具体的な政策手段はいろいろあると思が、付利金利の引上げや資金吸収オペなど、その他それぞれの対応によって、今度は収益が下振れる可能性がある」と述べた。

木内委員は3日の講演で、引当金制度を見直しても「年間4、5千億円だと思うので、十分ではない」と指摘。将来、日銀の収益が悪化して納付金が払えなくなる可能性もないわけではない、と述べた。

さらに、「納付金が減るということは、政府の歳入がそれだけ減るということで、財政に影響を与える。歳出を変えなければ、その分、増税などが必要になる。あるいは歳入が減った分、歳出を減らす必要も出てくる。政府の所得配分に大きな影響を与える」と話した。「その時、日銀はとても大変な政策をやり、そんな政策をやってよかったのか、という議論になってこないとも限らない」と語った。

黒田総裁は10月30日の会見で、「量的・質的金融緩和から出口に差し掛かった際に収益が減るとか、あるいは赤字になる、そういうことがあり得るので金融緩和をしない、2%の物価目標は達成しなくてもいい、とは思っていない。資本基盤は十分考慮しつつ、2%の物価目標を達成しなければならない」と語った。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 上野英治郎, 平野和

更新日時: 2015/12/03 18:48 JST

 
 
 
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