交際相手をメッタ刺しにした性同一性障害の元男性に懲役18年求刑

2015年12月3日14時42分  スポーツ報知

 今年2月、同居していた交際相手の男性を殺害したとして殺人罪に問われた、東京・銀座の元ホステスで無職の菊池あずは被告(29)の裁判員裁判の論告求刑公判が3日、東京地裁(石井俊和裁判長)であり、検察側は懲役18年を求刑した。判決は4日に言い渡される。

 白いジャケットにグレーのパンツ姿の菊池被告は、髪を無造作に後ろで結び、パンパンに膨れた顔で傍聴席を眺め、約180センチの長身をかがめるように猫背で入廷した。逮捕後に、インターネット上で「美しすぎる殺人者」などと揶揄(やゆ)されていた容姿とは、まるで別人だった。

 公判では、被害者・平田勇二さん(当時48歳)の姉と兄が意見陳述で証言台に立った。6つ年上の姉は、事件翌日、遺体確認した際、頭部が包帯でぐるぐるに巻かれ、口元とまゆげに縫い跡のある「弟」と対面したが「本人と断定できない」状況だったなどと話した。現場となった平田さんのマンションの部屋では、玄関から見えたおびただしい血とにおいに足がすくんだという。

 続けて姉は「弟は、猫が大好きな優しい人間で、被告人に対して『お前に愛情はない。あるのは情けだけだ』と言ったとは到底思えない」と、被告の陳述を否定。「被告人から連絡は一切なく、裁判の日程が決まると『30万円受け取ってくれ』と言ってきた。遺族をバカにするのもいい加減にしてほしい。一生許すことができない。2度と私たちが住むこの社会に戻ってきてほしくない」と強い処罰感情を露わにした。5つ年上の兄は「弟は、収入や貯金がなかった被告の面倒を見ていたのに、その恩を忘れ無慈悲に命を奪った」と怒りを抑えながら話した。

 検察側の論告によると、菊池被告は、犯行前日に牛刀や金属バットを購入し部屋の中に隠し、平田さんの就寝時を狙った。襲撃時、平田さんが「助けてくれ、仕事に行けなくなる」と懇願したが、バットで頭を2回殴り、腹部を牛刀で何度も刺し、右胸に深さ9センチの傷を負わすなどして殺害した。

 検察側は、被告が患っている広汎性発達障害などの影響はなかったとして、「自己中心的な動機による計画的で極めて残忍な犯行」と述べ、懲役18年を求刑した。真っ赤な顔をした菊池被告は、前かがみの姿勢で、検察側をジーッと見つめていた。

 一方、弁護人は最終弁論で、広汎性発達障害などの影響で、「被告人は人間関係がうまくいかなかった。変化することが苦手で、引き返すことができなかった。懲役10年が妥当」などと情状酌量を訴えた。

 最後に意見陳述を促された菊池被告は、うわずった声で「本当に申し訳、ご、ご、ご、ござませんでした」と2度述べた。弁護人によると、被告は性同一性障害で性別適合手術を受けており「現在、女性ホルモンを投与されないため精神的に不安定になっている」と説明した。

 起訴状では2月2日、東京都中央区のマンションで飲食店従業員・平田勇二さんを包丁で刺すなどして殺害した、としている。検察側は冒頭陳述で、2人が別れ話になった際に「平田さんに『愛情はない』と言われ、殺害を計画した」と述べた。菊池被告は起訴内容を認め、争点は量刑に絞られていた。

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