【将棋】カロリーナは黒星デビュー 外国人女流棋士が刻んだ歴史的一歩

2015年12月3日6時0分  スポーツ報知
  • 女流名人戦の予選で“ホロ苦デビュー”となったカロリーナ・ステチェンスカ
  • デビュー戦に敗れ、苦笑いを浮かべるカロリーナ・ステチェンスカ女流3級

 ◆報知新聞社主催 第43期岡田美術館杯女流名人戦 ▽予選1回戦(2日、東京都渋谷区「将棋会館」)

 今年6月に外国人として初めて将棋の女流プロ(2級以上)の仮資格、女流棋士3級となったポーランド人のカロリーナ・ステチェンスカ女流3級(24)が山口恵梨子女流初段(24)とのデビュー戦に臨み、先手番の92手で敗れ、黒星スタートとなった。敗戦後は「悔しいですが、まだまだ強くなれると思っています」とすぐに前を向いた。正式資格となる女流2級への昇級を目指す。次局は来春を予定している。

 栗色の髪をかき上げ、ブルーの瞳を閉じる。数秒後、カロリーナは消え入るような声で投了を告げた。「負けました…」。すぐ始まった感想戦では、日常会話も可能になるほど上達した日本語で分岐点の局面を対局相手と検討した。

 仮資格から正式資格へ。将棋の歴史に新たな一ページを刻むために踏み出した第一歩だったが、洗礼を浴びた。「悔しいですし、ちょっと疲れました。後で残念な気持ちになると思いますけど、残念な気持ちが新しいモチベーションになります」。謙虚に敗北を受け入れた。

 デビュー戦の相手は、一昨年の女流王座戦1次予選でも対局して完敗した山口。「リベンジしたかった」。振り駒で先手番となり、戦型は相三間飛車に。序盤の構想は「作戦勝ち」と振り返ったが「デビュー戦だからちゃんと指さないとって思いすぎました」。2時間の持ち時間を小刻みに消費し、勝負所で長考できなかった。「(中終盤は)感覚で指してしまいました。もっと考えたかった」。アマチュア時代から数えて公式戦は8局目(通算4勝3敗)だが、早指しではない通常棋戦の対局は一度きり。経験を次局の糧とする。

 遠いワルシャワの地で将棋と出会ってから7年後のデビュー戦だった。2008年、日本漫画「NARUTO」で登場人物が将棋を指すシーンを読み、興味を持った。インターネットで指してみると、すぐに夢中になった。12年、海外招待選手として出場した女流王将戦で勝利。翌年、女流棋士を目指して来日。留学生として山梨学院大経営情報学部に通いながら、女流棋士養成機関「研修会」に入会。今年6月、規定の成績を挙げて女流3級への昇級を果たした。

 しかし、女流3級は仮資格に過ぎない。取得から2年間で規定の成績を挙げ、正式な資格である「女流2級」に昇級しないと資格は剥奪され、研修会への降格を余儀なくされる。「もちろん女流2級が目標。勝ちたい」。男性でも過去に外国人棋士は誕生していない。挑戦は始まったばかりだ。

 例年、クリスマスと年末年始はポーランドに一時帰国し、家族や友人らと過ごす。「毎年、日本に戻る直前はちょっとさみしいです。いろんなサクリファイス(犠牲)があります。だから将棋を頑張らないといけない。今日の負けはちょっとつらいけど、来年も頑張ります」。勝負師の顔で言った。(北野 新太)

 ◆カロリーナ・ステチェンスカ 1991年6月17日、ポーランド・ワルシャワ生まれ。24歳。片上大輔六段門下。2008年、インターネットで将棋を始める。13年に来日し、山梨学院大経営情報学部日本文化専攻4年に在学中。好きな和食は天ぷらそばと回転ずし。得意戦法は三間飛車と中飛車。家族は両親と双子の妹。甲府市在住。

 ◆女流棋士 将棋のプロは男女の別を問わない「棋士」と女性のみの「女流棋士」に分かれ、制度が異なる。女流棋士は養成機関「研修会」で規定の成績を残すと仮資格「女流3級」となって棋戦出場が可能。「昇級後2年間で参加公式棋戦数の4分の3以上の勝ち星を得る」などの規定を満たせば正式資格「女流2級」となる。規定の2年間で満たせないと資格を剥奪される。

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