北極海:権益拡大目指す日本、米と定期会合創設へ
毎日新聞 2015年12月03日 15時00分
政府は、北極海周辺での航路や資源の開発を巡る権益拡大を目指し、北極海利用に関する定期的な日米会合の創設を米政府に要請することが分かった。3日に米ワシントンで開く、島尻安伊子・科学技術担当相と米国のホルドレン大統領補佐官(科学技術担当)の会談で合意する見通し。日本は科学技術分野での貢献を通じ、世界的に関心が高まる北極海利用の国際ルール作りでの発言権を確保したい考えだ。【斎藤広子】
北極海では地球温暖化の影響で氷が減少して利用可能な海域が拡大している。このため、太平洋と大西洋をつなぐ新たな航路開拓や鉱物・生物資源の開発の可能性が急速に高まっている。日本政府も今年10月、総合海洋政策本部(本部長・安倍晋三首相)で初の北極に関する基本政策を取りまとめ、「科学技術を最大限活用し、国際ルール形成への貢献などに取り組む」などとする方針を決めた。
南極には、領土権の主張などを禁じた南極条約があるが、北極にはこうした国際ルールはない。北極海を巡る資源開発や環境保護などに関する意見調整は、沿岸国を含む8カ国が作る北極評議会(カナダ、ロシア、米国、北欧諸国)が担う。北極海に面しない日本は2013年、中国や韓国とともに議長裁量で発言や文書提出が可能な「オブザーバー」の資格を得た。
政府は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測衛星「しずく」などを活用して北極海の氷の状況を監視するほか、米アラスカ大に日米で設置した国際北極圏研究センターで北極圏の気候変動に関する研究を強化。こうした科学技術分野での協力から米国との連携を深め、評議会における役割や発言権の強化を目指す。
【ことば】北極海
北極を中心に、ロシア、カナダ、米国、デンマーク、ノルウェーの5カ国に囲まれた海。現在、大部分は夏季以外は凍結しており、真夏は太陽が沈まず(白夜)、真冬は太陽が昇らない(極夜)日がある。南極と異なり大陸はない。北極海を通過する航路は欧州とアジアを結ぶ最短の海上ルートと考えられ、スエズ運河経由よりも約4割短縮される。また、米地質調査所によると、北極海の海底には石油が世界全体の13%、天然ガスが同30%あると推定され、豊富な鉱物資源も存在するとみられる。