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政府は鬼怒川の堤防の決壊のあとで、とりあえず応急措置として、堤防の簡易補強を打ち出した。
《 未整備の堤防、簡易補強へ…鬼怒川決壊で国交省 》
関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊したことを受けて、国土交通省は、かさ上げなどの本格的な整備が遅れている堤防を対象に、応急措置として簡易な工事を進める方針を固めた。
(鬼怒川の)現場では、堤防を越えて水があふれ出す「越水」から約2時間後に決壊。
同省の調査では、堤防を乗り越えた水が住宅地側の底部を掘って崩し、盛り土も崩壊したため、短時間で決壊した。このため、
〈1〉堤防上部をアスファルトで舗装
〈2〉住宅地側の底部をブロックで補強
――などの対策を施して堤防を壊れにくくする。
( → 読売新聞 2015-12-02 )
これはダメだ。なぜか? 次の認識が誤っているからだ。
「堤防を乗り越えた水が住宅地側の底部を掘って崩し」
これがおかしい。
堤防を乗り越えた水なんてのは、深さが1〜3cm ぐらいの水だ。ごく小量だ。また、滝のように垂直に落下するのではなく、堤防の裏側の斜面をなだらかに下っていっただけだ。そんなものが、「底部を掘って崩す」というようなことはありえない。あり得ないことを、堤防決壊の原因だと見なしている。
つまり、国交省は、堤防決壊の原因を根本的に勘違いしている。
では、正しい原因は何か? それは、すでに下記項目で示した。
→ 堤防決壊の原因と対策
ここで、次の図を掲載した。
出典( PDF )
この中央の図を見ればわかる。
堤防が決壊するとき、確かに堤防の裏側の(株)が崩壊する。しかしそれは、堤防の外から水が注いだからではなく、堤防の中から水がしみ出ていくからなのだ。堤防は、外から何かを作用されるのではなく、堤防自体が内部崩壊するのだ。いわば、爆発するような感じで。
では、なぜ? 内部に大量の水がしみこんでいるからだ。この水が圧力となって、水圧を及ぼす。その水圧の力で、堤防を内部から外部へ崩壊させるのだ。
とすれば、堤防の裏側の下部を簡易補強したところで、何の意味もない。このような簡易補強は、大きな水圧には耐えられないからだ。ここでは、堤防を崩壊させるほど巨大な水圧がかかっている。なのに、簡易補強のブロックぐらいで耐えきれるはずがない。巨大な堤防を破裂させるほどの圧力を、たいして重くもないブロックぐらいで耐えきれるはずがない。
国交省は、完全に間違った対策を取ろうとしている。こんなことでは、金がかかるだけで、効果はほとんどない。(皆無とは言わないが。せいぜい、小さなブロックの重量程度の効果だ。3%ぐらいの効果か。ほとんど意味がない。)
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では、どうすればいいか? どうやって堤防を強化すればいいか?
それは、すでに述べた。つまり、堤防の内部に、水がしみこまないようにすればいい。
1番いいのは、コンクリ被覆だ。(ただし金がいっぱいかかる。)
2番目にいいのは、粘土層を埋め込むことだ。(ただし、最初からやるのでなく、あとになってやるのでは、金の割に効果は薄い。費用対効果が悪い。)
結局のところ、巨大な水圧に耐えきれるような構造を、簡単にローコストで実現する方法などはない。何百キロもの堤防を、簡単な工事で一挙に強化する方法などはない。
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だから、「堤防を強化する」という方針を捨てればいい。すなわち、「堤防を強化する」かわりに、「堤防を強化しないで堤防決壊を防ぐ」という方針に転じればいい。
目的は、堤防を強化することではなく、堤防の決壊を防ぐことなのだ。そう理解すれば、発想の転換ができる。こうだ。
「堤防を強化するかわりに、堤防を弱化する。現状よりも、もっと弱めて、簡単に氾濫するようにする。このことで、堤防決壊を防ぐ」
これは、逆説みたいで、理解しがたいだろう。しかしその方法は、前に述べた。下記項目だ。
→ 洪水防止の画期的な方法
ここから一部抜粋すれば、次の通り。
日本中の堤防を工事すると、金がかかる。しかし、堤防が決壊する場所だけを工事するなら、金はかからない。決壊する場所が、全体の2%だとしたら、2%だけを工事すれば足りる。だから、決壊する場所だけで工事すればいい。
あらかじめ一部の箇所だけ、堤防を低くする。この部分から水が越水するようにする。その上で、この部分だけ、堤防をコンクリ護岸で補強する。
詳しくは、上記項目を読んでほしい。
これなら、格安の費用で、堤防の決壊を防ぐことができる。
なお、合わせて、次の方法も対策となる。
→ 雨水を川に入れるな
画期的などと自画自賛ではなく、まず自身のアイディアの検証をされたらどうでしょう。
浸透対策は、なにもコンクリと粘土層(あまり聞かないですね)だけではありません。
この点でも誤りがありますね。