外国人技能実習生の相次ぐ失踪。
失踪者を追跡する民間の特別調査チームがあります。
メンバーは、元入国管理局職員や警察官。
全国各地で調査を行っています。
この夜訪れたのは、茨城県の住宅街にある飲食店。
失踪した実習生と見られる外国人が遠くから集まっているという情報が寄せられていました。
「あ、バイクだ。」
「入った入った。」
「すごいね、タクシーで乗りつけている。」
調査チームでは、失踪した実習生がいると確認できれば入国管理局に通報しています。
この調査チームを作ったのは、外国人技能実習生を実習先の企業に紹介している「監理団体」です。
監理団体は、日本に来る外国人技能実習生を受け入れる民間の団体です。
実習生は、監理団体から紹介された企業などで働く仕組みです。
しかし今、実習先の企業からの失踪が相次いでいます。
監理団体は企業からの信頼を失いかねないため、行方を突き止めようとしているのです。
この日は、元実習生の貯金口座の動きをたどりました。
すると最近、本国に送金したと見られる形跡が見つかりました。
「黄色のマーカーが問題の過去に逃げた人間。
たまに誰かが引き出している。
大きな額。」
「なんでこんなでかい金。」
「地下銀行だな。」
実習生に逃げられた企業も訪れます。
失踪の原因を聞き取り、今雇っている実習生がさらに失踪することがないようアドバイスしています。
実習生に失踪された企業
「1か月くらい前、仕事に集中していないところがあった。」
監理団体
「例えば仕事に集中できていない状況が見られるとか、知らない人間から頻繁に携帯で連絡があるなら連絡いただければ。」
実習生に失踪された企業
「半年も1年もかけて一人前にしているわけですから、やっぱり裏切られたという気持ちが一番。」
失踪した元実習生は、どのように暮らしているのか。
私たちは、その1人に接触することができました。
この女性は、家族に仕送りをするために3年前、中国から来日し、九州で働いていました。
しかし、もともと賃金が低かった上、円安が進んだため十分な仕送りができなくなり、去年逃げ出したといいます。
失踪した元実習生
「3年で30万元(当時約360万円・現在約600万円)を稼ぐために来た。
(給料が)少なすぎるので逃げてきた。」
実習先以外で働くことを禁じられている元実習生。
職探しに欠かせないのが、スマートフォンのアプリです。
失踪した元実習生
「ネットで探す。
あとは連絡してみる。」
そこには中国語で「不法就労者」を意味する「黒工」の文字。
闇で仕事を探す人を対象にした職業紹介の情報が多く掲載されています。
“農業募集 時給800~850円、本人確認は不要”
実習生時代に支給されていた給料は手取り7万円だったというこの女性。
先月(6月)は仕事を掛け持ちし、合わせて17万円を稼いでいました。
失踪した元実習生
「お金が稼げなかったので不法就労者になるしかない。
仕事がきつくてもやりたい。」
違法な元実習生をなぜ受け入れるのか。
在留期限が切れた元実習生を雇っていたとして摘発された農家が取材に応じました。
全国各地から元実習生が口コミで集まってきたといいます。
元実習生を雇っていた農家
「広島から来たとか、長野、熊本。
2~3年は逃げてきた実習生が多い。」
この農家では、トマトや白菜を食品メーカーなどに卸しています。
収穫期となる今の時期は特に人手が足りません。
元実習生を雇っていた農家
「黙って休まれるんだよ。」
日本人の作業員2人を雇いましたが、厳しい作業の前に休みがちになったといいます。
人手が足りないため、生産量を減らさざるを得ませんでした。
元実習生を雇っていた農家
「長年やってきた仕事だし、農業者として農業を守りたい。
不法就労の方もいなくなると、生産量が今10であれば2か3になる。
がたがたになっちゃうな。」
専門家は、こうした現実と、技術を伝えるという制度との矛盾が失踪者を増やしていると指摘します。
実習生の問題に詳しい 首都大学東京 丹野清人教授
「私たちの生活が、もう外国人抜きには考えられないところまできている。
技能実習生を受け入れれば受け入れるほど、失踪者が増えていかざるを得ないという構造。」
監理団体は、実習生の待遇を改善するよう企業に求めるなど、対策を取っているとしています。
監理団体 国際人材育成機構 柳澤共榮会長
「失踪した人がなぜ失踪したのか、日本の会社の扱いがよかったか悪かったか、いろいろなことを分析して同じような事案が再び起きないようにする。
再発防止が非常に大事。」