既婚の友人とLINEをやりとりしていた流れで,何気なく「配偶者選びにおいて重視すべきと思われるところは?」という質問をしてみた。「趣味が合うかどうかかなー」とか,そういうカジュアルな回答が返ってくると思いきや,彼女は「改めて言われるとわからん。ちょっと考える」と言い置いたのち,以下8点を箇条書きで送ってきた。本気だった。
- 共通の趣味はなくてもよい
- ある程度は料理ができる
- 勤務地
- 会社がつぶれても,職がありそうか
- 言わずもがなだけど,女性が働くことを当たり前と考えているか(しかし,建前と本音が違うこともあるし,いきなりこの話題されても困るだろうから,じわじわ探る)
- 甘えん坊キャラはよろしくない
- 多趣味,交際広すぎはよろしくない
- 酒はほどほど,煙草は不可
「意外とハードル低いかも」「パーフェクトな人はいないと思うので,参考程度に」と但し書きはついていたが,項目数自体は十分多い。しかしこれ,決して高望みではないと思う。しかも,どれもとても参考になるため,蒙を啓かれた衝撃のあまり,思わずスクリーンショットを撮って同じく婚活中の友人にも送ったほか,母にも送った。両者とも「参考になる」「的を射ている」ととても好評だったため,友人の許可を得てこちらでも公開させていただいた次第である。友人は「天下の舞姫ブログで公開してもらえるなんて光栄だ」と公開を快諾してくださった。*1「天下の舞姫」ってあなた,「世界の山ちゃん」じゃあるまいし。
くだらない話はいいとして,この中でも私がきわめて重要だと考えるのは,4,5,8だろうか。8はきっと,ここで私などが改めて何か述べなくても多くの人に共感してもらえるだろうから,4と5について。4の「会社がつぶれても職がありそうか」というのは,正直に申し上げて,私もあまり考えていなかった。しかしこれ,今のご時世において非常に重要なことであるに違いない。*2「会社がつぶれる」は最悪の事態であるとしても,労働環境はいとも簡単に変わりうる。たとえば突然経営陣が一新されて勤務条件が入社時のそれとはまったくかけ離れたものになったり,異動によって不本意な業務に従事することを余儀なくされたり,そんなことはいくらでも考えられる。そんな時に,収入を失うわけにはいかないからという理由で会社に嫌々しがみつくしかないのと,選択肢がほかにもある(たとえば転職とか独立とか)のとでは,雲泥の差であろう。恋愛コラムの大家であるぱぷりこさんも,Twitterで以下のように述べていらして,私は心から同意した。
ちなみに私はハイスペ/バリキャリを「今の会社を出ても、食っていける・通用する能力を持つ人」と定義している。だから、いい会社にいようが、社畜でゴリゴリ働いていようが、「今の場所でしか通用しない」ならそれはハイスペと呼ばないし、自分のキャリアプランを考える上でもそこは非常に重視する
— ぱぷりこ (@papupapuriko) 2015, 11月 26
あと,これに加えて私が個人的に非常に重視したいのは,その人が心から誇りを持って仕事に取り組んでいるかということだな,と最近思った。別に綺麗ごとでもなんでもなく,小さい会社であっても,一見小さく見える仕事であっても,「これは自分にしかできない」というプライドを持って真摯に仕事に取り組む人を私は尊敬するし,素敵だと感じるし,また自分もそうありたいと思う。企業名や年収だけで男性を判断するのは,いわゆる「キラキラ女子」にお任せしたい。『東京カレンダー』の連載「東京人生ゲーム」は毎週失笑しながら読んでいるが,額面で年収1050万だとか「同期より早くプロジェクトマネージャーに抜擢された」とか,はっきり言ってそういうことは,相対評価でしかないからまったく魅力がないのですよ拓哉くん(少なくとも私には)。*3独善的になれと言うのではない。相対評価は確かに大事だ。しかし,自分もそうだし人もそうだが,絶対評価ではかれる価値は持っておいた方がいいと思うのですよね。そしてそれこそが,いざ食いっぱぐれた時にも何より強く自分を支えてくれるのではないか。
それから5。重要でありかつ難しいのは,この「本音と建前は違うかもしれない」というところですね。そしてきわめて残念なことに,この「隠れ保守」「潜在的家父長」は,高学歴男性に割と多い印象である。彼らは高い教養を身につけているから,表向きにリベラルを「装う」ことの重要性は承知している。しかし付き合いが長くなるにつれ,彼らはその保守性を露わにし始める。私の友人たち(東大卒)がその元彼たち(東大卒)から言われた言葉の例はもう,口にするのも恐ろしくてここには書けないくらいだが,まあ要するに,「男と女なら,女が仕事をやめるのが当然」みたいなことを平然と言い出す。相手がいかなる「バリキャリ」と言われる部類の女性であろうともである。しかしながら,当然ながら知り合いたてや付き合い始めの時点においては,彼らはリベラルなフェミニストを装っているので,非常に見極めづらい。まあ,遅かれ早かれボロは出るので,そこは友人の言う通り,「じわじわ探る」しかないのだろう。そしてボロが出たら,迷わず切り捨てるしかないのだろう。もう30前後にもなって,人はそうそう変わるものではない。
ところで,婚活サイトなど見ていても,*4こういうことを何気なく口にしている男性は多いように思われる。たとえばプロフィールに「海外赴任があるかもしれないので,海外に抵抗のない方だとありがたいです」などと書いている例。多分彼らは何も考えてないのだろうが,えっ,なぜ帯同が前提みたいな言い方なんでしょうか?海外への抵抗の前に,「退職に抵抗がない」かどうかでは?そこに女性の主体性(agency)はないのか?
ちなみに私自身に関して言えば,もちろん仕事を「しない」などというヴィジョンはない。だって,せっかく博士号まで取ろうとしているのだ。私は『ハウスワイフ2.0』よりも『リーン・イン』に共感する人間なのである。もしどうしても私に仕事を辞めさせたければ,特に博士課程以降において私の学業は日本とアイルランドの2国から経済的なバックアップを受けていたものだということをよくよく意識していただかねばならない。ここまで金の援助を受けた人間が結局何者にもならないということは,それを教唆した人物は日本とアイルランドのエネミー・オブ・ネイション(ズ)になる可能性があるということである。国際指名手配されたくないでしょ?
また,ほかの項目について。「6. 甘えん坊キャラはよろしくない」には笑ってしまった。それから男性諸氏には,もしかしたら「7. 多趣味,交際広すぎはよろしくない」は意外にうつるかもしれない。婚活サイトでも,多趣味と交際の広さ,アクティブさをご自身の魅力と認識してアピールしていらっしゃる男性は多いように思われる。典型例「週末は友人とフットサル」とか。確かに,趣味があるのは素晴らしい。無趣味な人よりもよほどいいだろう。しかし多趣味と交際の広さのあまり,そちらにかまけて家庭をおろそかにされては困るのだ。またそのつながりの友人や後輩やらを家に招待するとかいうのも,たまになら楽しいだろうが,頻繁にやられると妻としてはたまったものではないだろう。
それに,これまた婚活サイトによくある表記だが「仲良くなったら一緒に行きたい/やりたいです!」。好きな人の好きなものを好きになることで世界が広がるのは素晴らしい。私も基本的に,それを楽しむ人間である。しかしそれも,たまになら楽しいだろうが,毎回一緒に楽しむことを求められても困るだろう。「1. 共通の趣味はなくてもいい」にも通じるが,趣味に関しては相互不可侵が一番ではないだろうかと思う。その上で,共有できるものがなにかひとつでもあれば,それはラッキーというべきことなのだろう。
ちなみに,これに加えて,私はずっと以前より,母から2点のチェックリストを提示されている。その2点は以下の通り。
- 最低限,自分が好きだと思える顔かどうか
- 食の好みが合うかどうか
これまた私が大切にしてきた教えである。前者は,面食いになれという話ではない。あくまでも「自分の」好みかどうかということである。あとは食だが,これはおそらく,好きなもの嫌いなものに限らず,食べ方とか,そういうことも含めてだろう。ちなみに私は基本的に,食べ物を粗末にする人と偏食家は男女問わずどうしても受け付けない。その人の「育ち」は,箸の持ち方なんかよりこちらに表れるのではないかというのが私の持論である。平気で食べ物を捨てる人と,食べ物の好き嫌いを恥ずかしげもなく口にする人はお断りである。
さて,アウトソーシングによって有益なチェックリストを10項目も用意していただいたところで,私は先日,とある婚活パーティーに申し込んだ。このパーティー自体は去年から開催されているのだが,情報筋(去年の参加者)からは「まじでおすすめしない」との声が漏れ聞こえている。しかしそこまで言われるなら,逆に興味をそそるというものである。女性の参加費は5000円と割高ではあったが,あまり期待はせずに行くことにした。先振込みであった。ジャニーズか。
そういうわけで,私は以上の10項目を手に,意気揚々とパーティーに乗り込んでくる所存である。読者のみなさまにおかれましてはなにとぞ,私の人生に幸多かれと,応援いただけましたら幸いに存じます。素敵な人に出会えますように♡
*1:「舞姫」とは言わずもがな,森鴎外の傑作にちなんでそう命名していたこの日記の前身である。
*2:たとえばこちらの素晴らしい記事に詳しい。一言一句すべて共感する。
*3:こちらですね。
まあそもそも,渋谷やら麻布を居住地に選ぶあたりで「合わないな」と思うのだが。また彼を差し置いて昇格した,一見地味な同期のタカハシ君に対して「あいつのプロジェクト,正直,本音は,失敗すればいいって思っています。」とか言ってみたり,プロポーズを断られた時に「女性は僕と結婚できたら嬉しいものだと思っていたんです。だって,一応年収32歳で1,000万ですよ。希少な年収1,000万円以上の独身男性たちは引く手あまたの選び放題のはずで,0.4%しかいないそうです。」とか言ってみたり,誇張だとわかっていても非常に不愉快である。1000万1000万うるさいわこの札束野郎!と思う。もちろんお察しの通り,そんなこと言いながら毎回読んでしまっているのだが。
ちなみに拓哉くんはこの後ヘッドハンターに会い,「僕のキャリアで転職すれば,給与は1.5倍も見込めるそうですよ。商社のブランドは強いんですね。スタートアップ系の経営陣として迎えられて上場を目指してキャピタルゲインでウハウハとかもありですよね(笑)。まぁ、いずれにしても,もう少しだけ,この会社でやってみて,認められなかったら,違うステージで挑戦してみようかなと思っています。僕の市場価値はなかなかなものでしょうし」と述べている。まったくこいつは,仕事も恋もすべて相対評価で,本当にかわいそうな男である。32にもなって。
*4:ええ,最近はよく見ています。