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辺野古:知事「国民に問う」…代執行、法廷闘争始まる

毎日新聞 2015年12月02日 21時03分(最終更新 12月02日 23時56分)

第1回口頭弁論に出廷し、意見陳述を待つ翁長雄志沖縄県知事(左)=那覇市の福岡高裁那覇支部第201号法廷で2015年12月2日午後1時59分(代表撮影)
第1回口頭弁論に出廷し、意見陳述を待つ翁長雄志沖縄県知事(左)=那覇市の福岡高裁那覇支部第201号法廷で2015年12月2日午後1時59分(代表撮影)
辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る代執行手続き
辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る代執行手続き

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設計画を巡り、国が翁長雄志(おなが・たけし)知事に対し、名護市辺野古沿岸部埋め立ての承認取り消し撤回を求めた代執行訴訟の第1回口頭弁論が2日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)であった。翁長知事は意見陳述で「沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安全保障体制は正常といえるのか。国民の皆様すべてに問いかけたい」として過重な基地負担と移設計画の不当性を訴え、請求棄却を求めて争う姿勢を示した。次回の口頭弁論は来年1月8日に開かれる。

 米軍基地問題を巡る国と沖縄県の法廷闘争は、1995年に軍用地の強制使用を巡って首相が当時の知事を訴えた「代理署名訴訟」以来、20年ぶり。

 弁論で翁長知事は冒頭、米国統治下で米軍から土地を強制接収されて過重な基地負担を背負わされた沖縄県の戦後史を踏まえて意見陳述。「今度は日本政府によって(米軍の)銃剣とブルドーザーをほうふつさせる行為で美しい(辺野古の)海を埋め立て、基地が造られようとしている」と述べ、「米軍施政権下と何ら変わりない」と訴えた。

 国側と県側の争点の主張確認も行われ、弁論は翁長知事の承認取り消しの適法性に集中した。国側は「国防に関わる基地の設置場所について知事に審査権限は与えられていない」と主張。県側は「県内移設しかないという地理的・軍事的根拠は無い」として、承認を取り消した判断の正当性を訴えた。

 国側は訴状で最高裁判例から、今回のケースで取り消しが認められる要件は「取り消す不利益と維持する不利益を比較し、維持することが著しく不当な場合」と指摘。取り消しで「普天間飛行場の危険性が除去できず、日米の信頼関係にも亀裂が入る」などと主張し「承認維持の場合と比べて不利益が極めて大きい」と強調している。県側は「国側が主張するのは個人に対する処分の判例で、国の機関が処分の相手である今回のケースには当てはまらない」などとした。

 県側は翁長知事の当事者尋問と、移設に反対する名護市の稲嶺進市長や環境、安全保障の専門家など計8人の証人尋問を申請している。国側は「必要性がない」と意見を述べた。

 多見谷裁判長は次回期日とともに次々回期日を来年1月29日に指定。次回は引き続き争点を確認し、次々回で証人申請の採否を決定する。【鈴木一生】

 ◇代執行◇

 都道府県が国の仕事を代行する「法定受託事務」について、知事による管理や執行に法令違反などがあり、他にそれを改めさせる方法がなく、放置すれば公益を著しく害する場合に担当相が知事に代わってその事務の手続きを行うこと。地方自治法の規定による。知事が担当相の是正勧告や指示に従わず、高等裁判所が国の請求を認めることが前提になる。

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