Aさんは警察発表にショックを受け、病院に入院した。レストランは事件後、閉店したままだ。人質事件から3カ月たった今でも、Aさんと息子は苦しみ続けている。Aさんは11月30日、本紙の電話取材に対し「私の人生が台無しになったが、これをどうやって元に戻せるというのか」と涙声で語った。
「空いているベッドがあるのに、息子は私の横に寝るといって聞かない。あれ以来、息子も私もぐっすり眠れたことがない」。Aさんは「人質事件の被害に遭ったことだけも恐ろしくてつらいのに、男からの借金を踏み倒した女といううわさが立った。警察の不正確な発表を報じた複数のメディアが訂正報道をしたが、私はすでに近所の人たちから『おかしな女』と後ろ指を指されている」と嘆いた。男は刑務所の中からも「一緒に暮らそう」などと記した手紙をAさんに送りつけ、苦しめているという。
検察はAさんと息子が心理治療を受けられるようサポートしたほか、犯罪被害者を対象にした緊急生計支援費と治療費も支給した。2人が別の場所に引っ越せるよう力添えする方針だ。大検察庁(最高検察庁に相当)の関係者は「Aさんは人質事件と暴行による直接的な犯罪被害に加え、元の場所で暮らせないほどの2次被害を受けた不憫(ふびん)な被害者だ」と話している。
裁判所長も務めたある弁護士は「捜査機関などの過ちで2次被害に遭う犯罪被害者は少なくないが、彼らを支え、救済するためのこれといった対策がないのが現実」と説明。捜査機関は被害者に関する発表に慎重を期すべきだとしたほか、被害者への経済面、医療面での支援をさらに拡大する必要があると指摘している。