韓中FTA批准:拠出金「10年1兆ウォン」の根拠に疑問の声

 13億の人口を抱える巨大な中国市場と韓国を結ぶ韓中自由貿易協定(FTA)の議会承認案が30日、国会本会議で可決された。しかし、政府・与野党がFTAで被害を受ける農漁村を支援するために企業から毎年1000億ウォン(約106億円)、10年間で1兆ウォン(約1060億円)の「農漁業共生基金(仮称)」への拠出金を寄付という形で集めることが論議を呼んでいる。財界は「農漁業共生基金は当初野党が主張してきた『貿易利益共有税』を変形したもので、事実上何ら変わりはない」と反発している。

 通商専門家は「FTAを結んだ全世界の国で企業から寄付金を集めて被害分野への補償財源に使っている国はない」と批判している。専門家は共生基金について、3つの問題点を指摘する。

 まず、韓中FTAは過去に結んだFTAのうち農産物の開放度が最も低いにもかかわらず、政府と政界が来年の総選挙を意識し、ばらまき政策を打ち出した点だ。

 産業通商資源部(省に相当)によると、韓中FTAで韓国が今後20年間に関税を撤廃するのは全体品目の92%だ。しかし、センシティブ分野である農水産物の開放水準は品目ベースで70%と低い。輸入額ベースでも農水産物の開放水準は40%で、これまでのFTAで最も低い。韓中FTA締結による農水産物の生産減少額(政府試算)は20年間で3620億ウォンで、韓米FTA(15年間で12兆6600億ウォン)や韓・EUによるFTA(15年間で2兆6000億ウォン)よりもはるかに少ない。

 これまで政府が推進してきたFTA締結交渉に加わった鄭仁教(チョン・インギョ)仁荷大教授は「牛肉など農産物品目の90%以上を開放した韓米FTAとは異なり、韓中FTAは農水産物に対する開放程度が極めて低い。政府が農漁業共生基金まで創設して支援を行うことにどんな根拠があるのか疑問だ」と指摘した。

羅志弘(ナ・ジホン)記者
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