オスプレイ配備で前田哲男氏に聞く
2015年12月2日 17時36分
佐賀空港へのオスプレイ配備計画浮上後、ターミナルビルの展望台から周辺状況を確認した前田哲男氏=2014年9月
2日から3日間実施される佐賀県議会一般質問で、議員15人のうち6人が佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画を取り上げる。防衛省の再要請内容の解釈をめぐる質疑も予想される。空港西側の駐屯地予定地に立ち入らない目視調査の容認を求める防衛省の思惑や、予想される今後の動きを軍事ジャーナリストの前田哲男氏に聞いた。
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■「予算執行へ体裁づくり」
防衛省が現地調査に固執する理由の一つは予算執行上の体裁づくり。このまま来年度予算を要求しても財務省の主計官から「進展がゼロじゃないか」と厳しい意見が付くのは間違いなく、説得材料は欲しい。
もう一つは沖縄の基地負担軽減に向けたアピール。米海兵隊の訓練利用を佐賀で取り下げたといっても、新ガイドライン(防衛協力指針)では日米の運用を区別することはできない。佐賀空港が訓練移転の最有力候補であることに変わりはない。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の危険性除去に向けて本土でも努力しているとアピールしたいのだろう。
駐屯地予定地の敷地外からの目視調査を求めているが、既成事実化の思惑が透ける。地形を計測せず、双眼鏡で横から眺めても詳細は分からない。施設配置を描くだけなら、グーグルの航空写真よりもはるかに解像度が高い情報衛星で空港と周辺を撮影し、駐機場や格納庫の位置を示せば事足りる。
地元が現地調査の受け入れを渋っているからといって、全体計画である中期防(中期防衛力整備計画)が揺らぐわけではない。オスプレイをめぐる米国メーカーや米国防総省との交渉、機体の納期との関係もあり、地元の意向とは無関係に予算化を進めるだろう。
米国と買い付け交渉を進める一方、来年度予算を計上するということはできても、強権をもって執行するということはできない。
土地収用法では、軍事施設のために強制収用することはできない。この法は自衛隊がなかった時代につくられたので、ダムや道路、成田空港などの建設時に使えても、軍事施設への適用は明示されていない。そのため、自衛隊駐屯地で適用したところは一つもない。
米軍に関しては法体系が異なり、駐留軍用地特別措置法という安保特例法があり、政府はこれを当てはめて、沖縄県の名護市辺野古で普天間飛行場の代替施設の建設を強行している。
防衛省が「地元の理解」に執着するのは、こうして自衛隊駐屯地新設に強権的な手法が使えない側面もあるからだ。政府にとってはある意味ジレンマで、今後も引き続き「理解」に向けて働きかけてくるだろう。