岩渕⇒きのうからパリで地球温暖化対策のための国連の会議COP21が開かれています。
私たちの生活にも大きく関わる地球温暖化についてきょうから3回シリーズでお伝えします。
生字幕放送でお伝えしますこんにちは「くらしきらり解説」。
シリーズ地球温暖化の1回目はよく耳にはするけれどいまひとつよく分からない地球温暖化問題の基本から土屋敏之解説委員に聞きます。
そもそも温暖化というのはずいぶん前から言われていますよね。
かなり前に京都で京都議定書ですか温暖化に関することが決まったということなんですがそれと今回は何が違うんでしょうか。
土屋⇒18年前の京都会議で二酸化炭素などの温室効果ガスを減らそうというルールが初めて作られたのは事実です。
ただあの京都議定書、アメリカは国内の経済に悪い影響があるとして離脱しましたし中国など途上国はそもそも削減義務を負いませんでしたのであのとき義務を負ったのは日本をはじめとした赤いところ、ごく一部の国に限られていて、今の世界の排出量でいえば2割程度にすぎないんです。
2割程度の国が頑張っても効果は低いですよね。
今も二酸化炭素の排出量は増え続けているんです。
そこで世界全体で削減するルールが必要だということはずっと言われてきたんですけれども各国の利害が激しく対立してなかなかまとまらなかったんです。
今回のCOP21そもそも21というのは21世紀ではなくて温暖化対策の条約の第21回締約国会議21回もやってようやく今回、今度こそルールを決めようというところまでこぎ着けた重要な節目なんです。
京都議定書に代わるルールが約18年たって今、作られようとしているわけですね。
そもそも温暖化は待ったなしの状況ですよね。
今回、交渉が進みだしたのは中国とアメリカという二大排出国が前向きになったこと大きいんですがその背景には、今や世界的に異常気象、例えば集中豪雨のようなものや、干ばつ熱波などの被害が相次ぐようになって、このまま放置しておけないという機運が盛り上がって共通認識ができてきたことが大きいと思います。
日本でも最近かつてないような豪雨で被害が出ていますものね。
こうした災害というのは確率的に起きる現象なので、一回一回の大雨は、これは温暖化のせいこれは以前からあるたまたま起きたもの、という区別はできないんですが世界全体で平均気温がこの1世紀余りですでに0.85度上昇していて温暖化が進むにつれて、災害もさらに深刻化していくことが分かっているんです。
0.85度程度、気温が上がっていく温暖化と大雨とどう関係があるんですか。
温暖化といいますと気温が少し上がるだけではないかと誤解されている方が多いんですが、そうではなくて気象が極端になる現象のことなんです。
陸や海が温まっていくと水分が蒸発します。
この水分というのは大気の流れを作ってやがて雨や雪を降らせます。
これが温暖化が進みますと水分の蒸発量がぐんと増えていきます。
例えば、陸で水分が蒸発する場所ではこれまでよりも激しく水分が失われますから干ばつになってしまいます。
暖かい海で大量に蒸発した水分というのは大気の流れを加速するエネルギーに変わるものですからそれによって、いわゆるスーパー台風と呼ばれるものやハリケーンのような暴風雨を生み出すんです。
これが大雨をもたらすことで結果として洪水や土砂崩れなどの災害も深刻になるというわけです。
しかも大量の水蒸気は暖かいところで降れば大雨なんですが、寒いところ温暖化しても、まだ0度より下という場所では大雪を降らせることもあるんです。
温暖化で雪が増えることもあるんですか。
意外ですがそういうこともあるんです。
最近、南極の氷が厚くなっているという論文が発表されてニュースになったことご存じの方もいると思います。
氷が増えたと言われていますよね。
なぜだろうと思うかもしれませんが温暖化で雪が増える場所ではそういうことも起こりうるんです。
あの原因も温暖化なんですか。
可能性があります。
その論文をよく読むと氷の増え方は減速していると書かれていてだんだんそれが止まってきているので、いずれこのまま温度が上がり続けると南極の氷さえとけだすほうに向かう懸念さえあるんです。
温暖化の影響で気象がこれだけ変わるということですがそのほかのところにはどういう影響がありますか。
影響は多岐にわたるんですが、例えば生き物が生息できる場所が変わってきますから生態系も大きく破壊されます。
農産物の生産にも影響があるので食糧危機を招くおそれがあります。
さらに水不足が深刻になる地域もあります。
去年、日本でデング熱が入ってきて大騒ぎになりましたよね。
ああいう熱帯性の感染症、例えばマラリアなども広がっていくと心配されているんです。
こうした温暖化の被害はすでに起き始めていますよね。
防ぐことはできるんでしょうか。
じつは完全に食い止めるのにはかなり厳しい状況になっています。
ただそこで世界がぎりぎりの目標として合意しつつあるのが今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えようというものです。
どうしてかといいますと2度未満でも大雨などの気象災害はやはりかなり起きるし経済的な打撃も大きいと予想されるんですがそれでも世界中で食糧危機になってしまうとか海面上昇が加速して南太平洋の島国が国土を失ってしまうという取り返しのつかない被害は2度未満ならおそらく避けられる可能性が高いと予想されているからなんです。
2度未満に抑えるというのはどれぐらい難しいことなんでしょうか。
率直にいってこれは相当に大変なことです。
今回のCOP21というのは京都議定書のようにやめてしまう国が出ると困るのでみんなが参加できるように厳しい削減義務ではなくてそれぞれが自主的に削減目標を登録しましょうという仕組みになりそうなんです。
ところが、これまでにみんなが出している目標を足しあげても2度未満にするにはどうも不足しているという集計結果がすでに出ているんです。
すでに不十分だと分かるわけですか。
最近の研究では今世紀末に2度未満に抑えるためにこれぐらいなら可能性が高いという条件が計算できるんです。
そのイメージを示しましたけれども人類が累積で出せる温室効果ガスの総量は2兆9000億トンぐらいだといわれているんです。
この枠の中までにおさめれば2度未満にできるのではないかと言われています。
ところが産業革命以降、人類はすでに大量に排出してしまっているのでこの枠のうちの大半は埋まってしまっていて残り排出できるのは9000億トンぐらいだと分かってきています。
9000億トンというのも数字が大きすぎていまいちピンとこないんですがどれぐらい出せるんでしょうか。
現在の世界の排出量は500億トン近くなっているんです。
このペースで年々出していきますと20年以内にはあふれ出してしまう。
あふれ出してしまうと2度未満の達成は困難になってしまうというかなり差し迫った状況なんです。
以前は二酸化炭素を排出してもその内のかなりの部分が陸地や海に自然に吸収されていくのではないかだから限界はそんなに深刻に考えなくてもいいという考え方もあったんですが、最近の研究では排出枠というのはほぼ決まっているのではないかと考えられるようになってきたんです。
こういう状況の中で、先進国は残りも少ないですしこれは先進国だけで頑張ってもしかたがない、みんなで削減しないとあふれてしまうと主張しているわけです。
みんな協力しましょうということですね。
それはそれで一理あるんですが途上国の主張としてはそもそも先進国がたくさん出してしまったから出ているんじゃないですか。
そもそも先進国の責任ですよねまずはそちらが先に責任をとってくださいと主張していてそれも一理ありますよね。
対立があって大変ですけれどもこれからCOP21はどうなるんでしょうか。
対立があって難しいんですが、こういう限界というのが明らかになってきたりすべての国が危機感を共有するようになってきたというのは18年前の京都とはかなり変わってきたと思います。
困難ではありますが何らかの合意はできると思いますししなくてはいけないと思います。
身近で言いますと日本では温暖化対策が進んでいるといいますが24時間のコンビニが全国にあったり夜通し広告の明かりがついていたりします。
ライフスタイルを見直すなどできることがあると思います。
土屋敏之解説委員でした。
2015/12/01(火) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「シリーズ地球温暖化(1)どうなる?どうする?地球温暖化」[字]
NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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【出演】NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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