先週、東京と京都に一時帰国しておりました。そこで、よく耳にしたのは「宿が足りない」、「よく宿を確保できましたね」、「ホテル代が高くなった」です。実際、銀座や京都では外国人(それもアジア系)ばかりで、円安にともなうインバウンドの増加を肌で実感しました。
AirBnB(民泊)に関しても、日本で是非論や反対論がいろいろ出てきていいますので、本家アメリカでのAirBnBの置かれている状況の整理して、日本との違いや注意点を提示して行こうと思います。
アメリカのAirBnBの形態について、下記のはまずご理解ください。
ロケーション:
まず、ロケーション的には1)リゾート地、2)大都市部の2つに大別されます。
概して、ハワイやフロリダなどの1)リゾート地については、市や州は、バケーションレンタルとして、訪問客への部屋まるごとの貸し出しなどを、奨励していることが多いです。そのかわりちゃんと「所定の税金は払ってね」というスタンスですね。リゾート地に関しては、「大家族はバケレンやコンド滞在で」というホテルとの共存の歴史が長いので、AirBnBは特に問題になってはいません。
しかし2)の大都市部に関しては、全く話が違いますので、これは、下記に詳しく解説します。
部屋貸しVs.一戸まるごと貸し
もともとのAirBnBの名称の背景も、空気ベッド(Air Bed)を膨らませて、宿を提供するです。住人が住んでる部屋の空室に泊めてあげる行為は、期日を限定してOK状態にあります。背景としては、1)住人が宿泊客の出入りを行うため、宿泊客が友人なのかどうかわからない、2)基本的に既存の住人がいつも一緒のはずなので、さしてハメを外す事がない。よって、年間14日以内であれば、所得税税申告の必要がないし(市への宿泊税の支払は発生します)、たまになら友人の宿泊と区別できないですから。
大都市部のAirBnBに対しては、かなり風向きが厳しくなってきています。
よって、ココからは、大都市部の一戸まるごと貸しを中心にお話します。
大都市部の一戸まるごと貸しの問題点ですが、大きく別けて以下の通りです。
1)多くの大都市(NYC市、SF市等)では、ホテルと区別するために、30日未満の賃貸を禁止しています。この「30日未満の賃貸禁止」についてはどの都市も、条例を変更する動きはまったくありませんので、殆どの大都市での専業で「一戸まるごと賃貸」を行う事は条例違反になり、罰金の対象になります。カリフォルニアの主要都市の多くが、30日未満賃貸の禁止条例を定める方向です。
違法AirBnB(短期貸し)大家、SF市に28万ドルの罰金支払い http://bit.ly/1e9fyg8 SFではEllis法案といって、オーナーが自宅として使用するなら、テナント追い出し出来るんですが、その後、度重なる違法通知にもかかわらず短期賃貸を行い、この結果。 NY市も、30日未満の賃貸禁止条例にもとづき、AirBnBの短期貸し大家にバンバン罰金を突きつけてる。 CNET http://cnet.co/1SEJLm1 最初の罰金はなんと$7000だったそう(ネゴして$2400まで下がったそう)。 2)アメリカのコンド(日本でいうマンション)のHOA(Home Owner's Association)多くは、オーナーの規約で30日未満の賃貸を禁止しています。NYの由緒正しいコンドでは賃貸自体を禁止しているところも多いです。また、オーナーが賃貸するのしても、テナントの承認をHOAからもらう必要がある場合も多いです。背景としては、「信用できる人だけを住人として選び、コンド建物内の価値を高める」というものです。
サンディエゴの高級コンドの管理組合、AirBnBに賃貸したオーナーから10.6万ドルの罰金を徴収 http://bit.ly/1MT02VE
ボストンのコンド管理組合、AirBnBに貸し出すオーナーや、テナントへの罰金強化中 BetaBoston http://bit.ly/1MT0P8X 最初は$500の罰金で、何度もやってると1万ドル超えてくるそうな。物件の価値を高めたかったら、不特定多数の出入りは完全に☓。 3)下記の通り、米東西海岸の大都市の中心地に居住希望者が増加し、賃貸需要が逼迫し、家賃の上昇に歯止めがかからない。よって、賃料の上昇が激しい都市は、賃料の安定化に躍起になっており、通常の賃貸に回るべき部屋が、AirBnB等の短期貸しに使われることを好んでいない。
実際にAirBnBの台頭で、長期賃貸に回るべき部屋が、短期貸しに転用されて、賃貸需給を悪化させているというレポートもSF市やNY市が行っています。
SF市のAirBnB(短期賃貸)分析レポート http://bit.ly/1Hb0O7v 現在約6100室が短期貸し;1600〜3000室が短期貸し専門。約8500室の空室の11%〜23%が短期貸しに流れ、需給を圧迫。 NY市では2013年に4600室が短期貸しされ、そのうち2000室が半年以上短期貸しに仕様されていた⇒2000室は通常なら長期賃貸に出されるはず⇒賃料アップの要因の一つ NY州レポート http://on.ny.gov/1Tt7lCC
4)実際に儲けているのは、プロの短期貸し運営者ばかり。AirBnBは「ホストとの部屋のシェアで、豊かな旅を」と標榜し、対外的には「庶民が部屋貸しを進める事で、収入の多様化に貢献」というスタンスですが、主収入は一戸まるごと貸しです。また、儲かっているのは3室以上賃貸するプロの運営者となっています。
AirBnB収入内訳?LAでの調査では、部屋貸しのリスティングの52%を占めるが、収入の11%足らず。3室以上運営するプロの短期貸し業者の部屋はリスティングの6%程度だが、総収入の35%を占める。
AirBnBのシェア革命での儲けの大半は資本家に NYT http://nyti.ms/1tBgg5T NY州政府調べだと、AirBnBで収益の半分程度は3部屋以上貸出する「プロ」の資本家だそう
5)賃貸人の「又貸し」は原則禁止の場合は殆どです。アメリカの賃貸契約ではSubleaseの項目が大抵入っていますが、通常禁止となっています。よって、賃貸人が、部屋貸しすることや、また貸しする事は、殆どの場合はリース契約の違反となります。
そんなこんなでAirBnBをどうするかはとってもホットなトピックです。AirBnBの本家のサンフランシスコでは、下記のAirBnB条例が承認されました。ポイントとしては、「年90日以上は専業とみなし、短期貸し専業は禁止」という点ですね。
− 自宅と使用している物件のみ年間90日まで短期貸しOK;
− 市の短期貸し承認と税金の支払がマスト;
− 専業の短期貸し運営は禁止(30日以下の賃貸は条例で禁止);
− 賃貸物件の場合は、大家とアパートHOAからの承認が必須;
− HOAの規約を遵守する;
上記の問題点と日本の状況を分析すると下記の通りです。
1)行政(市・州・政府)の30日未満賃貸の禁止
一週間以内の賃貸はグレーゾーンと厚労省は認識しているようですが、日本だと、この辺はあえて明確になっていないようですね。この辺は、厚労省、国交省、市区、県等がからんで、時間はかかりますが、条例化されてくると思います。
2)マンションのHOA規約
この点からも、住人やオーナーの規約で、「短期貸し禁止」を明記しているところはほとんどなさそうですね。湾岸のマンションでマナーの悪い短期宿泊者が増えたと社会問題化してきましたもんね。アメリカの場合、コンドのオーナーは転売時の価値を気にするので、HOAの権限が非常に強く、HOAが違反を重ねるオーナーから物件を買取る権利を保有したりしています。日本の場合も、マンション全体の質を保ち、ブランド力を高めるために「意識の高い」マンションはHOA側が、短期貸し規制をかけてくる可能性は高いでしょう。
3)大都市中心部の賃貸金額の高騰
この点に関しては、日本/東京では特に問題はなさそうですね。逆に、賃貸は世界都市と比べ安すぎる位なんで(都心に月10万円以下で住める都市は、東京くらい)、AirBnB運用が増えると需給が逼迫して、確実に賃料は上がりそうです。その時になって、この点は問題になるかな?
4) プロの運営者ばかり儲かる
日本の場合い、部屋も狭いし、他人を家にあげる事に抵抗がある方が多そうなんで、一戸まるごと運営が中心になると思います。よって、日本ではこの辺は数室運営するプロが、収益を牛耳りそうな気がします。
5)賃貸物件の又貸し
日本の民法だと又貸しは禁止されてるそうですが、今の日本の賃貸契約だと、又貸しに触れていない場合が多いそうで。この辺は、賃貸契約上での又貸し禁止を明記する事が多くなると思います。一棟運営されてる大家は、住人の質をコントロールしたいでしょうし、物件が荒れると、テナント付けも大変になりますからね。
以上が、日本の今後のAirBnB規制の予測ですが、議論として、部屋貸しVs.一戸まるごと貸しか?リゾート・観光地か大都市部か?というのはきっちり別けたほうが良いと思います。また、世界的な都市で一戸まるごと貸しを専業運営がOKな都市はほぼゼロという点も、理解すると良いと思います。
不動産を扱うものにとってAirBnBは大きなトピックですが、上記を理解すると、AirBnBとしての運営のメリットとリスクが理解できると思います。ちなに、僕は米都市部でのAirBnB運営は一切行っていません。
では、Happy Investing!!!
Top Cities Where Airbnb Is Legal Or Illegal http://bit.ly/1XFA3kf
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