ギターを奏でる青年。
かつてうつ病を患い2年間自宅にひきこもっていたWattanです。
ハハハ緊張する。
Wattanは心の病やひきこもりを経験した人が加入するK−BOXという芸能プロダクションに所属。
ギターの弾き語りをしています。
この日は市民団体が集い地域を盛り上げようというイベントに参加。
大型連休の最終日。
会場に詰めかけたおよそ5,000人の前で歌を披露します。
K−BOXのメンバーは舞台で自分を表現する事でそれぞれ社会復帰を果たしてきました。
(司会)続きましてはご紹介したいと思います。
じゃあ聴いて下さい。
「ステイゴールド」。
Wattanも舞台を通してひきこもりの原因となっていた人への恐怖心を乗り越えました。
今は介護福祉士として働いています。
(歌声)心を病みひきこもるのはなぜなのか。
傷ついた心は舞台に立つ事でどう変わるのか。
奮闘する人々の記録です。
K−BOXいくぞ!
(一同)えいえいえいお〜!芸能プロダクションK−BOX代表のKaccoさんです。
イベントでは女装をして似顔絵パフォーマーとして活動しています。
Kaccoさんもかつてひきこもっていた経験があります。
(取材者)よろしくお願いします。
素顔のKaccoさんです。
おはようございます。
いろいろとお世話さまでございます。
実家で母親と2人で暮らしています。
(取材者)お母様?
(2人)はい。
Kaccoさんがひきこもったのは20代の頃。
バブル崩壊後の不況の中当時勤めていた会社で一日15時間以上働きパニック障害とそううつ病を発症。
5年間自宅にひきこもりました。
立ち直るきっかけは子どもの頃から好きだったイラスト。
知り合いの旅行会社からパンフレットの挿絵を描いてほしいと頼まれた事です。
32枚で5,000円。
それでも掛けがえのない体験だったといいます。
「あ〜助かるよかったわ」っていうひと言ですかね。
そんな言葉は数年聞いてなかったんで「ありがとう」って…。
こんな自分に感謝して頂けるんですかみたいな気持ちになってただ寝てるとも起きてるとも下手したら死んでるともつかない状態で布団の中に5年間いた人間ですけどって思って。
感謝できましたね。
書かせて頂いてありがとうございますって素直に思いました。
描いたイラストが評判になり徐々に仕事を任されるようになったKaccoさん。
自ら生み出した女性キャラクターの旅日記を旅行ガイドに連載し人気を集めるまでになりました。
絵を描いてお金を頂いた時に地に足が着いた感じがしたんですね。
こっからあとは上げていけばいいんだって。
急には変われないし急に自分がなりたいとこにいける訳じゃないけどこっから一歩一歩上がっていこう。
だからこれを続けたいと思って。
自分のイラストが認められた事で個性の大切さに気付いたKaccoさん。
コンプレックスだったきゃしゃな体を逆転の発想で女装という個性に変えました。
個性出していいと思ったらすごいフッて楽になったんですね。
個性出せば楽しいっていうのも分かって。
自らを表現する事でひきこもりから立ち直った経験。
それを今も苦しむ人たちに伝えたいとK−BOXを立ち上げました。
それだけ私が強い思いで表現に救われたっていう思いが本当に強かったからだと思います。
だから私と同じように一人でも表現で救われたっていう子がいるならそういう場所を作りたいって。
新潟市の中心部。
K−BOXは市の福祉施設を借りて活動しています。
週に1度メンバーが集まり舞台に向けた練習をしています。
(歌声)弾き語りやダンスイラストなどを披露し僅かですが収入を得ています。
設立から9年。
およそ100人が所属し60人が社会復帰を果たしてきました。
看板アーティストの純名。
シンガーソングライターとしてCDも制作しています。
ピアノ弾き語りをやっております純名と申します。
本名シークレットなんで。
それ使わないで下さい。
私コンプレックスがあって子どもの時からずっと豚豚って言われてたんですね。
同級生とか幼稚園の頃とかからもずっと。
約8年間ずっと豚豚ってずっと言われてきててちょっとポチャポチャしてるのもあるんですけど。
で豚がすごいコンプレックスだったんですけどコンプレックスを表に出してしまえというKaccoさんの方針もあって勝手に豚のサインになりました。
紹介します。
えっとK−BOX今見学に来てるみほさんです。
練習には心の病やひきこもりの人が見学にやって来ます。
ピアノに向かったのは純名。
学生時代いじめが原因で不登校になりました。
その後仕事に就いたものの対人関係に悩んでひきこもりリストカットを繰り返していました。
(歌声)見学に訪れたみほ。
中学生の頃にいじめを受けて不登校になり今年の春ようやく通信制の高校を卒業しました。
K−BOXには見学者を歓迎する独特の方法があります。
病気はうつです。
え〜っとそうだな…一番最初のうつは二十歳大学3年の時でそこからうつ復活うつ復活を繰り返し数十年。
ちなみに独身です。
(笑い声)バツもないです。
うつっぽかった訳なんでそういうのを紛らわすためにお酒飲んでたせいでアルコール依存症とかがあって。
病気はパニック障害…。
病を打ち明ける事でお互いに心を開いていくのです。
見学で入ってますみほです。
病気は小学生ぐらいの時から摂食障害と発達障害で診断されて一番ひどかったのが高校生の時で22キロぐらいまで痩せて入院何回か繰り返してきて今やっと落ち着いてきてます。
人と目を合わせてしゃべるのがちょっと苦手だけどしゃべるのは好きなのでどんどん話しかけて下さい。
よろしくお願いします。
(拍手)
(みほ)あっすごい。
弾けるかな?Kaccoさんの前でピアノを弾き始めたみほ。
3歳からピアノを習い始め入院する前には母親がグランドピアノをプレゼントしてくれました。
人前で演奏するのは5年ぶりです。
最後に発表会で?どこだったの?会場。
公民館。
中央公民館?三条の?これが好きで。
(Kacco)それはどういう思い出なの?発表会って。
いい思い出?やな思い出?何か入院してる時に無理やり外出して弾いたから。
(Kacco)それで発表会出たの?入院してる途中で外出許可で。
すごいな。
何でそこまでしたの?車椅子移動だったから車椅子で会場あれして…。
(Kacco)何でそこまでして出ようと思ったの?
(みほ)これが最後かなって思って。
発表会に出るのが?えっそれはどういう事?最後っていうのは。
やめるって思ったの?やめようかなって。
何かグランドピアノ買ったのにお母さんに何にもできなかったなって。
(Kacco)よかったじゃん。
そこで終わりじゃないじゃん。
今こうやってK−BOX来てるじゃん。
まだ続くよ。
そのピアノ弾く人生はさ。
もちろんみほちゃんがやりたければだけど。
何かまたやれてよかったなって。
この日みほはK−BOXへの加入を決めました。
国が行った実態調査ではひきこもりの人は全国に40歳未満だけでおよそ70万人。
全体で100万人を超えるとも言われています。
小中学生の頃に我慢する事やいじめられた経験が多い事が分かっています。
どうだろう。
弾き語りしてたってじっくり歩いてないから…。
4年前にK−BOXに加入したmattun。
大学中退後13年間自宅にひきこもっていました。
15年ぶりぐらいかな。
きっかけは幼い頃のいじめにありました。
幼稚園の時からいじめられてた。
幼稚園の時とび箱に閉じ込められた記憶があって。
体が弱く小柄だった事を理由にいじめられたmattun。
なんとか逃れようと勉強に励み体を鍛えました。
何百回もずっと…ずっとやってたね。
その事によっていじめがなくなると思ってた。
小学6年生のマラソン大会では終盤まで80人を引っ張り4位になりました。
しかしいじめは止まりませんでした。
「のび太のくせに生意気だ」じゃないけどどんどんエスカレートしてったんだよね自分が努力する度に。
認められると思ってやってるのによりたたかれた。
例えば一方的に俺一人が技をかけられる。
それが一番かな。
毎日のようにやられたっていったら。
面白いでしょ多分。
「次俺代わって」とかってずっと俺は投げ飛ばされる。
1人2人の人間を集団でボコボコにするっていうのが個性を奪うっていうのがいじめ。
だからその結果人としゃべるのが苦手になったり引っ込み思案になったり前向きになれなくなったり…。
「お前が弱いから」っていうのは絶対に違うわ。
死にたいっていうか消えたい。
いなくなりたい。
(取材者)死にたいとか消えたいとか…つらいね。
つらいなんてもんじゃないよ。
地獄だよ。
自らの存在を否定するようになったmattun。
その後大学に進学しましたが周囲と関係を築く事ができずに孤立。
ひきこもるようになりました。
自分を認めてもらえない悔しさを晴らそうと始めたのが路上での弾き語りでした。
演奏したのは尾崎豊の曲。
いじめとそれを放置する社会への怒りを歌に込めていました。
・「心のハーモニー」・「奏でよう」・「ガラス作りの歌」・「奏でよう」何で死ねないんだろうっていうか死なないんだろうっていうのはまだ世の中に言ってねえじゃんって思ってそういう事を。
自分の憎しみとか恨みとか吐き出してねえじゃんって。
だから吐き出してないから俺死ねないんだなって。
言いたい事がまだ俺には多分あるんだなって世の中に対して。
今mattunは過去にとらわれ続ける自分を変えようと自らの体験をもとにした歌を作りたいと考えています。
思いついた事を書いてるだけなのね。
しかしいじめや社会への不満を言葉にしようとする度にひきこもってしまった自分を責め書けずにいます。
例えば「いじめよくないよ」みたいな歌を作ったとして「じゃあお前働いてないじゃん」って言われたら言い返せないとか…自分がいるのも確かで。
そういう意味で自分が言う事に説得力があるのか。
書けない…。
でも書きたい。
いや〜変身途中で…。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
この日K−BOXは地域の秋祭りに参加しました。
以前はこうしたイベントを休みがちだったmattun。
今はほぼ全てに加わっています。
Kaccoさんはmattunに多くの舞台を経験させたいと考えています。
自分を否定して歌が作れない状態から抜け出すきっかけをつかんでほしいからです。
(司会)どうぞ!どうも。
K−BOXでギター弾き語りをしていますmattunといいます。
よろしくお願いします。
・「自分の存在が何なのかさえ解らず震えている」この日もmattunは尾崎豊の曲を歌いました。
・「盗んだバイクで走り出す行き先も解らぬまま」・「暗い夜の帳りの中へ」・「誰にも縛られたくないと」満足に出ない声。
まだ思いを歌にできていない焦りから自分を責めていました。
しかし控え室でメンバーから思わぬ言葉をかけられます。
艶のあるいい声してるねとか何かいい…。
あ〜すごいなって思って本当いい意味で尾崎色出さないでちゃんとmattunさんっていう自分の要素出してるんだなっていうのが…。
それは本当にありがたい。
俺は自分がいじめられた経験とか悔しさとかを尾崎の言葉を借りて歌ってると思ってて。
僕も尾崎がやっぱり同じように…。
自分がいじめられてる時に尾崎と出会って。
本当尾崎のものまねしかできない。
mattunいいステージだったね。
信じれるものが最初は私だけだったかもしれないけどそっから2人3人今メンバーって大家族がみんなついてるんだと。
だから共に…いい時だけじゃないんだよ共に泣き共に笑い合える仲間がいる事がやっぱり喜びにしてほしいなって思います。
仕事していないから駄目だって思うならじゃあ仕事をすればいいんだっていうのは分かってる訳ですよ。
だからどうやったらそこに向かえるかを一緒に考えていきたい。
1週間後。
mattunがKaccoさんを呼び出しました。
ただサビっつってもちょっと尻切れかも。
いいよ。
出来た歌の一部を聴いてほしいというのです。
・「でもギターを置けばただの引きこもり」・「世間に抗う術はない」…って感じですね。
Kaccoさんが歌の相談を受けるのは3年ぶりでした。
ここが終わりみたいな感じですね。
・「でもギターを置けばただの引きこもり」・「世間に抗う術はない」・「タタタタタタタタタタタタタタ」・「タタタタタタタタタ」
(電子音)
(mattun)こんな感じかな。
(Kacco)これじゃあ残しておいてあれしますわ。
今日ねできる訳じゃないからね。
OK分かりました。
これじゃあ預かっておきます。
訪れた変化の兆し。
「作詞・作曲mattun」。
「ギターを置けばただの引きこもり世間に溶けこむ術はない」。
「自分が何者かわかるまで今はありのままの自分を受け入れる」。
仲間が気付かせてくれた素直な今の気持ちです。
やっぱ一人で籠もってていくら考えたって何か…何かそれは詩じゃなくて愚痴なんですよ。
どっかでは普通になりたい…普通になりたい。
分かんないな…普通って何ですかね。
・「ホーホーホーホーホー」これ完全に…これはファルセットなんですよ。
犬の散歩してないと完全変な人なんで。
散歩してればまあ…。
・「ホーホーホーホーホー」ひきこもる事。
普通でいる事。
その差はそれほど大きくないのかもしれません。
ひきこもりの人はおよそ70万人。
今日もどこかで一歩踏み出すきっかけを探しています。
2015/12/01(火) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「もう一度自分を信じるために〜ひきこもりからの挑戦〜」[字][再]
ひきこもりの人たちが所属し、舞台に立つことで社会復帰を目指す芸能プロダクション「K−BOX」。彼らはどのように再び社会へと戻っていくのか、メンバーの奮闘を追う。
詳細情報
番組内容
幼少期のいじめや職場での挫折、そうした経験から社会と関われなくなる“ひきこもり”。彼らに舞台に立ってもらうことで社会復帰へと導こうとするのが芸能プロダクション「K−BOX」です。所属メンバーは舞台で自らのコンプレックスや辛い体験を込めた歌や踊りなどを披露します。そして、客から感謝され、拍手をもらうことで自信をつけ、再び社会へと戻っていきます。番組では「K−BOX」メンバーの奮闘の日々に密着します。
出演者
【語り】河野多紀
ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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