「きょうの健康」今日は「おいしく食べる!摂食えん下障害対策」です。
食べ物をうまく食べられずに体重が減って困っているという方多いのではないでしょうか。
今日のお話は日本大学歯学部教授植田耕一郎さんです。
歯科医の立場から摂食えん下機能の治療とリハビリに取り組んでらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
本当そのおいしく食べたい食べるという事考えたら当たり前の事なんですけれども悩んでらっしゃる方多いですよね。
私の母親もそうなんですけども。
高齢であったり寝たきりの方の中には食事をなんとかしたいと思ってらっしゃる方多くいらっしゃると思います。
食事それというのは摂食。
これは口や歯を使って味わいをもっておいしく食べるという事。
それからえん下。
これのみこみの事をいいますけれども喉を安全に食べ物を通過させるという事。
この両者は食事には欠かす事のできない事であろうかと思います。
この方は90歳の方なんですけれどもふだんはベッド上で生活してらっしゃって口から食べられない起き上がれないそして無反応無表情といったような状況なんですけれどもこの方にゼラチンゼリーを口元に持っていって反応を見ながらひとくちふたくちとして差し上げますと最初の数口なんですけどもそれを数日続けていきますとそれこそ目が開くようになったりア〜ア〜と声を発するようになったりあるいは体をしっかり起こすようになって表情が出てきたりといった事になります。
ひとくちふたくちであるんですけど味わうといったような事というのは単に栄養水分補給にとどまらない生きるだけではなく生活をするという意味で潤いを持たせるものであろうかというふうに思います。
本当にそうですよね。
でもどうなんでしょう。
そもそも食べるという行為ですね私たちの口とか喉ではどのように動いているのかこちらの模型で説明をして頂けますか?横から見た図になります。
これが口ですね。
これ舌というのはこれだけ口の中でボリュームがありますね。
そして鼻につながる通路。
そしてこの辺りが喉になりますがこの辺りに喉仏があります。
のみこむ時には喉仏が一旦上がってから下がるのが分かると思います。
喉が上がってその時にここに気管を塞ぐ蓋喉頭の蓋と書いて喉頭蓋っていいますけどこれが下がってきて気管の入り口をピタッと塞ぎます。
そしてもって後方の食道に食べ物が流れていくという。
じゃあ蓋をしてこちらに行かない訳ですね。
でもそうするとのみこみが悪いというのはどういう状態になっちゃうんでしょう?例えばのむ瞬間に口が開けっ放しになったりあるいはこれ軟口蓋っていいますけどこの軟らかい所がピタッと鼻をつながる通路を塞いでくれなかったり圧が高まりませんからそうしますとタラタラタラ〜という形でそれこそ気管の方に入り込んでしまったりあるいは蓋の上のとこですねここにたまりっ放しになってしまったり。
そんなような時にあふれかえったものが気管に入り込んでしまう。
そんなような事であります。
それではこの写真で少し説明して頂けますか?これが横から見た絵で口ですね。
そしてこの辺りが喉で喉仏はこの辺にあるかと思いますけど前方の白い抜けたのが気道です。
後方が食道。
これが気管を塞ぐ喉頭の蓋喉頭蓋があります。
今度は実際の映像で見てみますとまず普通の正常の方はものをのみこみますと…。
黒く映るのが水なんですけどちょっととろみをつけています。
そしてゴクンとのみこんで蓋の上を通過して後ろの食道に流れていくと…。
きれいに食道に…。
ちょっとスローにしてもらいますとこのとおりゴックンという動作が始まって口も塞がり鼻も塞がりでもって蓋の上に下りてきたものがちょっと勢いをつけてそのままス〜っと食道に流れていくといったような状況。
これが正常なえん下になります。
それがえん下障害の方になりますと…。
一方えん下障害になりますとこの方も一生懸命のもうのもうとされてるんですけれども恐らく口の圧が高まらないんですね。
タラタラタラ〜っと流れ落ちてきてそしてもう既に食道の入り口は閉まってしまっています。
そこであふれかえったものが前方の気道の方にダラダラダラ〜っと流れ落ちていくという事。
これが誤えんという事ですね。
確かに気道に入っていきますね。
でも気道に入ってしまうとこれは大変な事ですよね。
そのまま肺の方に行ってしまうと肺でもって肺炎を起こす。
いわゆるそれが誤えん性肺炎といわれるものですね。
当然肺炎を起こせば熱が出てむせやすくて特に水などはサラッと流れ落ちやすいのでそうしますと低栄養だの脱水だのという事になっていって当然食事に制限がかかりますから食べるという意味での楽しみですとかそれこそ生きがいみたいのまで通じるでしょうか。
喪失という事になるかと思います。
でもどうなんでしょう。
のみこみが悪い…本当に重篤にならない前に気付く何かヒントみたいなのあるんでしょうか?一つはやはり先ほどのむせが指標になろうかと思います。
決してむせは悪い事ではないんですよね。
気管から吐き出そうと思った防御機転が働いてる証拠ですから。
ただやっぱりむせの頻度が従来に比べるとずっと増えたって事になるとちょっと喉の機能怪しいなという事になりますしそれからふだんガラガラゴロゴロというたんが絡んだような声してるという事は蓋の上の所にものがたまりっ放しになってるという証拠ですからそれも喉の機能の低下になろうかなと思います。
単にそれに食事というのは喉だけの問題ではないのでそれこそ口を開けたら食べ物がべったり貼り付いていたりあるいは食べたものを口からポロポロポロポロこぼすなんていうふうになってくると全体的に食事の機能が少し落ちてきてるなという指標になろうかと思います。
ご本人もそうですけどやっぱり周りの家族とかが気付く事もあるでしょうね。
むしろご本人より周りの方が気付いてもらった方がいいのかもしれないですね。
その誤えんになったりとかのみこみづらい。
そういう場合にはどうしたらいいんでしょうか?ポイントは3つあります。
まず食事なんですけれどもとろみ。
水というものは一見のみこみやすいんですけどサラ〜ッと流れるので誤えんもしやすいです。
そんな時にちょっととろみをつけます。
ただボタ〜ッとしたとろみではなくって水でしたらちょっと糸を引く程度でいいというふうに思います。
それで喉の動きについていかせるようにするという事ですね。
次はまとまりよくするという事なんですけどかみ砕いたものを口の中で咀嚼をします。
その際には唾液を吸い取ってドロ〜ッとまとめたものを口の中で加工する訳ですよね。
これは軟らかければいいという問題ではありません。
やはりまとまりやすくそれこそクッキーやお煎餅の方がかえって唾液を吸い取りやすくてまとまりやすい。
反対に焼き魚のようなものを刻みにされちゃうとパサパサして余計かみにくいのみこみにくいという事に…。
それなりにまとまりがあった方がいいという事ですね。
そしてやはりかみごたえです。
かむという動作でもって咀嚼を誘導できます。
一見ペーストだとか刻み食よさそうなんですけどあれはある意味かまなくてもいい丸飲み食ですからかえって誤えんを引き起こすという事になります。
ある程度機能がしっかりしてる人はかみごたえでもって味わうという事。
この動作が出てくるとのみこみのようにすごく安全な方向にかえっていこうかなというふうに思います。
かむという事が非常に大切になってくるんですね。
のみこみなんかもやっぱり好きなものはむせないんですね。
嫌いになると途端にというものありますからとろみを一律つければいいという話でもまたなくなってくるという事かと思います。
今度この姿勢も相当これ影響するんですか?あごを引くというような事なんですけれども先ほどお見せした方ひとくちふたくちというところから始まったんですけどあのような方の場合にはなかなか口の中に入れたものを奥に送り込む事が多分口の中でできないのでちょっと傾斜させてもらって重力の力を借りて喉の奥の方に送り込みます。
ただこの時にはちょっと頭の後ろに枕を置いてあごを引いてちょっと前かがみにするという。
ピ〜ンと伸び過ぎてしまいますと口と気道の関係が一直線になってしまいますのでストンと気道に行きやすいのでちょっと前かがみをするのが大事かなというふうに思います。
前かがみ…あごを引くというのが大切なんですか。
そうですね。
とかくこうギャッジアップしますとず〜っとこう首が後ろに引けてしまう事があるのでそれはちょっと注意なさった方がいいかなと思います。
そのほかに座って食べる方においても前かがみになったりあるいは傾いてしまったりだとかあるいは先に伸び過ぎながら食べたりとかというのもやはりちょっと危ない姿勢かなと思います。
なるほど。
あとあれでしょうかその食べる時に注意をする姿勢ですねあごを軽く引くという事とほかにまだありますか?次はやはりこのリハビリという事になりますが日常ですねこのような体操をちょっと生活の中に組み込んでもらえればというふうに思います。
手足にリハビリテーションがあるのと同じように口にも筋力増強訓練だストレッチだマッサージといったものがございます。
唇だの舌だの頬だのといったとこに注目しながら体操がありますのでそれを紹介させて頂こうかと思います。
ではあちらでお願い致します。
まず…。
咀嚼というのは今日は口ストレッチこれをちょっと紹介させて頂こうと思うんですけど。
咀嚼というのはこの唇だの頬だの舌だのを使っての咀嚼運動になりますのでまず唇これをちょっと注目して頂いて。
う〜…。
それから口角を意識してい〜…ですね。
(2人)う〜い〜う〜い〜。
はい結構です。
次は頬意識します。
頬を…と膨らませます。
そして今度は息を吸うように…とすぼめます。
膨らませてすぼめて膨らませてすぼめて。
はい結構です。
舌ですけども舌を思いっきり前に出して。
それから右左上下ですね。
手足に筋力増強訓練やストレッチがあるのと同じように口にもこのようにストレッチという形ですね。
どれぐらいこれは行えばいいんでしょう。
一日今のような1セットで結構です。
はい。
歯ブラシをするついででも結構ですしあるいは湯船につかりながらゆったりとした気分の中でやるという事で十分かなというふうに思います。
まだ何かありそうですけども。
次は今度は…ちょっとこちらの方に横になって頂ければというふうに思います。
喉仏この位置というのがどうしてものみこみの時には上下動する訳ですね。
お年を召すとどうしてもむせやすくなるというのはどうしても喉仏の位置が下がってくるんですね。
だもんですから上がる距離が増えちゃった。
そこでもって蓋が閉まるまでに時間がかかるようになって特に水みたいのはサラ〜ッと流れ落ちてむせやすいという事ですね。
決してむせは悪い事ではないんですがむせ予防というところのトレーニングちょっと紹介致します。
喉仏にまず意識をしっかり持って下さい。
そこでもって頭だけ上げてつま先を見るという事ですね。
じゃあこれで10数えます。
12345678910。
はい結構です。
この辺り何か緊張というか喉の辺りが…。
そうですね。
喉仏は周りの喉の筋肉に支えられて上下動してる訳です。
そこで喉の筋力増強を図る事によって上下動のスピードとパワーが増してきますので蓋がしっかり閉まる事になっていくのでむせ予防という形にもなっていこうかなと思います。
これどれぐらい…。
やっぱり一日に今の10カウントを2セット3セットやって頂ければ十分かなというふうに思います。
最後にもう一つ咀嚼えん下のトレーニングちょっと紹介申し上げます。
今度うつ伏せになって…。
咀嚼えん下というのは例えば食べる時息を一旦吸って止めてゴクンをしてそれからハッと息を吐いてると思います。
吸って止めてゴックンハッ吸って止めてゴックンハッが咀嚼えん下運動の咀嚼リズムなんですね。
えん下リズムにもなります。
これは決して口や喉ではなくて腹筋だの胸筋だのこちらの機能訓練が必要になってきます。
腹筋胸筋を鍛えるという意味でこのうつ伏せ寝です。
今もうあごを枕に乗せて頂いてるのでこの首筋スッと伸びてるのお分かり頂けますかね。
もう既にストレッチ運動が首にかかっています。
ちょっとつらいと思うんですけどこれご自身の体重が胸おなかに乗っかっていますのでちょっとつらいんですがこれだけで腹筋胸筋の筋力増強訓練になります。
これでもって呼吸コントロールがうまくできるようになる事。
これによって咀嚼えん下といったものがしっかりと確実なものになろうかなというふうに思います。
でもこういう形で…訓練をすればのみこみやすくなるという事になるんですね。
そうですね。
これはどれぐらい…。
もう大体10カウント。
これもやっぱり2回3回といった起き抜けの時あるいは寝る前でも結構です。
ついでにそれをちょっとやって頂くだけで十分であろうかなと。
そんなにムキムキに力をつける必要はない訳ですからそれだけで十分です。
少し介助…必要ですね。
実はうつ伏せ寝というのはなかなか結構難しくてご高齢の方には。
そういった場合には介助をして横向きだけでも結構です。
横向きにさせる事で半分体重がかかりますから右向き左向きそれをやっぱり1分ずつぐらいやって頂ければ十分だと思います。
いろいろ今日伺った事を本当に参考になさってやっぱりおいしく食べて頂きたいですよね。
やはり誤えんを予防する事はそれによって口から食べるというメニューの広がりにもなってこようかなというふうに思います。
おいしく味わってというのがとっても大事で味わいを持てるようになると途端に喉の機能も上がってくるんですね。
食べるというのはただ生きるというためだけではなくてその人の生活の幅を広げるという意味でもとっても大事な事だろうと思います。
おいしく楽しく安全な食生活をこれからも末永く続けて頂きたいと思います。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/12/01(火) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「おいしく食べる!摂食えん下障害対策」[解][字]
加齢・脳卒中の後遺症で、かむ・安全に飲みこむことができなくなる「摂食えん下障害」。食べる姿勢・食事の工夫・口ストレッチで誤えんを防ぎ、食事をおいしく味わいたい。
詳細情報
番組内容
加齢・脳卒中の後遺症などで、かむこと・安全に飲みこむことができなくなる「摂食えん下障害」。栄養不足・脱水になりやすいだけでなく、気管に入ると誤えん性肺炎の危険がある。とろみをつけるなどの食事の工夫や食べるときはあごを引くなど姿勢にも注意する。食事前には口ストレッチで唇・頬・舌をしっかり動かすことで、誤えんを防ぎ、リラックスしておいしく味わうことができるようになる。むせ防止やそしゃくの訓練も紹介。
出演者
【講師】日本大学歯学部教授…植田耕一郎,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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