(一同)ひーひーふー。
吸って吸って吐いて。
ひーひーふー。
(稲垣)よし。
いこう。
えーっ。
息んで。
そう。
(息む声)
(稲垣)そう。
いいよ。
はい。
出てきた。
頭出てきたからね。
(三上・野島)はい。
息んで。
(稲垣)そう。
そのままそのまま。
(息む声)
(産声)
(三上)はい。
おめでとうございます。
体重は2,800gですよ。
(稲垣)予定日より2週間早かったけどね。
正常分娩だ。
心配することないよ。
(眞澄)ぼたん。
・
(ストレッチャーの走行音)
(稲垣)おめでとうございます。
立派な女の赤ちゃんですよ。
(萌子)先生。
ご相談があるんです。
(稲垣)何でしょう?
(萌子)あの子に赤ん坊なんか育てられるわけがないんです。
私は芸能活動が忙しくて手伝ってやれないしおじいちゃんおばあちゃんは高齢でとても面倒なんか見てやれる状態じゃないんです。
(稲垣)しかし眞澄さんは自分の手で育てると…。
(萌子)無理です。
そんなことできるわけがないんです。
無謀ですわ。
それは。
(稲垣)私も心配だったんで眞澄さんに養子縁組のことを説明してはおいたんですが。
(萌子)養子縁組?養子縁組ができるんですか?
(稲垣)まあできなくはありません。
(萌子)お願いします!それをぜひお願いします!先生。
(稲垣)こういうことはねお母さんとよく話し合って決めた方がいい。
ただ養子として引き取られたら先方の籍に入ることになるからね。
(萌子)その方がいいですわ。
断然その方がいい。
この子は将来のある身の上なんですよ。
ただの田舎娘なんかじゃないんです。
こんなことで人生のスタートでつまずいちゃ元も子もありゃしない。
ねえ。
眞澄。
ここはよーく考えなきゃ駄目よ。
ただのセンチメンタルで母親のつもりになっちゃおしまいなんだからね。
でも赤ちゃん…。
私の赤ちゃんだから。
私の赤ちゃんじゃないでしょ?よそにあげる赤ちゃんなんだからもうこれっきりにしなきゃ駄目よ。
これっきり?当たり前じゃないの。
抱っこなんかしたら情が移るでしょ。
あんたおっぱいもあげちゃ駄目よ。
何してんの?ちょっと。
何してんの?
(稲垣)やめなさい。
駄目です。
駄目ですって。
あっ。
痛い。
(稲垣)あっ。
ほら。
ほら。
無理しちゃいけない。
まだ安静にしてなきゃ。
お二人でじゅうぶんに話し合ってください。
それで決めてください。
もう決まってますよ。
他に選択肢はないんですから。
ぼたん。
・
(電子音)・
(電子音)
(野島)ちょっと。
何してるのよ?やめなさい。
私の赤ちゃん。
私の…。
(野島)駄目よ。
勝手にそんなことしちゃ。
放しなさい。
放しなさい!
(稲垣)どうした?
(野島)いくら言っても放さないんです。
この人。
(稲垣)ハァ…。
君か。
さあこっち渡して。
赤ちゃんはね眠りたがってるんだ。
邪魔をしないようにしよう。
ねっ。
(稲垣)お母さんとは話はついた?先生。
本当にいい人に育ててもらえるんですか?
(稲垣)それは大丈夫。
この病院にもね赤ちゃんが欲しくてもできないんで不妊治療に通ってきている夫婦が何組もいるよ。
先生がしっかりとした人を…。
間違いのない人を。
もちろん。
大丈夫。
せめて赤ちゃんの名前を…。
先生が付けてくださった赤ちゃんの名前を…。
(稲垣)そうしよう。
私が名付け親になろう。
先生が好きな牡丹の花の名前を。
先方にもそう言うから。
約束する。
この子の名前は決まっているから変えないようにってきちんと申し送りするから。
お願いします。
お願いします。
(泣き声)それからこれを赤ちゃんと一緒に。
(稲垣)分かった。
そうしよう。
(稲垣)泣きなさい。
思いっ切り泣けばいい。
お母さん。
今日の予定は?
(萌子)1時からサスペンスドラマのリハーサル。
また殺され役かしら?フフフ。
そうなのよ。
殺されるより犯人の方がまだましなのにね。
ねえ。
あんた。
旅行会社どうしたのよ?話したでしょ?内定もらったって。
そうだったかしら?嫌ね。
人の話聞いてないんだから。
まあ旅行会社もピンキリだけど新聞社系の大手だからもう決めちゃおうと思って。
ふーん。
決めちゃうの?添乗員になってあっちにもこっちにも外国旅行行けちゃうのよ?もう就活はしません。
卒業までたっぷり学園生活をエンジョイするの。
あんたよかったじゃない?ホントに。
何が?「何が?」じゃないでしょ?あのとき赤ちゃんなんか育てることにしてたら今ごろ目も当てられない悲惨な状態だったわよ?私の言うこと聞いてよかったのよあんたは。
やめて。
いってきます。
・
(眞澄・露木)あっ。
・おはようございます。
・
(露木)おはようございます。
・いってきます。
・
(露木)いってらっしゃい。
マネジャー露木です。
(露木)おはようございます。
(萌子)おはよう。
いやぁ。
びっくりした。
(萌子)どうしたの?
(露木)お嬢さん。
ちょっと見ない間にすっかり美人になりましたね。
ドキッとしましたよ。
もう横顔なんか梅鳳さん生き写し。
(萌子)そうなのよ。
だんだん似てきちゃって。
梨園の大物役者と本格個性派女優の間に生まれたサラブレッド。
デビューさせたら話題になりますよ。
そうね。
そうかもしれないわ。
(露木)母親をしのぐ女優になるんじゃないですか?あーっ。
いや。
あのう。
こう言ったら申し訳ないけど今までは子供なんて産んでないって言ってたのが実はってことになってあなただって話題の中心になるわけだから人生波瀾万丈で注目されますよ。
母子ともどもに脚光を浴びるいいチャンスじゃないですか。
駄目駄目。
(露木)どうしてです?女優になろうなんてあの子にはまるっきりその気がないんだから。
(さやか)お待たせ!ってもう食べてんじゃん。
もう。
私あなたに入れたわよ。
えっ?本当に?
(暢子)うん。
私も入れた。
清き一票。
そんなこと言って。
あなたたちテニス部のピー子が絶対だって。
(さやか)そりゃ下馬評じゃそうよ。
でもああいう健康美よりも男子にはあなたみたいな窈窕とした美人が人気あるんだから。
自信持ちなさいよ。
(暢子)美しくしとやか。
ありがとうございます。
(暢子)ことしはさ等々力の薔薇園で発表会やるんだって。
えーっ?ローズガーデンで?
(さやか)ナイスプレイスじゃん。
薔薇といえば花の女王。
そんなローズガーデンで惠暉大ミスコンテストの王冠に輝くなんて。
もう。
おだてないでよ。
その気にさせてがっくり落ち込むところが見たいんでしょ?
(さやか)眞澄は落ち込んでも憂愁の美があるからね。
ほらほら。
それが本音だ。
(さやか)ねえ。
眞澄。
うん?
(さやか)添乗員になったらまずどこ行きたいの?えっ?そうだな。
ヨーロッパかな?
(暢子)えっ?ヨーロッパのどこ?フランス?ドイツ?えーっ。
そうだな…。
(暢子)まあカワイイ。
ちっちゃな手。
(さやか)まだ生まれたばっかりね。
何カ月かしら?
(暢子)ああー。
私も赤ちゃん欲しい。
(さやか)何言ってんの。
あんた彼氏もいないくせに。
(暢子)そりゃそうだ。
(さやか)もう。
どうしたの?眞澄?いえ。
別に。
マネジャーの露木がねあんたのこともったいないって。
「もったいない」って何が?女優になれば売れるのに。
話題になるのにって。
やめてよ。
あんたはね飛び切り血筋がいいんだからね。
この母にしてこの娘あり。
いいえ。
この父にしてこの娘ありだわ。
先月の新東京劇場。
通し狂言でね出ずっぱりなのよ。
ほら。
60代も半ばだっていうのに水も滴るようないなせな二枚目っぷり。
ああ…。
舞台はやっぱりいいわね。
年齢なんかいくらだってごまかせちゃうんだから。
ずっと縁が切れたままなんでしょ?連絡しても知らんぷりなんでしょ?でもねあんたのことは認知してるのよ。
いつかもあんたの写真を送ったらね「ありがとう」ってマネジャーのとこに電話があったのよ。
よしてよ。
私の写真なんか。
二世俳優でも一度社会人になってからやっぱり芸能界に引かれて親と同じ仕事をするようになる子供がいるけれどもそんなの回り道だと思うのよ。
だから何?私に女優になれって?OLになんかなったって何ともなりゃしないじゃないの。
職場結婚でサラリーマンと結婚したって高が知れてるわよ。
やるなら今よ。
22歳じゃ遅いぐらいだわ。
結構です。
女優なんかお母さん一人で十分だわ。
興味ありません。
ああ。
私はねそこそこの女優だけれども。
でも女の職業としては悪くないと思ってるのよ。
世間から注目をされるっていうことはそれだけすてきな緊張感があるの。
その緊張感であんただってますます美しく磨かれていくの。
あんたがやる気になれば素質がものをいうわ。
眠ってる役者魂に火が付いて世間をうならせる女優になるわよ。
お母さんは私を女優にして捨てられたあの人を見返したいんじゃない?そうでしょ?かーっ。
あんたってずいぶんひねくれてるわね。
そんな目で私を?お母さんっていつも自分中心に地球が回ってると思ってる人だから。
もしかしてまだ気にしてるの?子供を産みっ放しにしてよそにやってしまったことで私に対してまだ根に持ってんの?
(置く音)やめてよ!何でそういうことをずけっと言うのよ?思ったことを何でも口に出して言えばいいってものじゃないわ。
はーい。
すみません。
あっ。
そうだ。
今日テレビやってるんだった。
(梅鳳)卑劣極まる人非人。
ではどうしてあれを手に入れたのだ?キャシオー。
あのハンカチーフを。
(男性)私は部屋に落ちてるのを拾っただけ。
それもやつが白状したとおりわざと落としていたものをたまたま手にしていただけのこと。
(梅鳳)何と。
(男性)全てがやつのもくろみどおりに運んだというわけでございます。
(梅鳳)ああ…。
浅はかな。
この俺は何という浅はかな男なのか…。
こういうシェークスピア劇なんかをやりたがるのよね。
でも似合ってるわ。
白塗りもいいけどこういう黒塗りもぴったり。
(梅鳳)哀れな男の物語。
一族の命にも勝る宝をばわれとわが手であやめたこのあほうの泣きの涙の醜態をばどうか余さず書き送ってくだされ。
せりふが乗ってるわね。
さすが。
(梅鳳)ベニス人を相手に暴行を働く無頼漢をやっつけたことがある。
(梅鳳)この外道の犬めとこの手で喉元をひっつかみこうして…。
こうして突き刺してやったわ。
(男性)あっ。
ああっ。
(男性)ああっ。
(梅鳳)デズデモーナ。
今この俺にできることはこの身は死にながらそなたに最後の口づけを。
(梅鳳)この身は死にながらそなたに…。
すごいわね。
やっぱり。
ねえ。
これがあんたのお父さんよ。
この名優が。
(拍手・歓声)
(司会)前年度優勝者の如月さんよりティアラをお贈りいただきます。
(拍手・歓声)
(拍手・歓声)
(司会)皆さん拍手!
(拍手・歓声)
(司会)それでは引き続いて賞状の授与に移ります。
副学長。
どうぞ!
(下島)表彰状。
第8回ミス惠暉大学文学部英米文学専攻西山眞澄殿。
あなたは今般見目麗しくかつ学業にも秀でわが校の才色兼備の鑑としてミス惠暉大学に選ばれました!この栄誉を祝し賞状を授与いたします。
惠暉大学副学長下島透。
おめでとうございます!
(拍手・歓声)えー。
こんなに素晴らしい賞をこんなにすてきな場所で頂けて光栄です。
ありがとうございます。
(司会)ありがとうございました。
はい。
・
(下島)ちょっと。
西山君。
はい。
(下島)紹介しておきたい人が。
あっ。
はい。
(下島)このローズガーデンの持ち主の小日向さんだよ。
校友会の有力メンバーでね場所を提供してくださったばかりかずいぶんと色々便宜を図ってくださって。
(崑一)おめでとうございます。
いえ。
すてきな場所をありがとうございます。
(崑一)ちょうど薔薇の季節でよかったですね。
これはうちからのプレゼント。
失礼。
まあ。
(崑一)それにしてもあなたの美しさに薔薇の花もたじたじですね。
そんな。
とんでもないです。
(男性)すいません。
写真いいですか?
(崑一)ああ。
(男性)いきます。
(シャッター音)
(男性)ありがとうございました
(崑一)お疲れになったでしょ?どうぞ。
(崑一)ここのローズガーデンは初めて?ええ。
でもずいぶん色々な種類の薔薇があるので驚いてます。
(崑一)そうでしょう。
明治時代にうちの先祖がイギリスからやって来て造園業を始めたんですがそのときにここに薔薇園を開いたんです。
イギリスから?
(崑一)ええ。
じゃああなたは?三代目ですからね。
もうイギリスの血は薄くなってるけど。
どうも。
(崑一)小日向崑一と読みます。
(崑一)あなたはどうして女優さんにならないのかな?女優に?
(崑一)今テレビなんかで活躍してる女優さんに比べてもはるかに魅力的だし。
ああ…。
芸能界にって勧められたこともあるんですけど私にはとても。
(崑一)よく分からないけど芸能界なんて難しい世界なんでしょうね。
でもあなたを見た途端にそんな気がして。
ありがとうございます。
そうだな…。
あなたはそのままの方がいいかもしれない。
世の中の毒に汚されないでそのままそっとしといてあげたいな。
またこちらの方にも遊びにいらっしゃい。
(崑一)失礼。
おめでとうございます。
(女性)ありがとうございます。
(崑一)頑張りましたね。
(女性)ありがとうございます。
うれしいです。
(崑一)奇麗ですよ。
えっ?お父さんに?会ってみようかな。
私のことをどう思ってるのか。
会いたいの?あんた会いたいの?このままでは中途半端な気持ちだし…。
いただきます。
ああ…。
あんたひょっとして女優になりたいんじゃないの?あら。
別に何も。
ミス惠暉大に選ばれて欲が出てきちゃったんだわ。
そうでしょう?そうよ。
女優になるためにもお父さんに会いなさいよ。
会って親子の名乗りをすれば自信が持てるわよ。
遠慮なんかすることないわ。
実の娘なんだから堂々と会いに行けばいいのよ。
(男性)どうぞ。
失礼します。
(男性)師匠。
お連れしてまいりましたよ。
(梅鳳)ああ。
うんうん。
(男性)お座りなさい。
(梅鳳のせきばらい)突然お邪魔してすみません。
私浅黄萌子の娘で眞澄と申します。
あのう…。
2015/12/01(火) 13:25〜13:55
関西テレビ1
新・牡丹と薔薇 #02[字][デ]【父は梨園の大物役者!!】
昭和57年の夏。高校3年生・眞澄(美山加恋)は不安を胸に抱えながら、産婦人科を訪ねる。眞澄は大学生の彼の子を宿していたが、その彼は交通事故で亡くなってしまい…。
詳細情報
番組内容
母・萌子(山口いづみ)と祖父が眞澄(美山加恋)の妊娠のことで言い争いを始める中、眞澄の陣痛が始まる。病院に運ばれ、眞澄は無事出産。生まれたのは女の子だった。
お腹が大きくなるにつれ、母性が目覚めた眞澄は産まれた子を自分で育てる気でいた。しかし萌子が猛反対する。ついに萌子の勢いに負けた眞澄は、娘を養子に出すことに。
番組内容2
眞澄は、仲介をする稲垣に、せめて名前だけは稲垣が命名してくれた“富貴子”にしてほしいと懇願する。
それから時が過ぎ、昭和61年の秋のこと。萌子のもとで暮らし、大学生としてキャンパスライフを謳歌する眞澄は美しい娘に成長。萌子は、実の父が有名な歌舞伎俳優・梅鳳(佐藤仁哉)である眞澄のことを、密かに女優にしたいと思うようになっていた。
番組内容3
そんな中、大学のミスキャンパスに選ばれた眞澄は、バラ園を経営する崑一(岡田浩暉)という洗練された大人の魅力を持つ男性と出会う。
出演者
小日向ぼたん:黛英里佳
小日向美輪子:逢沢りな
牧原世奈子:田中美奈子
小日向崑一:岡田浩暉
浅黄萌子:山口いづみ
西山眞澄:美山加恋/小日向眞澄:伊藤かずえ ほか
スタッフ
【企画】
横田誠(東海テレビ)
【原作・脚本】
中島丈博
【演出】
西本淳一
【音楽】
中川幸太郎
【主題歌】
サラ・オレイン「涙のアリア」(ユニバーサルミュージック)
【プロデュース】
西本淳一(東海テレビ)
大久保直実(ビデオフォーカス)
坪ノ内俊也(ビデオフォーカス)
【制作著作】
ビデオフォーカス
【制作】
東海テレビ
ご案内
公式サイトやSNSなど、充実のウェブコンテンツは「昼ドラ」で検索!!
【公式サイトURL】
http://tokai−tv.com/botabara/
【公式ツイッター】
@hirudoraTokaitv
【公式LINE@】
hirudora
【YouTube】
東海テレビ公式チャンネルも好評配信中!
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32724(0x7FD4)
TransportStreamID:32724(0x7FD4)
ServiceID:2080(0x0820)
EventID:38060(0x94AC)