（マイケル）
これは極東の国日本を訪れた我々家族の１００日間の冒険の物語。
我々の目的は寺院巡りでも秋葉原でのショッピングでもない。
我々の最重要課題それは…
日本を食べ尽くす事だ。
我々英国一家は禅の精神を磨き自然と心を通わそうと京都のとある寺にやって来た。
まではよかったのだが…
（リスン）エミルー！いい子だから戻ってきなさ〜い！
（リスン）そこに入ると怖いおじさんに怒られるわよ！エミルー！はぁ…全然聞こえてない。
（アスガー）無駄だよ。
完全に無我の境地に達してる。
くそっ…ちょっと目を離した隙に…！パパがめい想して悟りを開こうなんて言いだしたせいだよ！抱いて連れ戻すしかないな。
（リスンアスガー）えっ！神聖な場所でしょ？入ったら怒られるよ。
大丈夫だ。
石から石へ跳んでいけば足跡をつけずに戻ってこられる！行けえぇ〜！え…あっ！うわ…ださ…。
イテテテテテ…。
（近寄る足音）ん？
（鬼塚）石庭にダイビングとは感心しませんなマイケルさん。
はっミスター鬼塚！なぜここに？以前マイケルさんも見学された例の料理コンテストあれの全国大会が京都で開かれるんですよ。
ついでにこの寺に寄ったんですがどうもあなたとはご縁があるようだ。
妻のリスン長男のアスガーそして次男のエミルです。
お会いできて光栄です。
この方が日本料理界の重鎮ミスター鬼塚だ。
彼が書いた日本料理の本に出会わなかったらこうして日本に来る事はなかっただろう。
尊敬すべき僕の恩師さ。
フッ…マイケルさんいささか持ち上げ過ぎですよ。
ハハハハハハハッハハハッ…！ジャパニーズマフィアにしか見えないんだけど。
シーッ！ところで皆さんお食事はもうお済みですか？いえまだですが。
実は近くにうまいすしを出す店があるんです。
北海道から福岡までいろんな場所を取材してきましたが驚くべき出会いと発見の連続でした。
執筆作業も順調です。
それは楽しみだ。
本のタイトルは決まってるんですか？まだ決まってませんがイメージはあります。
ほほぅ。
日本料理といえばすし。
そう考える人が海外では圧倒的に多い。
だけど僕はすし以外の多様な日本料理を世界の人たちに伝えたいんです。
例えば「すしだけじゃない日本料理」！…いや「日本人はすしのみで生きるにあらず」！…違うな。
タイトルはともかく内容には自信があります。
ひょっとするとあなたの書いたこの本よりすばらしい本になるかもしれませんよ!?…なんてね。
ダハーッハハーッ！ハッハッハッハッハ。
（従者）先生たあいもない冗談です。
どうかお気になさらず。
ハハッ気骨があってよろしい事だ。
（店員）お待ちどおさまでした。
え？何これ…。
マグロはないの？フフッアスガー君。
君たちの知っているすしとは違うだろう。
これはねぇ…。
鯖ずしだ！ご存じでしたか。
ええもちろん！
（鬼塚）さすがマイケルさんだ。
鯖ずしは押しずしと呼ばれるとても歴史があるすしの一種でね君たちの知っているすしとは作り方が違うんだ。
手のひらの上で握るのでなく…。
ギュッと押し固めて作るんだよ。
へぇ〜そうなんだ。
作り方は…こうだ。
塩漬けにした鯖を酢で締め鯖に酢飯を載せる。
それを酢で煮た昆布で巻き更に竹の皮で包む。
一晩から１日寝かせる事でうまみを増ししょうゆやわさびはつけずにこのまま食べる。
う〜ん！わっ意外とイケる。
（リスン）あらっおいしいわ！
（エミル）酸っぱい。
まわりの昆布も食べられるみたいだぞ。
先生！どうかお気になさらず。
一体何を気にするというんだ。
的確な説明だったじゃないか…。
（リスン）まあすてき〜。
ここのところ京都の用事が増えましてね。
最近はここを別宅として使っているんです。
鯖ずしの事までご存じとは驚きました。
いやぁ〜一応フードジャーナリストを名乗っておりますので。
しかし実際に食べてみて鯖ずしがすしの源流と言われている意味がよく分かりました。
握りずしと鯖ずしは酸味のある飯をネタと共に味わうという点では同じですからね。
しかし飯を酢で味付けするようになったのは１７世紀に入って酢が普及してからの事。
では酢が普及する以前のすしとは？え？ふなずしというものはご存じですかな？なれずしの一種で千年以上の歴史を誇る酢を加えない発酵食品です。
魚を米などのデンプン質の食べ物と一緒に漬け込みデンプンの自然発酵で生じる乳酸により魚の身が腐るのを防いだ保存食ですしの源流ともいわれている
以前本で読んだ事はあります。
研究熱心でいい事だ。
マイケルさんにふなずしを。
（鬼塚）琵琶湖から取り寄せたふなずしです。
（匂いを嗅ぐ音）うえぇ〜…！アスガー！少々匂いがきついかもしれませんな。
しかし私はこれが好きでして。
すしの歴史を語るならふなずしは避けて通れません。
（鬼塚）ふなという淡水魚を卵巣以外の内臓を全て取り出して塩漬けにしたあと水洗いしうろこを落として米の飯と一緒に数か月から１年以上漬け込む。
発酵の過程で米はどろどろに溶けそれにまみれたふなを…食す。
ふなを…１年…。
米がどろどろに…。
米は乳酸発酵の材料というわけか…。
そうです。
しかしその米を食らうのもまた一興…。
御託を並べるのはここまでにしましょう。
ジャーナリズムの国イギリスからやって来たあなたの事だ。
まさか経験の裏打ちもないまま聞きかじりの内容を本に書くわけにもいきますまい。
さあ遠慮せずに…。
フッフッフッフッフ…ハッハッハッハッハ…！新鮮な魚もツヤツヤのお米もないなんて…。
こんなの僕たちが知ってるおすしじゃないよ！江戸前ずしの事を言っているのかね？え…江戸前？世界的に知られている握りずしはもともとは今の東京湾の魚つまり江戸前の魚を使った事から江戸前ずしともいわれている。
浅いんだよ。
江戸前ずしの歴史などふなずし千年の歴史に比べれば赤子同然！２００年ほど前の東京つまり当時の江戸で握りずしは産声をあげる！そのきっかけの一つと考えられているのが…江戸の火事！当時の江戸は火事が多く屋台や売り歩きの火の使用は禁じられていた！そこで火を使わない料理として仕込んでおいた魚をサッと握って出す握りずしが屋台で食べるファストフードとしてせっかちな江戸の庶民に広まる事になる！握りずしが歴史の浅いファストフード!?フードジャーナリストを名乗るならのぞいてみたいとは思いませんか？握りずしの…向こう側を。
では失礼して…。
見えるぞ…強烈な酸味の奥で熟成されたうまみがダンスを踊っている…。
まさに選ばれた者だけがたどりつける禁断の楽園！あなたの番です。
あぁ〜！これが食べられないなら私の勝ちですよ。
（従者Ａ）いつの間にか勝ち負けの問題に！
（従者Ｂ）やはり先生は相当ムカついておられたのだ！マイケル大丈夫？パパしっかりして！人跡未踏の地を歩んだ人間にしか見えない風景というものがある。
挑戦なくしては得られない果実というものがある！進むか戻るか!?どうするんだ！マイケル・ブース！
（エミル）僕たち負けないよ。
パパ勝って！…私も？マイケル…。
（３人）負けないで〜！ミスター鬼塚あなたの本に出会ってから僕はずっとあなたに導かれてきたような気がします。
だけどここから先は僕の意志で進む！あなたの志を継ぎあなたを超える！んん〜！心の声強烈な匂いと酸味の奔流の中で僕の舌が探り当てたもの…それは濃厚なうまみの…爆発だった…。
あぁ〜！うま〜い！あぁ…。
目が覚めた？あ…うん…。
（笑い声）遅いよもっと速く。
ほらほらほら！ほら！何だかほんとのおじいちゃんみたい。
鬼塚先生変に意地っ張りなところはあなたそっくりね。
そういう気性の激しさも必要なんだよ。
自国料理の伝統を守り発展させる立場の人間にはね。
（鬼塚）今日は楽しませてもらった。
すばらしいご家族ですね。
彼らは僕の共同執筆者です。
というと？日本料理を探求する家族の旅行記として自分の本を書くつもりでいるんですよ。
なるほど。
きっとあなたなら私には書けない本を書いてくれるでしょう。
さすがに４対１じゃ分が悪い。
実はさっきふなずしを食べた時タイトルを思いついたんです。
ほほぅ。
（トシ）いいタイトルだマイケル。
お前にしちゃ上出来だが肝心の中身はどうなんだ？すしの本質は書けているのか？しかたない。
ここからはお前のためのスペシャルプログラムだ。
用意はいいか？マイケル少しは分かったか？2015/12/01(火) 16:05〜16:25
ＮＨＫ総合１・神戸
アニメ 英国一家、日本を食べる「すしの源に」[二][字][再]
イギリス人フード・ライターとその家族が、日本に滞在して各地の料理や食材を食べ尽くす！？「和食」をテーマに、一家の１００日に渡る日本珍道中を描くコメディ・アニメ。
詳細情報
番組内容
一家で京都の寺を訪れていたマイケルは、日本料理界の重鎮・鬼塚とばったり再会。昼食にすしを食べようと誘われ、ついていくと出てきたのは京都名物の鯖（さば）ずしだった。握りずしを期待していたアスガーは不満げ。一方、マイケルは、得意になって鯖ずしのなんたるかを解説し出す。すると鬼塚は、すしの源流とも言われる滋賀の鮒（ふな）ずしをマイケルたちの前に出してきた。初の鮒ずしを前にマイケルは…。
出演者
【声】竹本英史，満仲由紀子，広橋涼，徳山靖彦，滝藤賢一，荒井聡太
原作・脚本
【原作】マイケル・ブース，【翻訳】寺西のぶ子
監督・演出
【監督】ラレコ
ジャンル :
アニメ／特撮 – 国内アニメ
情報／ワイドショー – グルメ・料理
趣味／教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード（ステレオ）
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
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