タイムスクープハンター セレクション「のろしを上げよ!」 2015.12.02


(沢嶋雄一)え〜アブソリュートポジションN271W425E253S149。
ポジション確認。
アブソリュートタイムS0277139年82時63分14秒。
西暦変換しますと871年2月9日7時38分。
無事タイムワープ成功しました。
本部どうぞ。
(古橋ミナミ)こちら第二調査部コントロールブース005。
タイムナビゲーターの古橋ミナミです。
そちら異常はありませんでしょうか?確認をお願いします。
ケガなしウイルス反応なし。
いつものように軽度の頭痛を感じますがタイムワープ時によるセロトニン過剰分泌によるものだと思われます。
職務には影響ありません。
了解しました。
これから取材態勢に入ります。
この時代西暦871年ごろの基本データをお願いします。
了解。
時代区分では平安時代の前期にあたります。
平安時代が始まっておよそ80年ですね。
主な権力者は…政治的には当時の中国に倣って中央集権的な律令制がとられています。
租庸調といわれる厳しい租税制度は民衆にとっての大きな負担となっていたようです。
注目すべきは外交です。
唐新羅それに渤海といった周辺諸国との交易が行われ交流が盛んでした。
以上です。
了解しました。
コードナンバー153252これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
西暦871年平安時代。
九州の沖合にある島対馬。
その海辺の高台で草を集める男たちがいる。
今回の取材対象者はのろしの番人。
煙や火でのろしを上げて緊急情報を伝えていた
現在私は西暦871年九州の北対馬に来てます。
ここは見晴らしのいい岸壁になってまして向こうの方まで海が見える場所になってます。
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
平安時代のろしは「ほうか」または「とぶひ」と呼ばれていた。
「宙を飛ぶ火」と呼んだように情報を伝える手段として抜群のスピードを誇っていたのである
ちょっと見てみましょう。
ちょっとよろしいでしょうか。
本部本部応答願います。
沢嶋です。
はい古橋です。
のろしの材料の材料分析をお願いします。
了解しました。
ターゲットゾーンに入れて下さい。
了解。
これらをまぜて燃やし煙を上げる。
一方夜の場合は煙の代わりに炎が用いられた。
そのため夜用には草を束ねて炎が出やすいように工夫していた
ちょっとよろしいでしょうか。
松の枝ですね。
火炬の材料は乾燥した葦と樹脂が多く含まれる松の枝と葉っぱであった。
のろしの材料は雨などにぬれないように小屋に保管される
9世紀周辺諸国との交易が盛んになると対馬海域一帯ではそれを狙った海賊船が頻繁に出没していた。
沖を行き交う船を監視し海賊船を見つけたら直ちにのろしを上げる。
それが彼らに課せられた任務であった。
上げられたのろしは九州を管轄する特別行政機関大宰府までリレーで伝達されるシステムになっていた。
この施設に常駐し海を見張る彼らを烽子と呼ぶ
経験を積んだベテラン
6日前着任したばかりの新人である。
任務は通常3年。
烽子は国から課せられた労役であった。
そのため報酬などはない。
いかなる天候でも休む事なく海上を監視し続ける過酷な任務だ
にわかに辺りが慌ただしくなった
忍秦が海上に船を発見したらしい
今向こうの沖合に船が見えたようですね。
賊なんでしょうか?今ちょっと確認してます。
海賊船かそうでないか彼らにとって最も緊張が強いられる時だ
船は唐の商船と判断された
直ちに1つののろしに火をつける。
すぐに煙が立ち上る

7km先の山御嶽には中継ポイントとなる次ののろしの施設がある
その山から煙が上がるのが確認された。
こちらの煙を受信し更に先の中継ポイントへと送信したのだ
こちらコントロールブース005古橋です。
のろしが上がりました。
了解。
モニタリングを始めます。
私は直ちに本部に連絡。
のろしがどのように伝わっていくのかその経路のモニタリングを要請した
島内の中継ポイントを経てやがて海を渡り壱岐へ。
そこから更にリレーされ筑前国に入りそして最後には大宰府に到着した
こののろしの知らせを受けた事により大宰府は唐からの民間交易船を出迎えるため直ちに準備態勢に入る事ができた
先ほども唐の商船だとおっしゃってましたが…。
そうですか。
なるほど。
なるほど。
彼らの生活には厳しい現実があった。
律令体制の下で庶民たちには租庸調という厳しい税が課せられていた。
お金ではなく物を献上したり土木工事や兵役などの労役が課せられたりしていた。
烽子たちにはその労役の一部が免ぜられる特典があった。
だがそれでも過酷な仕事には変わりはない。
彼ら庶民の主食は粟や稗などの雑穀が多くたまに口にできる米はこのようにかゆにして食べるのが精いっぱいであった
いいですか?すみません。
割と味はあまりありません。
現代でいうとおかゆのようなものですね。

日が落ちると別の烽子がやって来た。
交代要員である。
烽子は原則2人1組で1日2交代制である
夜間の監視に就く烽子たち
共にこの任務に就いて1年になる農民である
現在夜の9時を回ったとこです。
かなり冷え込んできましたが…。
とても過酷な任務です。
しかし彼らは休む事はできません。
1つののろしにつき4人の烽子がこうして24時間休む事なく勤めていた

彼ら4人の烽子の上に更に烽長と呼ばれるリーダーが配属されていた。
人望のあつさを買われ刑部石足がチームを率いていた。
彼らの仕事は全て軍防令といわれる軍務に関する法令によって細かく規定されている。
のろしは極めて重要な通信手段である。
外敵からの襲来に備えるための軍事的な監視システムだったからだ。
対馬は周辺諸国に近いという地理的要因と交易船を襲う海賊船の出没のため常に緊張状態にあった
幸い海上にはこれといった目立った船は通っていない。
天候にも恵まれ穏やかな日が続いていた。
だがその夜半状況が一変した!
どうしました?あれを…。
夜勤の雄友が近くの岩陰に何かを見つけた
あちらの岩の辺りでしょうかね。
船でしょうか?
カメラは岩場の向こうにゆっくりと動く黒い船影を捉える
え〜船でしょうか。
船らしき物体が見えてます。
海賊船か?商船か?暗さでよく見えない中で難しい判断を迫られる。
間違いを犯せば厳しい罰則が待っている
しかり!緊急事態です!ここから1kmないぐらいの所ですかね不審船が発見されました。
海賊船だとの事です。
仮に交易船であれば自分たちが処罰される事で済む。
だがもし海賊船だとしたらより甚大な被害をもたらしてしまう。
2人は決断した。
上げるのろしは2つ。
彼らは不審船を海賊船だと判断した。
2つの火炬に火をつける。
炎は瞬く間に燃え上がった。
暗闇に明るい炎が2つ。
この信号が次の中継地点に伝わるか。
2人に緊張が走る
そして…上がった。
「海賊船来たり」情報はたちまち対馬の国府に届くはずだ。
そしてすぐに警備のための軍船が出港する事になる
よし!
だがこの直後更に緊迫した事態が待っていた
海賊船と思われる船が近くの陸地に着岸したのである
待て待て!待て!
賊への対応をどうするのか2人で意見が割れる。
彼らの任務はあくまでものろしの番人である。
不用意に持ち場を離れる事は許されていない
だがここで賊を食い止めなければ自分たちの村が最初に攻撃される事も予想される
腹を決めた!
緊迫した状況が続いてます。
先ほどの不審船があの岩の辺りに着岸したもようですね。
これから崖を下りて確かめに行くとの事ですが大丈夫でしょうか?私もついていってよろしいでしょうか?はい。
私の務めです。
崖の下に様子を見に行く事にした。
広国に同行取材を許された。
足場の悪い岸壁の岩をゆっくりと下りていく。
荒れた海が間近に迫る。
岩陰伝いに慎重に進んでいく

緊張が走る。
…とその時だった!
誰ぞ!?待て!誰ぞ!?
大きな箱を運ぶ怪しい男
事態を聞きつけた烽長と他の烽子たちが崖を下りてきた
賊ではないと必死に主張する男
男が箱から取り出したのはおおかみの生肉であった。
自分が仕える家に急病人が出たためその薬としておおかみの肉を急ぎ運ぶところだったという
男は賊ではなかった。
烽長の石足が決断する
のろしは誤報となった
間違って送ってしまった信号をすぐに止めなければならない。
一番若い新人の忍秦が報告のため急ぎ次の中継ポイントへと向かった
夜明け彼らの表情は重かった。
失態を犯してしまった責任は重大であった。
のろしの合図ひとつで多くの人員と軍が動く事になる。
烽子たちにとって過ちは絶対に許されないのだ。
やがて烽長の石足が国司の使者を案内してやって来た。
国司とは中央から派遣された役人である
おう。
過ちを犯した広国と雄友が同行を求められた。
2人は国府での取り調べを受ける事になる

軍防令には誤ってのろしを送ってしまった場合厳しい罰則規定が決められている
残された2人の烽子志古夫と忍秦。
彼らはこれまで以上にプレッシャーを感じていた。
二度と過ちは許されない。
海の監視は24時間体制で容赦なく続く
再び緊張が走る!

一隻の船が沖合に小さく見える。
海賊船か?交易船か?
昨夜の過ちが脳裏をかすめる
判断がおのずと慎重になる
過ちは繰り返せない
そして…
航行する船をベテランの志古夫は新羅の交易船と判断した。
速やかにのろしに火をつけた
瞬く間に煙が上がる。
空に交易船を表す1本の煙が立ち上った。
次の中継地点からのろしが上がるのを待つ。
だが…
駄目だ!のろしが一向に上がらない。
交易船は無情にも沖合を通過していく

軍防令第六十七条

そして…
彼らは軍防令の規定に従って次の行動に移った
むしろぬしこそこうじためれ。
されば委ぬるぞ。
若い忍秦が次の中継地点に向かって出発した。
私も密着取材するため彼に同行した。
次の中継地点御嶽までは直線距離で7km。
険しい道を必死に駆け上がる
先ほど交易船が航行するのが確認されのろしを上げましたが次の中継ポイントののろしが上がりませんでした。
確認のため走って向かってるところです。
次のポイントまで約7kmほどですが道が険しいためかなりきついですね。
私はフィジカルバージョンアップシステムを装着しているため通常の体力の1/3に抑える事ができますがそれでも道がハードなためかなり厳しいです。

1時間40分後ついに次の施設に到着した
こちらののろしがもやのため認識できなかったという。
知らせを受けた2人の烽子は直ちにのろしを上げる準備に入った

程なく煙が上がる

5分後次の中継地点ののろしが無事上がった
安堵する忍秦と2人の烽子
忍秦は休む間もなく自分の持ち場に戻るため山を下った。
海辺ではのろしを上げた場所からは見通しがよくとも逆方向からは煙が空に溶け発見が遅れる事があるという。
彼らはその度に走らなければならなかった
先ほどから少し雪が降ってきました。
かなり冷え込む状況ですね。
そうですか。
忍秦の素早い行動により今回は無事正確な情報を伝える事ができた。
だがこのあと予想だにしない事態に直面する事になる
どうしました?
茂みの先に怪しい人影。
弓矢や刀など武器を準備しているらしい。
明らかに挙動がおかしい。
そして…。
中央にいる人物それはまさに昨晩崖の下で捕まえたあの男だった
次々と武装していく男たち
賊に違いない

そう判断した忍秦が猛スピードで山を駆け下りる。
速やかに先輩の志古夫に報告する
かの森にて…夜前の森や?
(志古夫)否!
だが志古夫はまずしかるべき役人に伝えるべきだと判断する
…がその時だった!
遠くの海上に5隻の船団を発見した。
それはまさに鴻臚館に向かって航行する新羅商船の大船団であった
彼らは任務を全うするためのろしに火をつける事を先決した。
…がその時だった!一本の矢が忍秦の太ももを貫いた。
更に岩陰から無数の矢が飛んでくる。
賊の襲撃である
志古夫は忍秦の体を抱え必死に小屋に戻る。
賊たちが次々とこちらに矢を放ってくる
先ほどの賊でしょうかねあの岩の辺りから弓矢を撃ってきてます。
明らかにこっちを狙ってきてます。
大変危険です。
危ない!
(うめき声)
志古夫が懸命に弓矢で応戦する
こちらも弓矢をとって応戦してます。
激しい撃ち合いです!
激しい弓矢同士の戦い。
その時志古夫が岸壁に何かを発見する。
崖の突端で海に向け大きく手を振る男。
何やら合図を送っているらしい。
センサーで海上の様子をスキャンする。
沖の新羅商船団に進んでいく一隻の船。
まさしく海賊船であった。
彼らは海賊の斥候部隊と判明した。
一足早く少人数で上陸しのろしの施設を制圧する計画をしていたのだ。
合図を送る男に矢を放つ。
海賊船の出現。
直ちに2本ののろしを上げなければならない。
しかし賊は矢を絶え間なく放ってくる。
無情にも落としたたいまつの火が消えてしまう。
窮地に追い込まれた志古夫は最後の決断をする
(荒い息遣い)
痛みをこらえながら忍秦も弓矢で応戦

隙をついて志古夫が飛び出した。
何とか1つ目ののろし台にたどりついた
草に火をつけ煙が上がった
つきました!つきましたね今!煙が上がってます。

タイミングを見計らい2つ目ののろし台に向かう。
だがその瞬間!矢が志古夫の肩に突き刺さった。
倒れた志古夫に矢が降り注ぐ。
無情にもたいまつの炎が消えてしまう。
更に一人の賊が水桶を抱え下りてきた。
のろしの火を消すつもりなのか。
忍秦は矢を放った。
見事矢が桶に命中!刻一刻と海賊船が商船団に近づいていく。
速やかに2つ目ののろしを上げなければならない。
敵の攻撃がすさまじく身動きができない。
絶体絶命の危機!
その時忍秦が何かを思いついた

矢の先に火をつけのろしに狙いを定める。
そして…見事命中!中の草に引火
今つきましたね。
2つ目ののろしがつきました。
たちまち煙が上がった!二筋の煙が空へ上がっていく
だが不運にも雪が降りしきり視界が悪い。
果たして次の中継地点がのろしに気付いてくれるのか?

忍秦が最後の力を振り絞り決死の応戦。
その時だった
のろしがつながれた!
(忍秦)先達!
のろしが伝達されれば軍船が出動する。
信号阻止に失敗した賊たちは太刀打ちできないと思ったのかいちもくさんに逃げていった。
彼らがつなげたのろしは海上の海賊船からも確認できたのだろう。
海賊たちは商船の襲撃を断念し逃亡した。
彼らの活躍により海上での大規模な戦闘は免れた。
3日後5隻の新羅商船が無事鴻臚館に到着した。
大宰府でのもてなしを受け数々の取り引きを成し遂げたという。
そして同じ日誤報の罪で刑に服していた広国と雄友の2人はその通達の正しさが認められ無罪放免となった

そして数日後そこには志古夫と忍秦2人の元気な姿があった
現場に復帰する彼らの姿を見届け今回の取材を終える事にした
それでは皆さん私はこれで失礼します。
皆さんもお体大事に頑張って下さい。
それでは。
どんな困難にもめげず与えられた任務を命懸けで守った烽子たち。
歴史の中で名もなき彼らに光が当たる事はない。
だがその姿が私の心に焼き付いたのは事実である
え〜以上コードナンバー153252アウトします。
2015/12/02(水) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「のろしを上げよ!」[字]

「タイムスクープハンター」のアンコール放送。平安時代にワープした時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は緊急信号を伝えた「のろしの番人」に密着取材をする。

詳細情報
番組内容
時空ジャーナリスト・沢嶋雄一(要潤)は、9世紀の平安時代にタイムワープする。取材対象は烽火(ほうか)の番人。九州北部の沖合にある対馬で交易船や敵船の動きを見張り、のろしを上げて緊急かつ大切な情報をリレー形式で伝えるのが役目だ。ある日、番人たちは海賊船を発見する。だが、海賊船であることの信号を伝えられない。果たして「のろしの番人」たちは危機を脱することができるのか?
出演者
【出演】要潤,杏

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他

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