【フランクフルト=加藤貴行】排ガス試験の不正問題で揺れる独フォルクスワーゲン(VW)が、銀行団との間で総額200億ユーロ(約2兆6千億円)のつなぎ融資を受けることで合意したことが2日、明らかになった。ロイター通信が報じた。VWは来年1月から不正対象車のリコール(回収・無償修理)を各地で始める方針。巨額の費用増に備え、資金繰りの不安を軽くする。
ロイターが複数の関係者の話として伝えた。13行がそれぞれ15億ユーロ、もしくは25億ユーロを融資するとしている。4日に各行の割り当てを決める可能性があるという。
9月に発覚したディーゼル車の窒素酸化物(NOx)排出量の不正は全世界で1100万台にのぼり、VWは2015年7~9月期にリコール費用などの引当金として67億ユーロを計上。また11月初めに公表した二酸化炭素(CO2)の不正では、まず20億ユーロを引き当てることを表明している。
VWの関連費用には、各国当局の制裁金や訴訟費用が加わり、全体が見通せないのが現状だ。最終的には300億~400億ユーロに膨らむとの試算もある。
VWの株主資本は9月末で936億ユーロあり、財務体質がすぐに悪化する懸念は少ない。ただ一斉にリコールが始まるとキャッシュフローが悪化する可能性が高く、つなぎ融資で対応する。VWは16年の自動車部門の投資計画を従来予想から10億ユーロ圧縮するなど、支出の抑制も決めている。
VWは当座の資金を手当てした格好だが、不安要素は残る。大手格付け会社が10月以降、VWの格下げに動いているためだ。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1日、10月に次いで1段階引き下げ「トリプルBプラス」にした。投資適格とされる中で下から3番目にあたる。VWの長期資金の調達コストが上昇する恐れがある。
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