山里に漂う冬の気配。
京都・大原の空気は冷たい。
たわわに実った柿はこれからの季節の保存食に。
羽を膨らませたシラサギが間もなく降り出す雪を思わせる。
築100年の古民家も冬支度。
すっかりまきストーブが欠かせない季節になった。
秋の花はもう終わり。
ベニシアさん今日はハーブの手入れをする。
まずは伸び切ったベイリーフの剪定。
(ベニシア)このベイリーフ私が挿し木から作って…あんまり大きくなったら困るから…。
毎年剪定してちょうど今クリスマス前ですから日が一番小さな時やっぱり世界中に太陽の祭りあったのね大昔。
サートゥルナーリアというんですけど…ローマの場合はね。
国によって名前がいろいろ変わるのね。
日本は冬至でイギリスはユール。
昼間が一年で最も短くなる冬至は世界中で太陽に感謝し翌年の豊作を願う時期。
ベニシアさんも来年の庭に思いをはせる。
これ日本のよく正月に咲く飾りのセンリョウ。
日本の冬を彩る赤い実のセンリョウ。
ああ〜立派やねこれ。
冬の花みたいな感じでみんなそれ飾ってたと思う。
暗い時間が長くなる冬。
常緑樹の葉はさまざまな国で魔よけの植物とされてきた。
目的みんな一緒やね。
それがまた不思議。
人間の考えはどこの国住んでもどの宗教持っててももっと昔の話になると同じ事やってたのね。
すごい不思議。
自然に対する畏敬の念。
それは時代や地域を超えて人間に共通するもの。
う〜んまだつぼみのローズマリー…。
何かかわいいね。
ローズマリー。
剪定したハーブで伝統の魔よけ飾りスワッグを作る。
水を含ませワイヤーでくるんだスポンジに全体のバランスを見ながらハーブを挿していく。
あの〜魔よけはローマの時代の人のドアの上にハーブ。
ハーブと例えばベイリーフとローズマリーを飾ったのね。
私ヒイラギも入れてる理由はイギリスの場合は魔よけのものはヒイラギ。
日本と同じ節分のヒイラギ。
ベイリーフヒイラギローズマリー。
いろいろな魔よけのハーブを織り交ぜたスワッグ。
来年もよい年でありますように。
願いを込めて一本一本挿していく。
松ぼっくりはベニシア流のアクセント。
はい出来ました。
大丈夫です。
大体これ自分の庭から好きなグリーンと赤のものあったらすぐ作れるよね。
庭のハーブで作ったスワッグ。
クリスマスから新年へ古民家の年末年始を彩る。
おいしい冬野菜をたくさん入れた簡単…私の好きな野菜のロースト野菜というレシピをしようと思ってますけど簡単に出来るからだから疲れて何したらいいかなと思った時焼くだけですから。
でもいつも野菜を使う前に一応私酢の水に入れてます。
ちょっと…リンスみたいな感じですけど酢…これ白いの酢をちょっと入れて何か酢を入れたら酢は消毒する力あるから安心の野菜を食べたいと思ってるから酢につけます。
1時間ぐらい置いとく。
酢を入れた水に野菜をつけて殺菌する。
ちょっと静原の方隣の村そこで若い夫婦がやってるカフェーがあるのね。
そこで食べたのね最初。
こんなんいいアイデアやな〜と思ってそれをちょっとまねして作ってます。
友人のカフェーで食べた料理。
野菜が好きなベニシアさんの大好物になった。
オーブンで焼きますから耐熱皿に入れます。
最初硬い物からやりますからサツマイモ。
野菜は大きめ。
素材の味をしっかりと堪能できるように。
何かいろんな色を入れたら…カラフルのものにできます。
タマネギはね皮のまま。
あの〜焼く。
それもおいしい。
すごく甘い。
甘い味がタマネギローストする…。
タマネギも皮まで全部。
余す事なく栄養がとれる。
そしたらあとはオリーブオイルをこう…。
塩こしょう。
ローズマリー食べたらすごいパワーが出るからパワーアップのハーブですローズマリーは。
オーブン料理には欠かせないローズマリー。
疲れた時に元気が出るハーブ。
最初焼く時ちょっとだけホイルを15分ぐらい入れたらもう下の方は結構焼けてますから。
200℃ぐらい…。
一回これ出して…。
ホイルを外しオーブンから一度出して野菜を裏返す。
既に香ばしい香りが広がっている。
匂いがすごい。
おいしそうな匂い。
もう一度オーブンにかけてじっくりと焼く。
皮や種まで素材の味を楽しめる一品。
京都市北区。
上賀茂神社の近くに住む友人を訪ねる。
この日を楽しみにおめかししてきたベニシアさん。
お邪魔しま〜す。
(ハルト)どうぞ〜。
ああ〜。
ハ〜イベニシア。
見つかるかなとちょっと心配してた。
この辺は難しいですね道。
南アフリカ出身の友人ハルトさんが出迎えてくれた。
本格的な冬が来る前に遊びに来てほしいと誘われていた。
平安時代に戻ったと思った。
どのぐらい古いの?大正終わり…。
大正。
縁側の作り方で分かりますね。
分かる。
こういう木材の節の合わせ方。
能舞台をやった人がここに…。
ここ。
それ大正で造ったの。
そうか。
すごいだけど古く見えるのね。
数寄屋造りの家と洗練された日本庭園。
16年前に初めて日本を訪れたハルトさん。
日本庭園に憧れこの家に住み始めた。
300年の歴史を持つ五葉松や庭石。
覆うように広がるコケ。
毎年少しずつ自分の手で作り上げてきた。
家の中も自分の手で修復したというハルトさん。
床の間の金ぱくや壁の色も工夫して手入れをしてきた。
紅茶を沸かして紅茶で塗った。
うそ〜!すごい何か面白い。
柿渋とかワインと紅茶全部タンニンがたっぷりでしょう?その渋いえぐい感じで物の保存ができる。
色も出て。
紅茶だけにした?これは紅茶だけです。
味がすごく出るわ。
香りもいい。
まだ…。
紅茶の香り…。
まだ少しあります。
ええ〜?この上はもっと激しい染みを作ってみたいなと思ったので赤ワインと紅茶を。
古い家に新しく手を加えながらもっと古いよさを演出する。
それがハルトさん流。
柿渋の次でしょう?私柿渋でやってるんだけど。
柿渋でやったらこういう色が出ます。
じゃあ柿渋と紅茶。
はい。
そのあとにちょっと炭。
黒くしたい。
ええ〜。
いつでも少しずつどこかを触ってるんですね。
みんなは「とても手入れがいっぱい」と言うんですけど古い家はある意味ですごい住みやすいんじゃないかと思う。
でもこんなすごい毎日この庭を見えるのすごいいい場所を見つけたと思う。
そうですね自分の育ちも必ず庭の所で遊びがいっぱいできるから。
日本の伝統美に心引かれているハルトさん。
現在京都の大学で准教授として視覚認知科学を教えている。
見るもの全てが研究対象。
人はどのように世界を見ているのか。
デザイン形色など美しいと感じる仕組みを研究している。
芸術家とか庭師は昔から人が感動するために視覚のデザインをする。
普遍的に人が見て感動するためだったらその人の認知の何かを理解できないとうまく作れないと思います。
誰もが美しいと感じる事にはどういった法則があるのか。
さまざまな実験を通し研究するハルトさん。
色を無くしたり文字の形を変えたりする事で人はどの部分で好き嫌いを判断するのか推測してみる。
よい悪いとか好き嫌いとかそういう言葉を単純にこれに当てはめてやるのはすごく答えが出なくて難しいなと思ってて。
「この作品はなぜ視覚的にバランスがいいですか?」とかそれを解析方法で話ができたら美学的の裏を少しずつ科学にもできる。
見るだけじゃなくて自分はどうやって見るを考える。
枯れ山水と呼ばれる龍安寺の庭。
樹木を使わず砂と石だけで山や川などの自然が象徴的に表現されている。
ハルトさんはこの庭に置かれた石の場所や数その大きさに見る人に美しいと思わせる法則がある事を見つけた。
この研究は世界中に大きな反響を呼んだという。
明確な答えを出しにくい研究。
けれども美しいものを見る力を養う一歩になるとハルトさんは考えている。
南アフリカの自然の中で育ったハルトさん。
高校生の時生物の授業で出会ったコケに興味を持ち始めた。
日本のコケ庭を初めて見た時の事を覚えている。
初めて見たのは雑誌で偶然高校生の時。
初めて日本の庭園を見てコケ庭。
それを見てすごいびっくりした。
コケと石ですごくきれいな庭で。
以来コケに夢中。
24歳で来日してから理想の庭を探し求めたハルトさん。
5年前この家を見つけ今まさに自分だけのコケ庭を造っている途中だという。
少しマンジュウゴケ。
これはコケですはい。
きれいだな〜。
今日は友人の山からもらってきた天然のコケを植える。
とてもきれいな丈夫なコケ。
これは全部割と育ちやすいコケです。
比べるとシッポゴケとマンジュウゴケの形の差がありますね。
色はシッポゴケの方は黄色っぽいかもしれない。
毛が長い。
これ見たらヒノキゴケで少し猫のしっぽみたいな感じがします。
これは水大好きなものだから日に当たられたらちょっと元気じゃない。
毎日手入れを欠かさない自慢のコケ庭。
コケについて語っている時は少年のようなハルトさん。
あまりにも美しいと思っている事に自分でも驚く。
ものすごくきれい。
信じられないほどに。
きれいにこの表面につける。
こうするとちょっとペチャンコになったら水分をもっとちゃんと保つ。
5年かけて造り上げてきた自分の庭。
コケの手入れも年々上達してきた。
昔はここの掃除をした時はすごいコケが傷んだ。
それでギブアップしてしばらくしなかった。
それからまたやったら少しずつ自然にやり方は覚えてきて。
とりあえずこのほうきのあと分かりますね。
葉っぱが残らない。
一見地味なコケという植物にここまで引かれる自分。
そこが原点となってハルトさんの研究は始まった。
コケはやっぱり原始的なものですのでほとんど肥料もないところに生えてくるんです。
自然にあるのはいつでもいくつかの種類の組み合わせ。
お互いの土と空気とか全部それぞれは少し違う役割がある。
お互いを守りながら何かいい環境が作れる。
それは一つの魅力なところです。
自分もそのように存在できたらいいなと思う。
夜の庭も楽しんでほしいとハルトさんが夕食を用意してくれた。
料理も純和食…ではなく南アフリカの伝統料理。
(ハルト)南アフリカの伝統料理です。
半分プリン半分カレー半分フルーツケーキ。
何て言えばいいですかね。
カレーかな。
理想の家を探していた時に出会った妻の亜衣さん。
今ではハルトさんの一番の理解者。
5年前に2人には娘の野良ちゃんも生まれた。
日本を代表する女流画家秋野不矩さんを祖母に持ち自身も日本画家である亜衣さん。
ハルトさんは自分の視野を広げてくれた存在だという。
日本画家と視覚認知の研究者。
2人は目に映るもの全てに美を見つけたいという同じ思いで結ばれている。
(野良)ほらリンゴの葉っぱって書いてある。
もうすぐ5歳になる娘の野良ちゃんもベニシアさんを歓迎してくれた。
(一同)ホソンテ。
ホソンテ。
南アフリカ式で乾杯。
おいしい。
クスクスおいしい。
久しぶりに食べた。
本当?味付けクスクスなのこれは。
ねえねえこれはねこれはレモンの葉っぱ…。
レモンの葉っぱにプリンが入ってた?
(ハルト)香りがいい。
もう何か最高やねこういう所で御飯食べるのは。
だから時々何か…自分は庭を造ったんじゃなくて庭は私を教えてるっていうところがあるのね何か…。
(ハルト)それはここでもよく分かりますよ。
ある意味は自然は教えるんです。
たくさんのいろんなものと一緒に環境をつくっているのでそれぞれの細かい役割でかなり複雑な生が作れる。
庭が教えてくれる自然の美。
美しいと感じる自分の気持ちに意識を向けた時もう一つ先にある新しい世界が広がっていく。
日暮れ前ミシンに向かうベニシアさん。
冬用のクッションカバーを作っていた。
暖かいクッションカバーにしようかなと思って作ってる。
いつも大体御飯はまきストーブの前でちゃぶ台で食べるからそこの小さい座布団。
庭を見ながらの針仕事。
ミシンを踏む足も軽やかになる。
暖炉の炎が暖かく燃える。
家族を待つ時間もまた楽しい。
2015/12/02(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「庭の美しさ」[字][再]
冬が近づく京都・大原。ベニシアさん、伝統の魔除け・スワッグ作り。ローズマリーを収穫し、ローストベジタブルを作る。上賀茂の古民家に暮らす友人のハルトさんを訪ねる。
詳細情報
番組内容
冬の足音が近づく京都の大原。ベニシアさんはクリスマスに備え、イギリス伝統の魔よけ「スワッグ」を作る。冬野菜をたっぷり使ったローストベジタブルを作り、上賀茂の古民家に暮らす南アフリカの友人ハルト・バン・トンダさんを訪問。ハルトさん一家と庭を眺めながら、南アフリカ料理をごちそうに。自分の理想の庭を目指して庭造りに励むハルトさんに共感。まきストーブの周りに置く冬用クッションのカバーをミシンで縫っている。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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