〜
(紗江)やめてやめて…。
キャーッ!
薫:ここ石和温泉郷は山梨県笛吹市にある山梨県最大の温泉地です。
その恵まれた自然のなかでは桃やブドウなどの果実が育ち特に名産のワインは多くのワイン通の舌をうならせています。
そして石和温泉駅前には県内一の生産量を誇るバラが咲きこの地を訪れる多くの観光客の目を楽しませてくれています。
そんな石和温泉郷のなかにあるのがこのホテルふじ
私星野薫はここの若女将なのですが…
ヤバいまた怒られちゃう。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
本日も全国からたくさんのお客様がお見えになります。
皆様にご満足していただけるように明るく元気に笑顔を絶やさず一日頑張っていきましょう。
(一同)はい!はい。
それじゃ静代さんお願いね。
(静代)はい。
それではスケジュールについてですがまず午前11時に日帰りのランチツアーのお客様がお見えになり午後には社員旅行の団体様がいらっしゃいます。
そのあと東京からテレビ局の取材の方がいらっしゃいますのでくれぐれも粗相のないようにお願いいたします。
薫さん。
はい。
また朝寝坊?あいえあの…。
アハハハッ。
まぁホントにあなたって人はいつになったら女将らしくなれるのかしらね。
申し訳ございません。
ゆくゆくはあなたが女将となってこのホテルふじを盛り立てていかなきゃいけないんですからね。
これからは少し自覚を持ってやってちょうだいね。
わかったわね?はい。
はいそれじゃ皆さん本日もどうぞよろしくお願いいたします。
(一同)よろしくお願いします。
ようこそホテルふじへどうも。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
ようこそホテルふじへ。
いらっしゃいませ。
女将!ごぶさたしてます。
ようこそお越しくださいました。
託摩様。
お元気でいらっしゃいましたか?おかげさまで。
やっと伺えました。
お元気そうでなによりです。
女将のほうこそお変わりなく。
若女将の薫です。
よろしくお願いいたします。
若女将の。
お世話になります。
託摩様精一杯おもてなしいたしますのでごゆっくりしてらしてくださいね。
あなた。
申し訳ありません。
さぁお部屋のほうご案内いたしますので。
すみません。
さぁどうぞこちらです。
お持ちいたします。
どうぞ。
どうぞ。
静代さんさっきいらしたお客様どういう方なんですか?女将ずいぶん嬉しそうにされてましたけど。
託摩様ですね。
25年前に新婚旅行でうちをご利用いただいたんですけど今日は銀婚式のお祝いに。
へぇ〜銀婚式。
女将託摩様の奥様とはずっとお手紙のやり取りをしてるそうなんですけどお会いになるのはそれ以来らしくって。
じゃあ25年ぶりに。
だからあんなにも嬉しそうに。
(莉緒)若女将いらっしゃいました!
(有美)篠原智美さんです!えっホント!ちょっと若女将もう少しお静かに!篠原智美さんいつも見てます。
頑張ってください。
ありがとう。
私もお願いします。
はい。
ありがとうございます。
握手お願いしてもいいですか?どうも撮影でお世話になります。
どうもようこそお越しくださいました。
事務所の社長の北岡と申します。
あのお荷物お持ちいたします。
結構です。
番組のスタッフは?先に到着されて中で準備をしていらっしゃいます。
そうですか。
じゃあ行こうか。
はい。
ではこちらです。
ご案内いたします。
すみません。
どうぞごゆっくり。
あの撮影まだでしょうか?
(北岡)すみませんね若女将。
もう少しですからお待ちください。
わかりました。
ハァー。
ちゃんとやってよ!はい。
お風呂の温度とか大丈夫なの?大丈夫です。
あのすみません時間もありませんしなんとかそろそろお願いします。
わかったわよ何度もうるさいわね。
ありがとうございます。
お待たせしました。
本番まいります!よかった。
5秒前432…。
温泉の効能は…。
ちょっと待って鏡貸して。
はい。
あ〜いやだ。
ねぇここ直して。
えっ!智美さん待ってください。
若女将すみません。
もう少しだけお待ちください。
智美さん!えっ!もう限界…。
大変なんですね撮影って。
皆さんにはご迷惑ばかりでホントに申し訳ありません。
いえ私どもは別に。
女将さん新しいワインお願いできるかしら。
赤ワインでよろしいんですか?ううん白をお願い。
かしこまりました。
ではただ今ご用意いたします。
ごゆっくり。
ありがとう。
いかがですかお味のほうは。
さわやかな酸味があって飲み口もすっきりしてて上品ね。
智美はワインにはうるさいんですよ。
私なんか何飲んでもね一緒に思えちゃうんですけどね。
そうでしたか。
では本日は山梨のワインを存分にご堪能ください。
今日も飲んだくれる?いっちゃおういっちゃおう。
おはよう。
おはようございますコンパニオンです。
錦の間の宴会ね。
はいわかりましたいってきます。
あら新しい方?
(亜矢)はい。
そうよろしくね。
涼んでいこうか。
そうですね。
いかがでしたか?お湯は。
とってもいいお湯ですっかり疲れがとれました。
それはよかったです。
お食事もおいしかったしホントに来てよかったわ。
ありがとうございます。
今ね25年前のことを思い出してたの。
たしか新婚旅行で来られたとか。
あの頃は女将も私も若かったわ。
女将はねホテルの中を走り回ってたわ。
えっあの女将がですか?当時は女将になったばっかりの頃でねいろいろと大変だったみたい。
きっとご苦労もたくさんあったと思うの。
でも一生懸命やっていらしたからその苦労が実を結んだのね。
だからこんなにもステキなホテルを。
おい行くぞ。
あっはい。
それじゃあ。
どうぞごゆっくり。
おやすみなさい。
はぁ〜。
やめてよ。
(田上)おい待てよ。
いいかげんにしてよ!智美さん?今日いらした託摩さん愛想がないっていうかあれじゃ洋子さん大変だろうな。
(浩介)そうなんだ。
私は無理だなああいう旦那さん。
あら私にはいいご夫婦に見えるわよ。
そうですか?でもその点浩ちゃんは優しいわよね。
こうやってご飯作って待っててくれるんだから。
俺の場合はさ薫とおふくろに食わせてもらってるようなもんだから。
ねぇねぇ次の文学賞なんとかなりそう?今度は絶対大丈夫任せといて!まぁそう言って何年経つんだか。
浩介あなた約束忘れてないでしょうね?もちろん。
1年以内に受賞しなければきっぱりと諦めてホテルの仕事に専念する。
アハハッあなた10年前も同じようなこと言ってたじゃないの。
えっそうだっけ?もうそろそろ潮時なんじゃないの?そんな…。
大丈夫自信持って!浩ちゃんは才能があるんだから。
薫!いただきます。
召し上がれ。
もういただいてますよ。
失礼しました。
だって浩ちゃんが売れてくれないと私ずっとここで若女将やらなくちゃいけないでしょ。
おい薫…。
ちゃんと聞こえてますよ。
あなた女将がイヤなの?だって私女将やるなんてひと言も聞かされてなかったんですよ。
それなのにいつの間にか…。
まぁ情けないその言葉。
先代もきっと嘆いてらっしゃるわ。
理由はともあれ一度若女将をやるって決めたからにはちゃんと勤め上げるのが筋ってもんでしょ?そうは言いますけど…。
あっそうですか。
それだったらもうできないっていうんだったらここ出てってもらいます。
もちろん浩介とも別れてもらいます。
おふくろ!当然でしょう!あなたこの星野家に嫁ぐっていうことはこのホテルふじの女将になるっていうことなんですから。
お言葉ですけど私はホテルふじに嫁いだんじゃありません。
星野浩介さんに嫁いだんです。
誤解しないでください。
誤解してるのはあなたのほうですよ!いいえお母さんのほうです!もうやめよう。
2人ともやめてね?ほらお二人が大好きな若アユ焼いてみました。
どうぞ召し上がれ!浩ちゃん!浩介!はい…。
あなたあなたはどう思ってるの?はっきり答えてよ。
いや急にそんなこと言われても…。
あぁもう情けない!おふくろアユは?とっといて。
ごめんね。
あぁ〜!〜もうまた始まったね。
ストレス解消だかなんだか知らないけど。
これが始まるとさうるさくて寝られないんだよね。
ごめんね。
フンッ!〜
(有美)はぁ〜卵って重いね。
私オムレツ3つ食べちゃおうかな。
それ食べすぎですよ。
え〜食べすぎ?ハハハッ!あれ?
(悲鳴)
(長沢)あぁどうも。
ご足労おかけして申し訳ありません。
うちの仲居が第一発見者だとか?はい。
しかも被害者はホテルふじの宿泊客だというもんですから。
念のため若女将に確認していただこうと思いまして。
こちらです。
確かにうちのお客様です。
そうですか。
ありがとうございました。
あの…殺人なんですか?詳しいことはよく調べてみないとわかりません。
(真下)長沢さん!おう。
被害者の身元がわかりました。
田上伸二という探偵で住所は東京です。
ちょっと。
探偵となると…。
ただの観光客じゃないかもしれませんね。
身辺あたってみます。
被害者が調査中だった仕事の中に手がかりがあるかもしれませんから。
頼む。
俺は近所の聞き込みからあたってみる。
わかりました。
どうかしましたか?あっいや別に…。
長沢さん!おう。
いいかげんにしてよ!
(智美)ここ昇仙峡は日本一の渓谷美を誇り入り口の天神森から上流の仙娥滝までが最も美しいといわれています。
はいオッケー!いやもう最高です!!じゃあ次行こう。
行きますよ!よかったよ。
(智美)はい。
渓谷の中ほどにある石門は岩と岩に支えられて巨大なアーチをつくっています。
しかしこちらに回ってみますと…。
実は2枚の巨大な花崗岩の先端が少し離れているんです。
ちょっと怖い気もしますが。
(智美)自然って不思議ですね。
どうした?あ…あの!向こうにロープウェーがあるからあっちに行きましょ!ねっ?
(智美)ここ武田神社はあの戦国武将武田信玄を祭神とする神社で勝負ごとに強い神社として信仰を集めています。
智美さんお疲れさまです。
ホテルふじ特製のお弁当です。
ありがとういただくわ。
智美さん今朝の事件ご存じですよね?事件?あぁ男の人が殺されたっていう?智美さん昨日の夜あの殺された男の人とお話しされていませんでしたか?えっ?何かもめてるような感じでしたけど。
絡まれてたのよあの男に。
絡まれてた?私のファンだから一緒に飲まないかって。
こういう仕事をしてると多いのよそういう人が。
そうなんですか。
それがどうかしたの?いえどうもすみません。
どうぞお召し上がりください。
(真下)鑑識の結果が出ました。
死亡推定時刻は昨夜の22時から24時の間。
死因は鋭利な刃物で胸部を刺されたことによる失血死だそうです。
被害者がなんのために石和に来たのかわかったのか?いえはっきりとしたことはまだ。
ただ被害者の身辺を詳しく調べたところ少し気になることが。
気になること?えぇ。
おい。
行くぞ。
えっ!?智美さんにサインを?そう!この映画彼女のデビュー作なんだけどここにしてもらっちゃったんだ。
浩ちゃん彼女のファンなの?えっ?だってきれいじゃん!ふ〜ん…きれいな人にはねトゲがあるのよ!あ…ねぇねぇ!映画のタイトル秘密のバラっていうの!)そう公園のバラの前で出会った男女のラブストーリーなんだけどさこれが泣けるんだよね。
ねぇねぇこれってただの偶然だよね?何が?バラよ!今朝の事件でもバラが。
そんなもん偶然に決まってるでしょ。
うん…だよね。
そっか。
けどさ事件っていえばその映画もある事件で話題になったんだよね。
どういうこと?この映画の主役最初は彼女の他にもう一人候補がいたんだけど殺されちゃったんだよ。
えっ!?殺された?住んでたマンションの屋上から突き落とされてさ。
それで主役は彼女になったんだけどさ。
一部の週刊誌が実は犯人は篠原智美だったんじゃないかって騒ぎ出したんだよ。
どういうこと?決まってるじゃん。
ライバルが死んでいちばん得をしたのは彼女だったからだよ。
篠原智美ですでもまぁ結局犯人は他にいて捕まったんだけどね。
そうなんだ。
女将さん!お仕事中失礼いたします。
あら長沢さん!何かわかった?いやそれ今捜査中なんですが今日は篠原智美さんにちょっとお話が。
智美さんならお部屋にいらっしゃると思いますけど。
ちょっと呼んでもらえますか?何か事件と関係があるんですか?捜査に関することはお話しできませんので。
そりゃそうかもしれませんけど殺されたのはうちのお客様なんですよ!ねぇ?女将!えぇ。
他のお客様にも不安が広がってるし皆様に安心してお泊まりいただくためにも私たちは最低限のことを知っておく必要があるんです。
そう言われましても…。
(莉緒)ま〜君!どうしたの?莉緒ちゃん!お仕事?うんそうお仕事!そうなんだ。
今朝の事件のこと?ねぇそれなんだけど長沢さん私たちには教えてくれないのよ。
どうして?ま〜君教えてよ!いやそれだけは…。
ねっ!ひどいでしょ?私たちに秘密にしてるのよ。
ひどい!ねぇま〜君私たちが結婚できたのは誰のおかげ?それは女将さんが2人の間をとりもってくれたおかげ!でしょ?だったらどうして秘密にするの?私そんなま〜君嫌い!私も嫌い!私も嫌い!あぁ…わかりましたよ。
じゃあ少しお教えしますけどあの…他言はくれぐれも無用ですからね。
もちろんです!殺された田上さん元刑事だったんですか!?あぁ探偵になる前は警視庁にいたそうなんだ。
それで智美さんとはどんな関係が?8年前田上さんはある事件を担当してたんですが篠原智美さんはそのときの関係者だったんです。
それってもしかして秘密のバラって1G2hに4XO”した;v7oじゃないですか!)あれ!よく知ってるな。
智美さんが容疑者として疑われたんですよね?はいしかし結局はアリバイがあったために彼女の容疑は晴れたわけなんですが。
だから殺害された田上さんとは顔見知りになるわけだからこうやって話を聞きに…。
だったらどうして…。
どうかしたの?実は智美さん田上さんのことを…。
私のファンだから一緒に飲まないかって。
こういう仕事をしてると多いのよそういう人が確かにおかしいわね。
自分を容疑者扱いした刑事のこと忘れるとは思えないし…。
えぇ…。
(北岡)お待たせいたしました。
あの…智美に何か?はぁ…。
ご存じですよね?この男性のこと。
えぇ8年前に何度か。
たしかその頃は刑事だった。
しかしあなたはこの方のことをファンの男性だとおっしゃったそうですね。
おかしな詮索をされたくなかったんです。
8年前のことは私にとってはいい思い出じゃありませんからね。
では昨夜この方とどんなお話を?いえ…別に。
8年ぶりにこんなところで会うなんて奇遇ですねって。
じゃあこっちで会ったのは偶然だと?えぇ。
では昨夜この方何かおっしゃってませんでしたか?例えば誰かに会うとか…。
いいえ言ってませんでした。
あの…もういいですか?私まだ打ち合わせとか残ってるんで。
わかりました。
今日のところは結構です。
また何かありましたらお話をうかがうことになると思いますが。
おかしいわね。
何がですか?智美さん田上さんが刑事だったって言ったの。
たしかその頃は刑事だった8年ぶりに会ったっていうのにどうして田上さんが刑事を辞めたって知ってるのかしらねぇ。
あぁそういえば…確かに変ですよね。
いかがでした?昇仙峡のほうは。
もうホントにすばらしくって気持もよかったですし。
よかったそうでしたか。
でもこうやってまた2人で旅行ができるなんて本当によかったです。
ねっあなた。
お食事のご用意ができました。
さぁじゃあどうぞ。
どうぞ。
いただきましょう。
うわ〜おいしそうなお料理。
どうぞ。
実は女将さんこの人前に大きな病気したんですよ。
ご病気を?ええずいぶん長いこと入院もして。
そうですか…。
大変でしたねぇ。
いちばん大変だったのはコイツです。
あなた…。
入院中はうちのガラス工場を閉めること多かったんでコイツが外に働きに出てくれて。
治療費だって全部コイツが…。
あなたもうやめましょう。
もう昔のことじゃないの。
じゃあ乾杯しましょう。
乾杯。
この白ワインいただくわ。
はいありがとうございます。
お待ちください。
おっ!あれ何とかっていう女優じゃねえかよ。
一緒に飲みに行こうぜ。
そんなこと言ったらダメでしょ。
ほら早く宴会場に戻りましょう。
ワインですか?ええ。
おもしろいものがあったから。
じゃあちょうどよかったです。
これホテルふじからの記念品です。
記念品?ワイングラスのセットです。
ありがとう使わせていただくわ。
智美さん今度はぜひお仕事抜きでいらしてくださいね。
ええ若女将そのときは一緒にワインを飲みましょうね。
ええ。
(北岡)じゃあ行こうか。
(鼻歌)ん?ん?
(幸男)何とか言ったらどうだ?
(洋子)知らない。
私は何も知らない。
(幸男)知らないわけないだろ!現にこうして…。
お二人ともどうなさったんですか?女将…。
行くぞ。
ごめんなさい。
何でもありませんから。
でも…。
早くしろ!若女将!ん?智美さんが泊まっていたお部屋にこれが落ちてたんですけど。
バラの花びら?ええ。
どうしてこんなものが?あの事件現場にもバラがあったけど何か関係があるのかしら?撮影でどこかバラのあるところに行ったんじゃないですか?撮影で?それかファンの方から花束をプレゼントされたとか。
そうなのかなぁ。
はいはいはいお仕事お仕事!
(莉緒/有美)は〜い。
(静代)若女将お仕事!あっはい。
殺された田上さんの遺体の上にはバラがありその田上さんと智美さんは8年前の事件で繋がっている。
そして8年前の映画のタイトルにもバラがつき智美さんがいた部屋からもバラの花びらが…。
これって偶然?ううんじゃないよねきっと。
(北岡)若女将!あっ北岡さん!急に智美に会いたいだなんて電話してきてどうしたんですか?私すっかり智美さんのファンになってしまって。
それで撮影見学でもできたらいいなって思って。
そうでしたか。
はい。
あっ智美さん!ねぇ彼女にお願いしたらどうかしら?あぁそうだね。
お願いしてみようか。
若女将ちょっとこちらに。
実はねうちの女優が病気になっちゃいましてね。
なかなか代役が見つからなくて困ってるんですよ。
そうなんですか。
そんなわけで若女将代役やってもらえませんか?私が!?いやムリですよそんなの!!大丈夫ですよ。
若女将だったらできますって。
いやでも…。
お願いします!このとおりですから。
え…いや…。
女優!?何言ってんだお前!私スカウトされたの。
やっと女将から抜け出せるのよ。
何わけのわかんないこと言ってんだよ!それよりさ早く戻って来いって!今はまだバレてないけど俺だっていつまでごまかしきれるかわかんないんだからさ。
うわっ!ねぇ薫さんずいぶんと買い物長くない?そうかな?どうしたの浩ちゃん。
聞いてるの?聞いてるよ。
だから早く帰って来いって!それ薫さんなの?いや違う違う違う!ただのね間違い電話。
間違い電話?何言ってるの。
あっもうそろそろ時間だから行くね。
おいちょっと!本当にそれ薫さんじゃないの?違うよ!あっそうだ俺薫捜してくるわ。
それじゃあね。
この瞬間から私の新しい人生が始まるのね!よし!よ〜いスタート!あぁ…あ〜…!カット!はいもう1回。
あ〜!あ〜!あ〜…!カットカット!何やってんだへっぴり腰で!もっと腰を入れて!はいもう1回いくぞ。
はい。
やっぱり私はホテルからは抜け出せないのね。
はぁ…。
もたもたすんな!はい!わぁなんだかすみません。
押しかけちゃったみたいで。
わざわざ石和から来てくれたんでしょ。
それにエキストラまでさせちゃったしお礼しないとね。
どうぞ。
ありがとうございます。
わぁ〜!それにおいしいワインもあるんでしょ。
智美さんに飲んでいただきたくてとっておきのをお持ちしました。
どうぞ。
ありがとう。
智美さん石和にいらっしゃったときどこかバラのある場所に行かれませんでしたか?バラのある場所?例えばバラ公園とか。
ううん行ってないけど。
じゃあそれじゃあ誰かにバラをプレゼントされたりとかは?ないわ。
それがどうかしたの?別に大した意味はないんですけど…。
あっそういえば田上さんが刑事辞めていたことご存じだったんですか?どういうこと?だって昨日智美さん田上さんのことを刑事だったっておっしゃったから。
言葉のあやよそんなの。
なに?あなたそんなこと聞くためにここまで来たの?いえいえそういうわけじゃ…。
ほらただの世間話ですよやだな〜もう!あぁあっ!私寝ちゃったんだ。
あっ!もうこんな時間!帰らなきゃ!あ〜こんなに飲んじゃって。
智美さん起きてください風邪ひいちゃいますよ!智美さんベッド行きましょうね。
大丈夫ですか?あっ!死んでる!?ヒ素による中毒死?詳しいことは司法解剖の結果を待ってからだけど間違いないと思う。
でもどうしてそんなものが智美さんのグラスの中に?マンションの防犯カメラを確認したところ今夜あそこに出入りしたのは亡くなった篠原智美さんとあなただけなの。
それに窓ガラスは全部閉まってた。
だから外部からの侵入は絶対に不可能。
つまりあの部屋は…。
密室状態だった。
っていうことはいったい犯人はどうやって智美さんのグラスの中にヒ素を入れたのか?それができるのはアンタだけだよ。
え?アンタが篠原智美さんを殺したんだろ!えっ!?私疑われてるんですか?やだ!冗談じゃありません!どうして私が智美さんを殺すんですか?それはこっちのセリフだろ!私じゃありません!じゃあ篠原智美さんっていうのはグラスに自分でヒ素を入れて飲んだ。
つまり自殺したとでも言うのか?自殺?そんなことはありえません!だってそんなそぶり少しもなかったですから。
じゃあアンタしかいないだろ!私が警察に通報したんですよ!犯人ならそんなことするわけないじゃないですか!第一発見者がね犯人というのはよくある話なんだよ。
私はやってません!無実です。
信じてください!
(ノック)
(雫石)嶺岸さんちょっといいですか?はぁああ…。
あの今日のところ1回家に帰ってもらって結構ですから。
え?若女将もう大丈夫ですよ。
長沢さん!どうも。
薫さん!お母さん!あなたいったい何やってたんですか?黙っていなくなったと思えば警察のご厄介になるなんて。
申し訳ありません。
ホテルふじの若女将とあろう者が殺人事件の容疑者だなんて前代未聞ですよ!そんな容疑者だなんて!口答えは許しません!あなた当分外出禁止ですよ。
え?そんな!まあまあ女将さん!それくらいにしてあげてください。
長沢さんあなたもどうして私に知らせてくれなかったの?いや若女将も十分反省してますし。
あら本当にこのたびは申し訳ありませんでした。
いやいやもうお気になさらずに。
それよりちょっと若女将をお借りしてもよろしいですか?若女将を?はい我々も一応昨日の状況を把握しておきたいもんで。
あら…お手柔らかに。
もちろんです。
じゃあ若女将ちょっと。
気をつけてよ。
えっと私が目を覚ますとテーブルの上には智美さんが使っていたワイングラスと私が使っていたワイングラス。
それから2本のワインボトルがありました。
そしてヒ素はこのワイングラスから検出された。
うん。
こっちのワインは若女将が持ってったものなんだよね。
ええ。
智美さんに飲んでいただきたくてとっておきのをお持ちしましたそれにあのワインは私も一緒に飲んでいたのでもしヒ素が入っていたとするなら私も一緒に死んでいるはずなんです。
ですからこっちのワインにヒ素が入っていた可能性はあるんです。
なぜなら私はこっちのワインを飲んでいる最中に寝ちゃったのでこっちのワインは飲んでいないわけですから。
でもこのワインからはヒ素は検出されなかった。
ええ。
となるとあとはこの篠原智美が飲んでたワイングラスにヒ素が塗られていた可能性があるな。
でもあのグラスはワインを飲む前に私が洗ったんです。
ということはやはり篠原智美さんは若女将が寝たあとに1人でこのワインを飲みそして自分でこのワイングラスの中にヒ素を入れたとしか考えられないわけですね。
となるとやはり篠原智美さんは自殺。
いやそんなはずありません。
だって昨日の智美さんにはそんなそぶりは少しも…。
それに8年前の事件の関係者が立て続けに死ぬなんてそんな偶然…。
う〜ん…。
ねぇ長沢さん。
これって連続殺人なんじゃないでしょうか?連続殺人!?ええ。
いやぁ助かりました。
大体のことはわかりましたので。
ご苦労さまでした。
若女将にはあとでまたきつく言っておきますので。
本当にもうお気になさらないでください。
(静代)女将!託摩様の銀婚式のお祝いの品なんですが…。
あら用意してくれたの?目を通していただけますか?あらステキじゃないの。
ねえ。
ええステキです。
じゃあこれでお願いしましょうね。
わかりました。
ちょちょちょっとすみません。
託摩洋子…。
どうかしたんですか?この名前8年前の事件の関係者と同じなんです。
ああ!智美さんに容疑がかかった事件のですか?そうです。
その当時篠原智美さんのアリバイを証言したのが託摩洋子という人物だったんです。
アリバイを?ああ。
そしてその証言がもとで篠原智美さんの容疑は晴れたんだ。
この方こちらのお客様ですか?ええ。
託摩様。
お元気でいらっしゃいましたかもしそれが洋子さんだとしたら智美さんとは顔見知りだったっていうことですよね。
そういうことになるなそれに田上さんとも。
アリバイの証言者なら当然担当刑事にも会っていたはずだ。
女将さん。
やっぱり石和はいいですね。
こうしていると心が洗われます。
あれから25年。
またこうしてここでお会いできるなんて。
女将さんが頑張っていらしたからですよ。
洋子さんのおかげです。
本当にありがとうございました。
いえ私なんか何にも。
でもあっという間ですね25年なんて。
ええ思えばいろんなことがありました。
私も。
ねえ洋子さん。
はい?あの…。
亡くなった田上さんや智美さんとはお知り合いだったの?えっ?8年前の事件のことを聞いたもんだから。
もちろん私にはお知り合いのようには見えなかったけど。
私もびっくりしました。
まさか石和で会うなんて。
私8年前にある喫茶店で働いてたんですけど…。
ありがとうそのときお客さんとして来ていたのが智美さんだったんです。
その日がちょうど事件のあった日らしくあとから話を聞きに来た刑事さんにそのときのことをお話ししたんです。
主人が入院してたので私が働きに出てたときたまたまそんなことが。
託摩さんが病気をしたのも8年前だったわね。
ええ。
そういえばずいぶんと治療費がかかったって聞いたけど…。
1人で大丈夫だったの?たまたま宝くじが当たったので。
宝くじ?300万ほど。
そう。
私そろそろ行かないと。
主人が心配するといけないので。
あっごめんなさいねおしゃべりしちゃって。
それじゃあ。
お母さん少しいいですか?ん?どうしたの?ええちょっと…。
実は例の宝くじのことを長沢さんに調べてもらったんです。
あなた聞いてたの?ええ。
それでお金に困っていたときに宝くじに当たるなんてちょっと気になったものですから。
そしたら…。
8年前の宝くじの高額当選者の中に託摩洋子という人物はいませんでした。
いない?はい。
それで念のため夫の幸男のほうも調べたんですがこちらも該当しませんでしたじゃあ…。
宝くじに当たったっていうのは嘘だった。
あらどうして嘘なんか?それに宝くじに当たってないんだったらどうやって治療費を?洋子さんあるときにまとめて治療費を支払ったらしいんですけどそれが8年前の事件があった日の2週間後らしいんです。
2週間後!?そしてその日は洋子さんが智美さんのアリバイを証言した日でもあるそうなんです。
偶然にしちゃできすぎだよね。
うん。
篠原智美は洋子さんのアリバイ証言がもとで容疑が晴れたんだよね。
ってことはさ…。
もしかしたら洋子さん智美さんのアリバイを証言した見返りにお金をもらってたのかもしれないだから…。
宝くじに当たったなんて嘘をついた。
うん。
もしそれが事実なら8年前の事件の犯人は智美さんだったってことよね。
だろうね。
アリバイが必要なのは犯人だけだから。
あっでもそれが今回の事件と何か関係があるのかしら。
そうだちょっと見てもらいたいもんがあるんだけど。
俺もさ8年前のことがいろいろ気になって調べてみたら気になる記事があってさ。
これなんだけど。
田上さん恐喝で逮捕されてて警察を懲戒免職になってるんだ。
恐喝!?恐喝…。
どうも常習犯っぽいんだよね。
だからさこうは考えられないかな?田上さんは洋子さんがアリバイを偽証していたことを知っていた。
だから…。
あっそのことで洋子さんのことを恐喝していたのかもしれない。
それでそのことで追い詰められた洋子さんが田上さんのことを殺した?その可能性はあるかもね。
お母さん…。
もう浩ちゃん。
少しはお母さんの気持も考えなきゃ。
えっ!?お前もだろ!託摩洋子が?はいホテル周辺の防犯カメラを調べたところ事件当夜に田上さんと話し込んでいるところが映っていましたこれです。
なんかもめてるようだな。
ええ。
それから彼女の夫ですが東京でガラス工場を経営していますよね。
うん。
従業員数人の小さなガラス工場だがそれがどう…。
ああ!くぅ〜!そうなんです。
ガラス工場ならヒ素の入手は可能です。
お母さん。
もう25年になるのね。
大女将が亡くなって私が女将になってから。
はぁ…最初慣れないうちは失敗ばかりでね。
どうしていいかわからなかったわ。
それにその当時はホテルには何億っていう借金があってね。
相談する相手もいないし。
とにかく孤独だった。
そんなときだったの。
ここで洋子さんに会ったのは。
私は自分でもわからないうちにここに来て何もかも投げ出したいと思ったのよ。
そんな私に声をかけてくれたのが洋子さんだった。
そのあともずっとそばにいてくれてね気がついたら私自分のこと話してたの。
借金のこともホテルのことも女将を続けていく自信がなかったことも。
そうしたらね…。
女将さんが私たちを笑顔にしてくれてるんですよ。
私が?ええ!女将さんがいろいろと心配りをしてくれるから私たちは楽しんだり思い出が作れたりするんですありがとうございますって。
私ねそのとき思ったのよ。
どうやったら借金が返せるかとかどうやったら女将らしくできるかとか考えるんじゃなくてどうしたらお客様に喜んでいただけるかどうしたら笑顔になっていただけるかって考えようって。
そう思ったらね肩の力が抜けてねフフ…もう一度頑張れたの。
あなたたちの言うように確かに8年前に洋子さんは大きな過ちを犯したのかもしれない。
それが原因で今度の事件になったのかもしれない。
でもね私は洋子さんを信じたい。
あんな優しい言葉かけてくれた人が人殺しをするなんてどうしても思えないの。
それにもしかしたら洋子さん自分の犯した過ちに苦しんでるのかもしれない。
だったら今度は私が支えてあげなきゃ。
それが今の私にできることだと思うの。
お母さん。
お疲れさまです。
お疲れさまです。
ねぇさっきの話なんだけどさ8年前の事件の犯人が篠原智美だったとするでしょ。
じゃあ捕まった人は冤罪だったってことだよね?うん。
だったらさその人が田上さんを殺したんじゃないのかな?えっ!?だって無実なのに殺人犯にされたんだよ。
自分を捕まえた田上さんを恨んで当然だろ?いやまあね。
でネットで調べたらこれがその柏木亜矢って人だった。
あっこの人…。
あのときの人に似てるけどまさか刑期を終えてこっちに来たってこと?ちょっとどこ行くんだよ!?あの人に会って直接本人かどうか確認してくる。
やめとけって。
そんなことしてもおふくろにまた怒鳴られるだけだって。
警察に任せようなっ?そうだけど私どうしても気になるのよ。
だってあの日私が居眠りさえしなければ智美さんは死なずに済んだかもしれない。
そう思うと申し訳ないっていうか悔しいっていうか。
だから真実を突き止めたいの。
大丈夫!今度はみんなに迷惑かけないようにするからねっ?この人なんですけど。
ああこの子なら最近うち来ましたよ。
働かせてくれって。
名前はたしか…。
柏木亜矢さんじゃないですか?いえたしか鈴木裕美って名前だったと思います。
まあでもホントかどうかはわかんないですけどね。
いろいろとわけありの子も来ますから。
こっちもいちいち確認してるわけじゃありませんし。
若女将この子が何か?あっいえ。
(玄関チャイム)私ホテルふじの若女将の星野薫といいます。
こちらの寮にお住まいだって聞いたので。
柏木亜矢さんですよね?私8年前の事件のことを知ったんです。
石和へは田上さんと智美さんがいることを知って来たんじゃないですか?亜矢さん8年前の殺人事件についてなんですがあれは冤罪だったんじゃないですか?そうよ私は無実よ。
だったらなぜあなたが?あの日私は確かに遠藤紗江に会った。
でも…。
いいかげんにしてよ!私はあの人とはとっくに別れたの!もう何の関係もないの!嘘よ!今でも時々会ってるくせに!会ってなんかないわよ!わけのわかんないこと言わないでよ!
(亜矢)ただそれだけだったのに。
しらばっくれんじゃねえ!いいか被害者の服にはお前の髪の毛が付着してたんだよ。
いったいこれをどう説明するつもりなんだよえっ!?
(亜矢)田上は私を犯人と決めつけたわ。
私は何度も警察に訴えたわ。
あの日マンションの近くであの女を見たって。
でも信じてもらえなかった。
あの女っていうのは?篠原智美よ。
篠原智美が遠藤紗江を殺したのよ。
田上が言ってたわ。
篠原智美にはアリバイがある。
嘘をつくなって。
でもあれは間違いなく篠原智美だったそれなのに。
だからずっと田上さんと智美さんのことを恨んでいた?ええ。
一日たりとも恨まなかった日はないわ。
1か月前に出所してそしたら篠原智美が撮影で石和に来ることがわかったの。
だからどうしても真実が知りたくて…。
コンパニオンとしてホテルに潜り込んだ。
ええ…。
そしてあなたは何かを知ったんじゃないですか?だから…。
あなたが田上さんと智美さんを殺したんですか?私じゃないわ。
〜女将さん。
あっ託摩様どうかなさいましたか?ちょっといいですか?ええ。
そうですか。
託摩様も8年前のことを…。
でもいつから?退院後です。
治療費のことを聞いたら宝くじに当たったなんて言うんでおかしいと思っていろいろ調べてみたんです。
結局宝くじについては何もわからなかったんですが…。
ただ私の入院中にアイツがある殺人事件の証人になったって聞いて…。
もしかしたら…あの金はそのことに関係があるんじゃないかと思って…。
ずっと気になってたんですね。
ですがそれ以上は調べようもなくて…。
いや本当は知るのが怖かったんです。
アイツが何か関係してたらどうしようって…。
でもあの事件を担当した刑事さんが殺されたと知ってもうこれ以上このままにしておけない。
そう思って…。
知ってるんだ。
お前が殺人事件の証人になったってこと。
あのときの金はそのことに関係あるんじゃないのか?知らない。
私は何も知らない!知らないわけないだろう。
現にこうして…。
お二人ともどうなさったんですか?女将さんアイツはやっぱり8年前のことや今回のことに何か関係してるんでしょうか?でも今は信じるしかありません。
洋子さんのこと。
はい。
洋子?洋子!洋子さんが!?ケータイも繋がらなくて…。
私捜してきます。
ああちょっとお願いね。
あっそれじゃあねあなたたちもお願い。
はい!行きましょう。
ちょっとよろしくね。
私たちも行きましょう。
はい。
こっち。
〜どうだった?
(2人)いませんよ。
そう。
じゃああっちあっち。
〜洋子!〜さあ話して。
8年前に何があったのか。
早く!あっ洋子さん!来ないで!来たら刺すわよ!亜矢さん!早く話しなさい!洋子!?あなた!来ないで!私はただ本当のことが知りたいだけなの!洋子さんもう全部話して。
本当はあなただってそうしたいんでしょ?女将…。
もう1人で抱え込まなくたっていいのよ?洋子…。
あなたの言うとおりよ。
8年前私は智美さんのために嘘のアリバイの証言をしました。
じゃあやっぱり犯人はあの女だったのね!?それはわからない!私は頼まれただけだから!でも私がそんなことをしたためにあなたがとんでもないことになって…。
本当にごめんなさい…ごめんなさい…。
なに今更謝ってんのよ!アンタが余計なこと言わなきゃあの女は捕まってたのよ!私は殺人犯にならずに済んだのよ!すまなかった!私のせいなんだ。
全部私が悪いんだ。
このとおりだ。
洋子を放してやってくれないか?あなた…。
コイツはただ私の治療費を工面しようとしただけなんだ。
あなたのことを苦しめるつもりなんてなかったんだ。
殺すんなら私を殺してくれ。
洋子は…大切な私の妻なんだ。
頼む。
亜矢さん!お願い洋子さんを放して。
そんなことしたって傷つくのはあなただけなのよ。
そうですよ。
あなたはもうこの8年間十分に傷ついてきたじゃないですか。
それなのに今こんなことしたら…。
わかったようなこと言わないで!私はこの女に人生をメチャクチャにされたのよ!それなのにこの女のことばっかり!そうじゃないわよ!私たちはあなたのことを心配してるの!私のこと?あなたにはまだこれからたくさん時間がある。
やり直せるチャンスもたくさんある!それを捨てないでほしいの。
亜矢さんあなた無実だったんですよね?だったらこんなところで罪を犯さないでください。
もっと自分を大切にしてください。
亜矢さん。
亜矢さん!やめてください!警察にも言わないで。
私は…。
私は何もされてませんから。
洋子さん…。
〜もしかしたら…。
そういうことだったのね。
どうぞごゆっくり。
いかがですか?ごゆっくり。
お料理いかがですか?ああたいへんおいしいよ。
ワインもう1本いっちゃおうか。
赤ワインでよろしいですか?ああせっかくだから今度白にしよう。
かしこまりました。
ではグラスもお取り替えいたしますね。
ああお願いします。
ごゆっくりどうぞ。
はいありがとう。
そういえばあのときのワイングラスは…。
なんだお前ビールに氷なんか入れるのかよ。
これがうまいんだよ。
あっそっか!そういうことだったのか!〜薫さん!お母さん!わかったの!わかったんです!
(2人)殺人犯が!
(長沢)こちらです。
こんなところにまで呼び出していったい何の用ですか?実は智美さんを殺した方法がわかったんです。
智美を殺した?何言ってんですか?あれは自殺だと警察も…。
我々もてっきりそう思ったんだがどうやら違うみたいなんですよ。
北岡さん。
智美さんはいつも赤ワインを飲んだあとに白ワイン飲むんですよね?ええそうですが。
ということはあの日テーブルの上にあった2本のワインのうち1本は赤ワイン。
もう1本は白ワインだったはずです。
私は眠ってしまうまで智美さんと一緒に赤ワインを飲んでいましたから智美さんが1人で飲んでいたのは白ワインだったということになります。
そういうことでしょうね。
だとすると一つ妙なことがあるんです。
妙なこと?事件現場の写真をお願いします。
そこに写っているのは智美さんが使っていたグラスなんですがそれは赤ワイン用のグラスなんです。
赤ワイン用のグラス?ええ。
赤ワインを飲むときは大きめのグラスを。
白ワインを飲むときは小さめのグラスを。
ワイン好きな方ほどそう使い分ける方が多いんです。
それは赤ワインの場合は表面積を広くすることでより香りが楽しめるように。
白ワインの場合は温度が上がらないようにするためなんですがそのために赤ワインから白ワインに飲みかえるときにはグラスも交換します。
見てください。
これがその実物です。
でもあの日智美さんは赤ワイン用のグラスで白ワインを飲んでいました。
おかしいと思いませんか?智美さんほどのワイン通がそんなことするなんて。
そういうときもあるんじゃないですか?かえるのが面倒だったとか。
いいえ。
そこにはちゃんとした理由があったんです。
は?これは智美さんが飲んでいたものと同じものです。
あのとき智美さんが買っていた白ワインです。
ここをよく見てください。
「氷で割ってお飲みいただく事をお勧めしております」。
と書かれてありますよね?これロックワインといって氷で割って飲めるタイプのワインなんです。
あの日智美さんはこのワインを飲もうとグラスに氷を入れようとした。
でも白ワイン用の小さなグラスよりも赤ワイン用の大きなグラスのほうが氷が入れやすいと考えたんです。
だから赤ワインを飲んでいたグラスを洗いそこに白ワインを注いだんです。
そしてそこに氷を入れワインを飲んだ。
やがてヒ素中毒を起こし…。
つまりヒ素はその氷の中に入っていたわけですが。
智美さんの部屋に出入りをしていたあなたならヒ素の入った氷を冷蔵庫の中に入れることが可能なんです。
よくできた話ですね。
でもそんなのただの推理でしょう。
証拠はあるんですか?篠原智美さんの部屋の冷蔵庫を調べたところヒ素の入った氷はまだ残ってたんだ。
そしてそこからは指紋も検出されている。
調べればすぐにお前のものとわかるはずだ。
それから田上さんを殺したのもあなたなのね。
前にあなたの手を見たの。
智美に何か?この手の傷はバラのトゲでついたんでしょ?それに智美さんが使っていた部屋から見つかったバラの花びら。
あれもあなたから落ちたものだった。
智美さんが泊まっていた部屋にはあなたも出入りをしていたから。
田上さんの遺体の上にバラを置いたのは争ったときについた傷を隠すためだった。
おそらく田上さんの首についた傷から自分の爪や皮膚が出るのを恐れたからだ。
そうだな?だったらあのバラにもう少し気を配るべきだったんじゃないのか?あのバラを調べたらトゲから血液が検出された。
DNA鑑定をすればすぐにお前のものと一致するはずだ。
(長沢)北岡守。
お前が2人を殺したんだな?あとは署でゆっくり聞かせてもらおうか。
オーレッ!北岡!北岡!行くぞ!はい!ほら来い!北岡!田上とはお互いに借金で首が回らなくて。
それで私のほうから。
8年前の事件をネタに篠原智美を脅そうと話を持ちかけた。
はい。
託摩洋子にアリバイの偽証を頼んだのは私です。
それなのに智美のヤツうちの事務所を辞めて独立するつもりだったんです。
だから…。
じゃあ託摩洋子が石和にいたのは偶然なのか?田上が智美のついでに託摩洋子もゆすろうって言ったんです。
調べたら石和に旅行することがわかったんで番組のロケ地も石和にしてもらったんです。
2人まとめたほうが手っとり早いだろうって。
それなのにアイツが裏切って金を独り占めしようとしたから…。
痛ぇっ!野郎…。
貴様!どうして篠原智美まで殺したんだ?知られたんです。
私が田上を殺したことを。
智美:まさかあなたがあの男と手を組んで私を脅してたなんてね。
でもこれでお互い秘密を一つずつ握ったわけだしこれで私も心置きなく独立できるわ智美のヤツ今までの恩を忘れて…だから…。
ヒ素入りの氷を…。
アイツが全部悪いんだ!アイツが8年前に人殺しなんかしなきゃこんなことにはならなかったんだよ!勝手なこと言うな!!お前は2人も殺したんだぞ!長沢さん!長沢さん!その罪の重さがわかってるのか!亜矢さん東京にお戻りになるんですか?もう…ここにいる必要もないわ。
その前に会っていただきたい人がいるんです。
お願いします。
(洋子)主人の命を助けるためとはいえ取り返しのつかないことをしてしまいました。
本当に申し訳ありませんでした…。
私は死ぬまであなたの人生を狂わせてしまった罪を背負って生きていきます。
一生かけてあなたに償い続けるつもりです。
(幸男)私もです。
コイツと2人…生きてるかぎり償い続けます。
ねぇ亜矢さん。
きっと洋子さんもこの8年間苦しんできたと思うの。
いかに愛する人を救うためとはいえ大きな過ちを犯したことに間違いはないんだから。
亜矢さん。
これからたくさん幸せになりましょうよ。
辛かった8年分…。
ううんもっともっとその10倍も100倍も幸せになりましょうよ。
だって亜矢さんにはまだまだたくさん時間があるんですから。
そうよ。
どんなに辛いことがあっても前を向いて生きてればいつかきっといいことがあるわよ。
よかったらうちで働いてみない?えっ?ウフフあなたがやり直すにはここはもうぴったりの場所だと思うわ。
そうしましょうよ。
ここはお湯はいいしワインもおいしいし。
何より人が温かいですから。
ありがとう…ございます…。
洋子さん。
はい。
もう1人で頑張らないで。
あなたにはこんなにいい旦那様がいらっしゃるんだから。
ねぇ?託摩さん。
あなた。
またぜひいらしてくださいね。
私たち待ってますから。
夫婦ゲンカしたときもオッケーですからね。
すぐにお部屋をご用意いたしますから。
若女将…。
あ…。
女将さん若女将。
本当にありがとうございました…。
〜いや女将と若女将のおかげです。
本当にいろいろありがとうございました。
こちらのほうこそご苦労さまでした。
それから託摩洋子さんの8年前の偽証についてなんですが本来ならば証拠隠滅罪が適用されるところですがすでにもう時効を迎えておりますんでもう罪に問われることはありません。
はぁ…。
そう。
きっとご主人と2人で償い続けていくんでしょうね。
じゃ失礼いたします。
ご苦労さまでした。
ご苦労さまでした。
でも夫婦なんてわからないものですね。
あの託摩さんがまさかあんなにも洋子さんのことを愛していたなんて。
お母さんは最初からちゃんとわかっていたんですね。
あのご夫婦のこと。
夫婦なんてねいいときばかりじゃない。
でもね25年もの時間を一緒に積み重ねてきたんだもの。
愛し合っているからこそですね。
ええ。
(有美)女将!女将大変です!何?どうしたの?ちょっとこっちに来てください!えっ?いいから早く…早く早く!えっ…何?あ〜っ!うわ〜っ…。
あの…女将。
これはちょっとした事情がありまして。
あなた何だかんだ言ってもホテルの仕事が好きなのね。
いえあの…そういうわけでは…。
私嬉しいわ。
よかったですね女将。
これでホテルふじも安泰ですね。
ええホント。
それは大きな勘違いといいますか…。
じゃああなたもう一度雑巾がけから女将修業をやり直してもらいましょうかね。
えっ!?さあ若女将。
私たちと一緒に頑張りましょう!いやいや…。
さあ行きましょう。
ちょっちょっ…ちょっ…ちょっと…。
ちょっと待ってよ。
ねぇ!待ってってば!女将!しっかり頑張ってね!もう二度と勝手なことしませんから…。
ハハハ。
お願いです!お母さん!ねぇ…女将!!2015/12/02(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「温泉女将ふたりの事件簿3 石和温泉殺人事件」[字][解]
宿泊客の男性が河原で遺体となって発見される。事件のキーワードが「バラ」であると推測したホテルの若女将・薫が事件解明に奔走するなか第二の事件が発生し…!
詳細情報
番組内容
石和温泉のホテルで義母・美津江のもと女将修行に励む星野薫。ある日宿泊客の田上が遺体で発見される。前日、田上が女優の篠原智美といるのを見た薫に智美は、ファンだと言われ絡まれていただけと答える。やがて、8年前智美の主演映画に関連した殺人事件があり智美が容疑者の一人であったことや、当時刑事だった田上が事件の担当者だった事を知った薫は智美のもとへ向かう。
出演者
星野薫…菊川怜
星野美津江…三田佳子
託摩洋子…藤吉久美子
託摩幸男…中西良太
長沢真義…六平直政
真下直樹…金子昇
篠原智美…大河内奈々子
柏木亜矢…大路恵美
星野浩介…藤井隆
嶺岸伸治…島田洋七
原作脚本
【脚本】田中孝治
監督・演出
【監督】池澤辰也
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
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