いろいろなメニューを掲げています。
(アナウンス)「東教授の総回診です」
(東)なぜ君は素直にわたしに頼まんのかね?教授にしてほしいと。
(財前)頭を下げるつもりはございません。
(杏子)しばらく会わないでいただきたいの。
(ケイ子)女性問題で駄目になるような方なら教授になっても長続きはしないと思いますよ。
(佐枝子)母はわたしが里見先生に特別な感情を抱いているんじゃないかと思っているんです。
大河内教授との間を取り持ってくれよ。
財前はすばらしい腕と信念の持ち主だと宣伝してくれないか。
(里見)お前に本当に信念があるなら堂々と会えるはずだろう。
(野坂)徳島医科大学の葛西教授が適任だと思います。
(大河内)石川大菊川教授本学財前助教授の3名で教授会による投票を行うこととしたい。
(財前)大河内先生。
私教授にはなりたくございません。
(財前)基礎講座の恩師である大河内先生にだけは本心を分かっていただきたくて。
学内にはわたしのことを人を押しのけてでも成り上がっていきたい人間だと考えている方がいます。
ですがわたしは地位を欲しているわけではありません。
外科医として臨床の道を究めたいと邁進してきた結果助教授となり今回次期教授候補となったのです。
わたしの本心を言えば教授の地位を得ることで現場でメスを握る機会が減るよりは一外科医として多くの患者に当たりたいと思っています。
しかしその一方で逃げてはならないとも考えているのです。
なぜなら教授になってこそ研究の場を広げることもできるでしょうしそれによってより多くの後輩を引っ張っていくことも意義深いことで…。
未熟者とおしかりを受けるかもしれませんが迷い悩む日々を送っておりまして。
まっそれで一度大河内先生にだけでも胸の内を聞いていただければと…。
大河内先生。
あのお言葉をかけていただけないのでしょうか?
(ノック)
(大河内)はい。
(里見)第一内科里見です。
(大河内)入りたまえ。
(里見)失礼します。
お呼びでしょうか?
(大河内)里見君。
(里見)はい。
(大河内)用件はこれだ。
国と学会と医師会が共催しているがん撲滅デーの講演だ。
北村教授にお願いする予定だったが急病で倒れられた。
浪速大の代表として君にお願いしたい。
どうだろう?わたしでよろしいのでしょうか?君が学会賞をとった「早期ガンの進行メカニズムに関する研究」は一般市民にも通用する。
臨床医の立場で分かりやすく論ずれば意義ある講演になろう。
ただし…。
気が進まんのなら断るのは自由だ。
もし本当にやりたくないのであれば回りくどい遠慮はいらん。
辞退したまえ。
やれよ里見。
大河内先生が勧めてくださるのに逃げては失礼だ。
きっといい講演になるよ。
お言葉ありがとうございました。
(財前)失礼いたします。
(大河内)彼の言ったことは気にしなくていい。
君の返事を聞かせてくれたまえ。
(里見)はい。
ガンが治りうる病気であることを知ってもらういい機会ですからお受けしたいと思います。
(政子)教授候補が3人ってあとの1人どなたですの?
(東)徳島医科大の葛西君だよ。
ほら財前君の前に助教授だった。
(政子)ああ。
まあいやだ。
よりにもよって菊川さんの競争相手が2人ともあなたの助教授だなんてフフ。
何がおかしいんだね?
(政子)財前さんにしても葛西さんにしても教授になりたいばっかりに必死であなたに取り入ろうとしていましたのに結局は地方に行かされてしまうなんておあいにくさまですわね。
そんなふうに人の人生を笑うもんじゃないよ。
あら元はと言えばあなたが生み出した結果じゃございませんの。
まあしかたがないじゃないか。
別に意識してそうしたわけじゃないんだ。
まあ彼らに学問的人間的資質が備わっていなかっただけだよ。
で見込みの程はどうですの?菊川さん大丈夫でしょうね。
まあ今津君と調整中だがね。
ここまで来たからには何としてでも菊川君を教授にしてみせるよ。
でも財前さんには鵜飼医学部長がついていらっしゃるのでしょう?あなたの思惑どおりに運びますかしら?鵜飼君が医学部長だからといって教授会の票をすべて左右できるというもんじゃないんだ。
まあ余計な心配はいらん。
私はあなたご自身の心配をしているのですよ。
(東)うん?退官後の行き先はどうなりましたの?まっいくつか話はもらっているがね。
考えているところだ。
この教授選に勝てば何とか有利に働くのでございましょう?佐枝子の将来のこともありますから私だってここは黙ってはいられま…。
あっ。
おかえりなさいお父さま。
(政子)お聞きなさい佐枝子さん。
菊川先生が最終候補に残ったんですって。
良かったわね。
そう。
それがお父さまにとっても菊川さんにとっても本当に望ましいことならいいけど。
おやすみなさい。
(杏子)三つどもえか…。
うーん勝てそう?
(財前)勝つしかないだろう。
(杏子)でも向こうだってそう思ってるわけよね。
8年も東に尽くしてきた俺と昨日や今日候補に上がった人間を同じレベルで語るな。
うわ頼もしい。
あなたって教授になりたいとか何とか言っててもわたしに言わせればどこかかっこつけてたけどやっと本気の顔見せてくれたわね。
へえわたしももっと頑張らなきゃね。
もっと?花森ケイ子さんに会ってきたの。
女性問題で足元すくわれたらつまらないからしばらくは個人的に会わないでって言ってきたわ。
ああああああああああ。
言い訳はいらない。
わたしはあなたに教授になってほしいの。
いい夫を演じてなんてほしくないから。
フフフフフ。
おかしい?フフフ。
あっ。
(杏子)あっ出かけるの?ねえ。
(里見)《何でお前はそんなに教授になりたいんだ?お前は医者として確かな腕を持ってる。
たくさんの患者の命を救ってきた。
それじゃ駄目なのか?》
(財前)《俺は偉くなりたいんだよ。
いちばんになってより多くの人間を従えて歩きたい。
男なら誰でも思うことじゃないのか?》
(テーマソング)〜
(又一)えっ18票!?たったの18人でっか?
(岩田)「たった」ていう言い方はないでしょう。
(又一)まあそりゃあまあ。
(岩田)ちょっとよろしか?教授会にあの在籍している教授は第一外科を含む臨床講座が16人。
(又一)ええ。
(岩田)で研究畑の基礎講座が15人。
合計31人。
そのうち臨床16票の票分けは財前支持が鵜飼君を頭に10票菊川支持が東派の4票残り2票は葛西を推してる野坂派ということやが基礎の15票は堅物の大河内が握っとるんで…。
あ痛たたたや。
(岩田)半分の8票取るのが精一杯やないかと。
よって18票とこういう計算になるわけですわ。
(又一)この8票いうのはこれ確実でっしゃろなええ?万が一でっせええ?これ全部東はんに取られてみいなええ4プラスこれ15であっちは19票ええこっちは10票で19対10でこれえらい大負けでっせこれ。
(岩田)あんたそない極端な。
(又一)ええ?
(鵜飼)それは分からんよ。
大河内先生はもともと財前君のことを良く思ってないようだからね。
(又一)はあ。
五郎君そっちのほうはどやねん?ちゃんと大河内先生にはもうしっぽ振ってきたんやろな?話は聞いていただきましたが。
(又一)うん。
お気持ちは動かせたかどうか。
当たり前だよ。
君が言って動くような人物なら僕がこんなに苦労するはずがない。
もう余計なことはしないほうがいいね。
かえって事態を悪くしかねないよ。
勝手をしてすみません。
ですができるだけのことはやっておきたいと思ったのです。
この選挙に負ければわたしは恐らく地方行き。
小さな研究室で一生過ごすくらいなら医者など辞めたほうがましです。
ですから絶対に後悔だけはしたくございません。
(今津)基礎の教授15人すべてにお会いしてきました。
(東)ああ露骨なことは言ってないだろうね。
(今津)もちろんです。
大河内教授が束ねているのですから下手な選挙運動はできません。
菊川教授の業績と人格がすばらしいことと東先生が現助教授の財前君を人格的に推すことができず悩んでおられるその2点に絞って同情に訴えて参りました。
うん。
それで?大河内教授は菊川氏の業績を公正に認めておられるようです。
もともと財前君のような打算的な人間は認めていませんから間違いなく菊川氏に入れるでしょう。
ほかの14人も大河内教授の考えに従うという様子でした。
すると基礎の15人全員はこちらにつくと見ていいんだね?はい。
臨床ではさすがに鵜飼派に切り込むことはできませんが東先生にわたし望月三井の4票と基礎の15票を足せば19票。
仮に1、2票の取りこぼしがあったとしても過半数は獲得できます。
(鵜飼)基礎は大河内で固まっているように見えて最近若手を中心に大河内先生の融通の利かんやり方に不満の声も上がってるそうだからその辺りから切り崩していけば半分の8票は固いですしそれ以上もありえますよ。
ほんまでっか?まあ僕は立場上目立つことはできないのでその辺りのところは葉山君にうまくやってもらうから。
ねえ。
(又一)アハハありがとうございます。
葉山先生まあついでと言うたら何ですけどこの葛西いうのんを推しとるこの野坂先生のほうも何とか…。
(葉山)それはどうですかな。
(今津)野坂先生は財前君を嫌って葛西先生を担ぎ出しているようなものです。
こっちへ流れることはあっても財前君に入れることはないでしょう。
そう。
そうだね。
では下手な手出しはやめにするか。
教授選というのは愚かな強引さより賢い妥協だからね。
フッフフフ。
(鵜飼)まあ野坂君のところはしょせん2票より増えることはないだろうしね。
(又一)そこを何とか。
何とか頼んますわもう。
ねえ鵜飼先生。
ここまであれやこれややっといて1票、2票で泣いてもうたらそれこそ首くくるしかありまへんがな。
ヘヘヘ。
まあ一応考えてはみるがね。
はっありがとうございます。
そこで先生。
軍資金のほうはなんぼほど用意したらよろしいん?
(岩田)いやちょっとちょっとちょっと。
えっ?えっ?あんた疲れるわ。
(又一)何でや?あんたはすぐそれで困る。
(又一)ええ?いるときにはこっちから言いますさかい。
そないなこと言うたかてあんたわしらの代表選ぶときの選挙かて金金金金ばっかりやないかい。
ごもっともごもっとも。
(又一)ええ?しかし大学の教授選の金の出し方はちょっと演技がいるんや。
ああ演技?
(岩田)いやあんたみたいに欲望丸出しやのうて金が金に見えんような品位のある演技がな。
はあ。
品位?そんな1銭にもならんようなもんまで欲しがりまんのか。
ええ?そらよっぽど先生らのほうがヘッヘッヘ欲張りでんなええヘヘヘヘヘ。
どうぞ先生方よろしくお願い申し上げます。
(又一)お願いします。
お願いします。
(医局員たち)先生。
お疲れさまです。
(医局員たち)お疲れさまです。
(佃)どうしたらいいんでしょうか?
(安西)菊川教授の上に葛西先生が相手だとは。
何悲壮な顔をしてるんだ。
予想してた範囲のことだよ。
でも東教授が菊川教授を推す以上相当な根回しをしてるんじゃないでしょうか?
(財前)だろうな。
東教授は用心深い性格だからな。
大丈夫でしょうか?先生。
おいおい弱気じゃ困るぞ。
医局で一丸となって僕を支援してくれるんじゃなかったのか?いや医局のほうはほぼ問題ありません。
なっ。
はいみんなで先生を応援させてもらいます。
なっ。
(柳原)はい。
何だ。
自信がなさそうじゃないか。
バカ。
先生が不安がられてるじゃないか。
えっ。
あの実はちょっと金井先生のことが気になってるんですが。
金井君がどうかしたのか?財前先生の腕は認めるが派閥は嫌いだとどこか一匹狼なところがありまして。
(安西)まさか東教授に取り込まれてるっていうことはないとは思うんですが。
ハッ気にするな。
組織が全員同じ方向を向いてるなんてことはありえない。
それより日々の仕事をきちんとこなせ。
外科のミスは致命的なことになるからな。
(医局員たち)はい。
おっ。
みんな座れ。
おい。
何かうまい物を持ってきてくれ。
(ケイ子)マミちゃん。
(マミ)あっはい。
ただいま。
(客)ごぶさたして。
(ケイ子)いやもう忙しくて。
何でも好きな物食って好きなだけ飲みなさい。
よろしいんですか?
(医局員)いいんですか?ああ。
僕の味方は君たちしかいないからな。
(安西)ハハそんな。
本当さ。
だから僕も第一外科にいるかぎり君たちを守ってくよ。
(安西)恐縮です。
何泣いてんだバカ。
泣いてませんよ。
(安西)ハハハハ泣いてますよ。
よし。
今夜は大いに盛り上がろう。
(医局員たち)はい。
(安西)飲みましょう。
(医局員)あっすいません。
(医局員)もらいますもらいます。
(医局員たちの談笑)
(フロント係)おはようございます鵜飼さま。
(典江)あっどうも。
(喜久子)オホホホ。
あっいらしたみたい。
(典江)あら。
皆さまおそろいですね。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
おはようございます。
こちらでよろしいでしょうか?
(典江)あっありがとう。
(杏子)はい。
(喜久子)あら財前さん。
お手伝いに来てくださったの?財前さんはね大学時代ゴルフ部だったんですって。
ですから今日は皆さんにお手本を見せていただこうと思いましてね。
(昭子)まあ。
よろしくお願いいたします。
(昭子)緊張するわ。
(喜久子)わたしたち健康のためにやってるようなものですからお手柔らかにお願いいたしますわね。
(杏子)もうそんな。
私もほんの少しかじった程度ですのでこちらこそご指導よろしくお願いいたします。
(一同)よろしくお願いいたします。
(典江)それではくれない会ゴルフコンペを開催いたします。
浪速大学医学部の教授を支える妻同士大いに日ごろの親睦を深めてくださいませ。
(拍手)
(典江)それでは組み合わせを発表いたします。
(杏子)お手伝いします。
(昭子)あっどうも。
お願いします。
(典江)第1組えー僭越でございますが私鵜飼と葉山教授の奥さま昭子さん。
はい。
野坂教授の奥さま信子さん。
(信子)はい。
(典江)そして財前助教授の奥さま杏子さん。
はーい。
(典江)第2組へ参ります。
築岡教授の奥さま浩子さん。
(浩子)はい。
(典江)河合教授の奥さま静代さん。
新井教授の奥さま昌枝さん。
(昌枝)はい。
乾教授の奥さま早智子さん。
(早智子)はい。
(典江)第3組です。
助川教授の奥さま晶代さん…。
(喜久子)鵜飼さんすっかり財前さんをごちょう愛ね。
(典江)則内院長の奥さま喜久子さん。
はい。
それにしてもふだんは相手にもしていない野坂さんと一緒に回るなんてやっぱり教授選が関係してんのかしら?あらごめんなさい。
当事者の東さんに余計なことを。
あっ。
さっ参りましょうか?ねっ。
えー東さんは何組ですの…。
あら!?ちょっ…。
東さんのお名前ないじゃありませんか。
いえいえ。
私お返事出すのがとても遅れましたものですから。
(喜久子)だってこうして見えてるのに。
鵜飼さーん。
ほら鵜飼会長!東さんをお忘れですわよ。
東さん!どうぞ。
お気になさらないでどうぞ。
(典江)おおナイスショット!
(拍手)
(典江)ああさすがね。
フォームが違うわよ。
オホホ。
(杏子)いいえ。
奥さまこそダイナミックなフォームでしたわ。
とんでもない。
参りましょうか。
行ってきまーす。
(昭子)お先に。
(典江)あっそうだわ。
ねえ今度財前さんに個人レッスンお願いしましょうか?
(昭子)いいですわね。
(杏子)いつでもお供します。
(典江)あーらうれしいわ。
野坂さんいかが?えっ?
(典江)財前さんはね若くて将来のある方よ。
おつきあいをして財前さんの若さを吸収しちゃいましょうよ。
(信子)でもあの主人に相談してみませんと。
(典江)あらもうご主人1人操縦できなくて教授の妻という仕事は務まりませんわよ。
ウフフ。
(昭子)東さんのようになりたくなかったらわたしたちと親睦を深めましょうね。
(東)不調法ですみません。
いや家内がゴルフに出かけておりましてね。
(船尾)いや学会の前にお寄りしただけですから。
それに奥方がお留守のほうが何かと話もしやすいでしょう。
(東)ハハハ。
いや確かに。
(船尾)教授選のほうはどんな様子でしょう?ご心配には及びません。
船尾先生。
菊川先生。
いやお2人やきもきさせましたがすべてうまくいきました。
くどいようですが菊川君はわたしの秘蔵の弟子です。
万が一にも敗れるなどいうことはわたしにとってもあってはならないことです。
船尾先生のご尊顔を汚すようなことはいたしません。
(船尾)では具体的な票の読みについては伺うまでもありませんね?ええ。
基礎の票を取り込みましたのでね31票中19票は確実です。
19票ですか?外からの移入ですからよしとしましょう。
はあ。
(船尾)菊川君そういうことだ。
浪速大は研究費が潤沢だから就任したら存分に研究をさせてもらいなさい。
(菊川)わたしのためにお骨折りいただきありがとうございます。
(船尾)まあ東都大と浪速大のパイプ役として力を発揮してくれればいいんだよ。
(船尾・東)ハハハハ。
(菊川)あの1点だけ気になることがあるんですけれども。
ああ何なりとおっしゃってください。
東先生が内部の助教授である財前先生を推さないとなると財前先生に対する同情票が予想外に上がってくるのではないかと思うんですけれども。
その点は特に念入りに考えてあります。
どうか大船に乗った気でいてください。
「大船」ですか?いえ。
まあ見ていてください。
(船尾)あっ。
(佐枝子)失礼します。
(東)ああああ。
いやすまなかったね。
(船尾)ところで東先生。
退官後についてはもうお決まりですか?いやいやそれがね患者さんの引き継ぎやら何やらでまあ先のことは後回しになってしまってね。
責任感の強い先生のことですからそんなことではないかと思って。
(船尾)文科省が来年春に新しい医学研究センターを設立することはご存じだと思います。
ええええええ。
いやこれほど研究設備のそろった施設は東京にもないとああ話題になっておりましたからね。
東先生にこのセンター長をやっていただけるとありがたいのですが。
わたしはここで失礼します。
おっまだ学会まで時間があるのでは?
(菊川)午後1番の発表ですので準備をしておきたいんです。
ああそうですか。
ああ佐枝子。
お送りして。
(菊川)ああ結構です。
自分で帰れますから。
(佐枝子)いえお送りします。
(菊川)秋も深まりましたね。
金沢はもう冬です。
雪が降ると大変ですが。
あの…。
菊川さんにお話したいことがあります。
何でしょう?わたしは父や母とは違う生き方をしたいと思っています。
大変失礼なことを申し上げますが…。
あの…。
分かってますよ。
僕は教授候補であってあなたの結婚相手ではないそうおっしゃりたいんでしょう?申し訳ありません。
こんな失礼なことを。
いいえ。
僕もあなたと結婚する気はありませんから。
あなたはご両親が古い考えだと思ってる。
その犠牲になってると思ってる。
しかし僕から見ればあなたこそ古い女性です。
(菊川)確かに東先生や奥さんは自分たちが選んだ後継者と娘を結婚させようとしてる。
それ自体は古い行為です。
まるで政略結婚ですからね。
でもこんな不確かな世の中でかろうじて伸び伸びと生きるには新しさではなく古さに身をゆだねるしかないと考えてのことじゃないんでしょうか。
さらに言えばあなた自身に親元を離れて1人で生きていくだけの強さがないということをご両親は分かってるんじゃないでしょうか。
違ってたらすいません。
とにかく僕はもう結婚はこりごりですからあなたが心配する必要はありませんよ。
はい。
最後に一つだけ聞いてもいいですか?あなたから見て財前助教授と僕どちらが東先生の後任にふさわしいとお思いですか?わたしにはお答えできません。
教授という地位が一体どういうものなのかいまだによく分からないからです。
そうですか。
正直な意見ありがとう。
それでは。
(係員)よろしくお願いします。
ぜひお越しください。
はいどうぞ。
(係員)よろしくお願いします。
(係員)お願いします。
(係員)会場すぐそこですのでよろしくお願いします。
(係員)よろしくお願いいたします。
(係員)よろしくお願いします。
(係員)ぜひお越しください。
(係員)よろしくお願いします。
(係員)よろしくお願いします。
ぜひお越しください。
(係員)もうすぐ開演いたします。
(係員)よろしくお願いします。
(里見)体の一部で発生したガンは局所で増殖し血管の中に入り込みます。
そしてガン細胞は血液の流れに乗って全身に広がっていきます。
以上のようなメカニズムでガンは進行します。
ですからガンという病から身を守るためには何よりも早期発見が大切で図のこの部分この段階で発見することがガンから身を守ることにつながります。
次のスライドをお願いします。
(里見)えー早期発見により早い段階で治療を開始された場合肺ガンを例に説明いたしますと7割前後の方々が…。
何なの?こんな所に呼び出して。
奥さんと何話したか教えてほしいんでしょ?財前先生。
黙れよ。
聴いてるんだ。
(里見)少し話が難しくなったでしょうか?言葉を変えていいますと…。
あいつ偉くなりたいと思わないらしい。
かと言って怠けたいわけでもない。
ただ患者のために医学のために持てる力を注ぎたいんだと。
フッ。
そんなヤツホントにいるのかね?五郎ちゃんはどう思うの?嘘臭いとしか思えんな。
俺は自分のためだけに生きてる。
誰だってそうじゃないのか?そうね。
困るんだよ。
定期的な検診を受けるようになさってください。
あいつの言ってることが嘘じゃなきゃ俺は困るんだ。
(ケイ子)待ってよ。
勝手ね。
(財前)でどうなんだ?
(ケイ子)えっ?
(財前)女房と何話した?アッハハ。
教えてあげません。
今日はご静聴ありがとうございました。
(拍手)
(里見)どうもありがとうございました。
(係員)どうぞこちらです。
(里見)はあ。
(よし江)すいません先生。
はい。
(よし江)あの主人のことでちょっとお聞きしたいんですけど。
(係員)あの個人的なことは保健所の無料相談で受け付けておりますので。
かまいません何か?すぐに行きますから。
すいません。
主人がですね最近お酒が胸に染みるって言うんです。
お酒が胸に?
(よし江)ええそれだけじゃないんです。
御飯でも硬い物は飲み込みにくいらしくて。
(里見)それは飲み込むときに何かつかえるような感じがあるというでしょうか?
(よし江)はいそうです。
あの何かの病気でしょうか?
(里見)本人を診察してみないと詳しいことは分かりません。
まあ少し気になる症状ではありますので早めに病院のほうで検査されることをお勧めします。
(よし江)いやでも主人仕事忙しいって。
ああ。
ウチあの近くで弁当屋やってるんですけどもあの主人子供のときから病院大嫌いで一度も行ったことがないのが自慢の人で…。
もし病気であれば早期発見が大切ですし病気でなければ安心できると説得されてはいかがでしょうか。
あっそうですよね。
病気でなければ安心できますよね。
分かりました。
あの行きます。
必ず行きます。
どうもありがとうございました。
(よし江)あっ先生。
(里見)ああ。
(よし江)先日はどうもありがとうございました。
(里見)あっいえいえ。
(よし江)あの主人連れて参りました。
(里見)あっ。
お父ちゃん。
こちらが話した先生だよ。
あいさつして。
(庸平)分かっとるちゅうに。
どうも佐々木庸平です。
後ほど診察室で拝見させていただきます。
どうも。
もう。
何やさっきからもう。
(教授)おう。
(教授)おはようございます。
(鵜飼)やあお早いですな。
(教授)こっちがまあ一のボスってとこですかね。
〜
(君子)いよいよ始まるわね。
ああ。
何か嫌ですね。
選ばれたり落とされたり。
そんなこと言ってたって柳原先生だってあと10年もすれば教授になりたくなるわよ。
まさか。
何がまさかよ。
財前先生が教授になっても菊川とかいう人が教授になっても定年退官を迎えるときは柳原先生が財前先生ぐらいの年なのよ。
教授選の真っただ中にいて「何とか頼むよ」って言ってるわよ。
〜
(里見)よし。
(竹内)はい。
(竹内)はい。
(竹内)ごめんなさいね。
はい開いて。
はい。
はい閉じて。
はい。
(里見)よし。
はい。
佐々木さん終わりました。
今空気抜きますからすぐ楽になりますよ。
(里見)はい失礼しました。
(看護師)はいお口外しますね。
(よし江)大丈夫?
(東)遅くなりました。
(鵜飼)ただいまより第一外科東教授の退官に伴い次期教授を選出する審議ならびに選挙を執り行います。
教授選考会で厳正なる選考を重ねた結果最終候補者は石川大学菊川教授徳島医科大学葛西教授本学の財前助教授の3名に決定いたした。
選考の経過については…。
(里見)竹内。
(竹内)はい。
(里見)第一外科に内視鏡写真を回しといてくれ。
えっ今ですか?
(里見)食道ガンだ。
財前になるべく早く写真を見といてもらいたいんだ。
それから病理に生検標本を出しておいてくれ。
あっ。
でも今はですね…。
(里見)よろしく頼む。
まずいっしょ今は。
(大河内)ではこれより事務長立ち会いのもと投票に移る。
単記無記名でお願いしたい。
(財前)もしもしお母ちゃん?今月分送ったよ。
(きぬ)ありがと五郎。
はあ元気かい?ああ元気さ。
今日はいい天気だよ。
フフどうしたんだい?お前が天気の話するなんて。
(財前)いや。
最近よく思い出すんだ。
子供のころもっと大きくなりたいもっと大きくなりたいって庭の木に背伸びしてたの。
(きぬ)お前は大きくなったじゃないか。
立派になったじゃないか。
そうだな。
(きぬ)ああ。
お母ちゃん十分満足してるよ。
(財前)でも不思議だよ。
大人になっても医者になってもまだ俺もっともっとって思ってるんだ。
きっと死ぬまで思い続けるんだろうな。
(東)ちょっとお待ちいただきたい。
(鵜飼)東先生どうなさったのです?私は棄権させていただきたい。
棄権?投票を棄権したいと?はい。
財前君も葛西君も私が手塩にかけて育てた愛弟子です。
その2人がこれからの投票によって骨肉相食むような戦いをするのを直視するに忍びません。
私自身そのどちらに入れることもできずさりとて学問的業績の上から公平に見て菊川候補を支持したいと思ってもこれまた愛弟子の2人を見殺しにして他学の人に投票するわけにはいきません。
従って私としては残念ながら自分の正しい意思を行使しうる1票を捨てるよりほかに方法はございません。
どうか退席するのをお許しいただきたい。
(ざわめき)〜『アメイジング・グレイス』〜〜〜〜2015/12/02(水) 14:55〜15:50
関西テレビ1
白い巨塔 #08[再][字]【教授の椅子に座るのは誰か?財前の野望を賭けた戦い!】
「決戦」
詳細情報
番組内容
財前五郎(唐沢寿明)は、教授選の壁である大河内教授(品川徹)を篭絡せんと「本当は教授になりたくない」と直訴に及んだ。だが、大河内は、財前を完全に無視した。鵜飼部長(伊武雅刀)を中心とする財前派、菊川(沢村一樹)を擁する東(石坂浩二)派ともに、最後の票読みに入るも、確実な数が読みきれない。そして最終投票を行う教授会が始まった。すると突然、東が立ち上がって・・・。
出演者
唐沢寿明
江口洋介
黒木瞳
矢田亜希子
水野真紀
沢村一樹
片岡孝太郎
伊武雅刀
若村麻由美
西田尚美
野川由美子
池内淳子
かたせ梨乃
伊藤英明
石坂浩二
西田敏行ほか
原作・脚本
【原作】
山崎豊子
【脚本】
井上由美子
監督・演出
【企画】
和田行
【プロデューサー】
高橋萬彦
川上一夫
【演出】
村上正典
【音楽】
加古隆
「アメイジング・グレイス」ヘイリー
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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