『TheSoundofSilence』
(銃声)
(銃声)
(警備員)大丈夫ですか!?しっかりしてください!救急車呼んでください!!俺たちは銃から当たるぞ!はい!
(伊丹憲一)気合入れていくぞ。
(芹沢慶二)もちろんっすよ。
(米沢守)殺害されたのは株式会社イージス警備に勤務する土方勇作さん41歳。
狙撃に使用されたのは5.56ミリ弾だった事が判明してます。
銃弾は背中から心臓を貫通してました。
(ドアが開く音)杉下警部おはようございます。
(神戸尊)おはようございます。
(杉下右京)おはようございます。
角田課長から君が鑑識へ行ったと聞きましたので…。
例の狙撃事件ですね。
はい。
昨日狙撃された土方勇作とは警察学校の同期でした。
特に仲がよかったわけじゃないんですけどちょっと気になる事があって。
おやなんでしょう?土方は閣僚警護の経験もあるSPでした。
つまり警察を辞めて民間の警備会社に勤めていたわけですね。
ええ。
でも土方はSPの仕事が怖くなって警察を辞めたんです。
それなのにまた警護の仕事についてしかも警護対象者の盾になって凶弾に倒れたみたいだったんで…。
そういう事でしたか…。
あの…実はそうではなかったようなんです。
はい?そうではなかったって何が?こちら現場にあった防犯カメラの映像なんですけどもちょっと見てください。
これって…。
狙撃地点はですねこの場所から300メートル離れたこのビルの屋上でした。
300メートルとは随分距離がありますね。
このビルの屋上には鍵がかかっていなかったそうです。
なるほどそういう事ですか。
ちょっと待ってください。
この方向から撃たれて土方はこっちへ動いた。
ええ。
最初の狙撃があってからどうやら逃げ出したようなんですな。
マル対もそのように証言を。
え…逃げた?狙われたのはマル対。
つまり警護対象者ですね?ええ。
ヨツバ化学工業で研究職についている泊真一さんという方です。
研究者が狙われたわけですか?はい。
詳しい事はよくわからないんですけども何やらとても重要な研究をなさっていたようで…。
即刻その研究を中止せよと脅迫状が届いたそうです。
それで警備を…。
はい自宅にも帰らずホテルを利用していたそうです。
かなりの警戒態勢ですね。
どうもありがとう。
あっちょっと!どちらへ?命を狙われるほどの研究ですからねぇ。
気になりますよ。
警視庁の杉下と申します。
同じく神戸です。
どうですか?具合の方は。
(泊真一)私自身にけがはなかったんですが念のため入院した方がいいと言われまして…。
命を狙われる危機に直面されたわけですからね。
ええ…。
そのような中恐縮ですが泊さんの研究内容についてお聞かせ頂けないかと思いまして。
すみませんそれについては企業秘密でして私の方からは申し上げられません。
会社に聞いてもらえますか?そうですか。
それから土方さんなんですが撃たれた時に会社のバッジをつけていませんでした。
バッジ?社章です。
スーツにつける。
それをポケットにしまっていたようなんです。
どうしてスーツにはつけていなかったのでしょう?すみませんねぇ。
細かい事が気になってしまうのが僕の悪い癖でして。
いえ心当たりありませんが…。
そうですか。
神戸くん何か?はい。
土方が逃げたというのは?はい?警護の人間が逃げたというのは本当ですか?ええ…。
私もびっくりしましたから。
そうですか…。
この先研究はどうされるおつもりですか?正直まだ混乱していまして…。
そうですか…。
このような時にありがとうございました。
(鷲尾啓介)泊の研究内容は大げさな話ではなく人類に大きく貢献するものなんです。
それは興味深いですね。
具体的には二酸化炭素を酸素に変えるというものです。
二酸化炭素を酸素にですか?ええ。
もともとは宇宙ステーションや潜水艦などでの活用を目的にした研究だったんです。
しかしお話を伺う限り命を狙われるような危険な研究とは思えないんですけど。
とんでもない!これは従来のシステムに大きな影響を与えるほどの事なんですよ。
え?二酸化炭素を酸素に変えるという事は温室効果ガスの1つであるCO2削減にも大きく貢献する事にもなりますから。
いい事じゃないですか。
ええ。
ですが環境ビジネス特にCO2の排出削減に関連した業者の人間たちには不都合ですからね。
例えば株などと同じように排出権を取引する市場は10兆円規模とも言われています。
10兆円!?そしてそれらのビジネスには暴力団などが食い込んでるというのも現実なんです。
では今回のような事件を起こしても不思議ではないと?ええ。
脅迫状の件を警察に届け出なかったのはどうしてでしょう?脅迫状が届いた時点では泊の研究が公になってしまうのは避けたいと考えていたんです。
まさかこんな過激な手段に出るとは思ってもいませんでした。
なるほど。
ところで泊さんはずっとこちらの会社でお仕事を?いえもともとは大学で教鞭を執るかたわら研究を続けていたんです。
ではこちらの会社にお入りになったいきさつはなんでしょう?大学で研究していた頃は日本丸というNPO法人から援助を受けていたんですがそれが打ち切られたようでそれでうちに呼んだというわけです。
ああ…なるほど。
関係者の方ですか?おやひょっとして亡くなった土方さんの元の同僚の方でしょうか?
(宮里)ああ…はい。
あの…帳場の方ですか?いえ我々は捜査本部ではありません。
特命係の杉下と申します。
同じく神戸です。
特命…。
あっ帳場とは別なんだけどこの事件を調べてるんだ。
そうなんですか。
自分は警備部警護課第2係の宮里です。
土方さんとは一緒にSPの任務についていました。
そうでしたか。
あの…土方さんが逃げたというのは本当なんですか?うん。
現場の状況やマル対の話から判断するとそうみたいだね。
そうなんですか…。
では土方さんとは同じ対象者の警護をした事も?ええ。
箕島国土交通大臣の警護につきました。
箕島大臣って土方のSPとしての最後の仕事だよね?ええ。
あの…。
ああ。
俺警察学校で土方と同期だったから。
そうなんですか。
でもさ土方はどうしてまた警護員の仕事をしてたんだろう?え?いや辞めた経緯がさ…。
もう警護の仕事なんてしないと思ってたから。
ああそうですね。
しかしそれは自分にもよくわかりません。
そうか…。
すいません。
失礼します。
狙撃はあのビルの屋上からでしたね?ええ。
やはり土方さんは普段はバッジをつけていたようですね。
ええ。
それともう一つ車の来た方向が違います。
これは事件当日の映像です。
車は画面右側からやって来ました。
そしてこちら。
事件前日の映像です。
この前もさかのぼって調べてみましたが車は全て画面左側からやって来ます。
つまり普段と違う行動が2つ。
ええ。
バッジをつけていなかった事。
そして車が右側から来た事。
(角田六郎)はぁ〜コーヒーコーヒー!1課の連中に掴まっちまってさのど渇いちゃったよ。
1課に?うん。
例の狙撃事件であっちも気合入ってるみたいでさ。
ああ。
なあ知ってるか?今時のやくざってのはすげえんだよ。
すげえって何が?しのぎの手口だよ。
CO2関連のビジネスをしのぎにしている暴力団ってのがあるんだよ!10兆円市場なんですってね。
な…知ってた?で具体的な名前はあがったのでしょうか?うんまあグローバルエネルギーだな。
グローバルエネルギー。
エネルギー関連の仲介業者なんだけどもともとは一般企業と経済やくざの龍神会が合同で立ち上げた会社なんだよ。
一般企業と経済やくざ…?
(芹沢)志村社長あなたが龍神会の人間だって事はわかってるんですよ。
(志村)元…ですけどね。
それは否定しませんよ。
でもねえ…今じゃしごくまっとうな社会生活者ですよ。
だったら警察の捜査にもしごくまっとうに協力して頂きましょうか。
なんです?
(三浦信輔)じゃあまず経理の資料拝見できますか?ええどうぞ。
神戸くん。
はい。
そもそもなぜ土方さんがSPの仕事が怖くなって辞めたという話になっているのでしょう?土方は担当だった箕島大臣の警護からはずしてほしいと申し出たそうです。
(月本幸子)箕島大臣って懐かしい名前ですね。
確か…色々あった方ですよね?色々とやらかして結局最後は失言問題で大臣を辞任。
そうでしたねぇ。
でそれで?実際に襲われるかもしれないマル対の警護からはずしてほしいと申し出た事でまあ…臆病風に吹かれたんだろうと。
そういう事ですか。
それに俺何年か前に土方と話したんです。
(土方勇作)神戸。
おっ土方。
久しぶり。
サッチョウに行ったお前がこっちになんの用だ?秘密のプロジェクト。
まあ事件捜査にかかわりのないお前には関係のない事だよ。
相変わらずだな。
仕方ないだろ仕事なんだから。
お前の方は?今は箕島大臣の警護についてる。
箕島大臣?ああ。
そりゃあ…やり甲斐があるね。
今の閣僚の中では一番何か起こりそうだ。
ほんとに相変わらずだなお前は。
でも俺は…あの人の事は守れないかもしれない。
守れない?ああ。
守れないってお前それSPとしてどうなのよ?…そうだな。
神戸。
俺はSPには向いていないのかもしれない。
だってSPってお前の希望の部署だったんだろう?そうだったんだけどなぁ…。
(エレベーターの到着音)また今度ゆっくりな。
ああ。
それから暫くして土方が辞めたと聞きました。
そうでしたか…。
まあそういうふうに言ってたんで逃げたと言われてもある意味納得はできるんですけどね…。
SPと民間の身辺警護って何か違いがあるんですか?違い?ええだって人を守るというお仕事が向いてないと思ってたのにまたそういうお仕事についたんですよね?ああそれは…多分つぶしがきかなかったんじゃないのかな。
ふーん色々大変なんですね。
もっともあいつが死んでしまった今となっては確かめようもないんだけどね。
(オペレーター)55番了解しました。
13番そのまま待機でお願いします。
(新見)土方は優秀でしたが仕事を選ぶところがありましてね。
仕事を選ぶ?それは対象者を選ぶという事ですか?まあそういう事になりますかね。
依頼があって先方とじっくり話をするのが土方のやり方なんですがそれで…。
受けない事もあると。
ええ。
えっまさか危険な仕事を受けないっていうんじゃ…。
いえ…。
前に土方本人が話してたのは対象者とお互いに信頼できる関係になれるかどうかというような事でした。
信頼できる関係…。
ところで警備報告書を拝見する事は可能でしょうか?すみません。
土方は泊さんの警護に関しては報告書は逐一上げていなかったので…。
おや報告書を出していなかったのですか?はい。
まあ特に異状のない時は報告書はあとでまとめて上げる事も多いので。
なるほど。
泊さんは会社の研究室にこもりっきりという事でしたから会社と泊まっていた南急ホテルの往復だけだったので。
なるほどそうですか。
土方さんのデスク拝見してもよろしいでしょうか?ええ構いませんよ。
あっ。
どうしました?これを…。
「日本丸」日本丸というのは確か泊さんに援助をしていたNPO法人でしたねぇ。
でもどうしてこれを土方が?
(三橋卓也)代表を務める三橋です。
警視庁特命係の杉下と申します。
同じく神戸です。
どうぞ。
それで警察の方がなんでしょうか?神戸くん。
はい。
同じようですよ。
ええ。
あの…。
あっこれは失礼。
あなたのこの名刺を土方さんという方が持っていたのですが…。
土方?ええその土方さんは以前あなたが援助なさっていた泊さんの警護を担当していました。
ああ…。
その彼がどうしてあなたの名刺を持っていたのかお伺いできればと思いまして。
そう言われましてもその土方さんという人物には全く心当たりありませんね。
泊さんとももう随分お会いしていませんし。
そうですか。
こちらのNPOの活動目的をお聞かせ願えますか?うちは日本が豊かでかつ美しい国であり続けるそういう未来の実現を目的としています。
具体的にはどのような活動を?やはりそのためには環境問題っていうのは避けて通れないものだと思うんですが一般の方々の問題意識を高める啓発運動や将来必ず役立つであろう技術の開発の手助けなどもさせて頂いています。
なるほど。
泊さんへの援助もその一環だったわけですか。
ええ。
その泊さんへの援助ですが今はやめてらっしゃいますね?うん今はね。
やめてしまったのには何か理由でもあったのでしょうか?単に契約期間の問題ですよ。
最初に取り決めた期限が来たものですから。
そうですかそうですか。
その泊さんが襲撃を受けた。
その事実はご存じですよね?はい。
ニュースで見ましたから。
実はあなた方が援助していた研究に成果が出たようなんですよ。
そうですか。
そいつは素晴らしいですね!素晴らしい研究成果は我々が関わっていようがいまいが喜ばしい事ですからね。
三橋の名刺を土方さんが持ってたんですか?ええ。
何かご存じないかと思いまして。
いえ…。
そうですか。
その三橋さんにもお会いしてきたのですがあなたの研究の成功をとても喜んでましたよ。
喜ぶ…?あの男が喜ぶなんてそんなわけはありませんよ。
え?日本丸はNPO法人なのに結局は金が目当ての団体なんですよ。
三橋が六本木で飲み歩いてるとかそんな話を聞かされてちょっと距離を置いた方がいいと思って私の方から断ったんです。
そうだったんですか。
三橋さんの話と違いますよね。
そのようですねぇ。
それで泊さん。
事件のあった日何かいつもと違った事はありませんでしたか?いつもと違う事…。
ええ。
いいえ特には。
会社の防犯カメラを調べたらあの日は通勤経路に違いがあったようなんですけど。
え…?ああ…それは道が混んでいたので抜け道を使ったんです。
抜け道。
こちらのマフラーおろしたてのようですねぇ。
え?マフラーは事件の日の朝からなさってますよね?それと土方さんがバッジを外していた事通勤経路がいつもと違う事を併せて考えると事件の日の朝はどこかに寄ってらしたのではないかと想像してしまうのですが。
いいえそんな事は…。
泊さん。
本当の事を話してもらえませんか?あの日は娘に会いに…。
娘さん?ええ。
離婚して女房の方で引き取ったんですけどその娘が海外に行く事になりましてそれで彼女が泊まっているホテルに…。
はい。
体に気をつけてね。
ゆみここそ。
見送りですか?土方さんとは個人的な話もしていましたから。
娘さんが海外留学…。
ええ明日の飛行機なんです。
見送りには?別れた女房に会うのはやめてくれって言われてしまってるんで。
それに今は私も普通の状況じゃありませんし。
余計な場所に出向くのも土方さんの迷惑に…。
いやそんな事は考えないでください。
泊さんあなたはどうしたいんですか?え?泊さんのご判断で構いませんよ。
そういう事だったんですね。
すいません。
娘に会いに行った事が別れた女房に知れるかもしれないと思い言えませんでした。
そのマフラーは娘からのプレゼントです。
そうでしたか。
警察だってそういった事情があれば配慮しますよ。
でも土方はどうしてバッジを…。
警護がついてるなんてわかったら娘が心配するだろうからって…。
気を使ったんだ。
ええ。
刑事さんは土方さんに何かあるかと疑ってるのかもしれませんが土方さんは素晴らしいボディーガードでしたよ。
どうしてそう言えるのでしょう?土方さんはもともとは警察でSPをされてたんですよね?ええ。
優秀なSPだって事は素人の私でもわかりました。
尾行されたようです。
え?恐らく泊さんが泊まっているホテルを突き止めるのが目的でしょう。
少し回り道をしてまきます。
はい。
尾行はまいていたんですがそれでもホテルに不審人物がいたらしくてホテルを変えてくれたんです。
ホテルを変えた?ええ。
南急ホテルからホテルアベニールに。
泊さん。
そのホテルを変えたのはいつの日の事でしょう?それは2月28日です。
2月27日泊さんがホテルを変える前日の映像ですね。
ええ。
何かがあったんだとすれば…。
あっこいつ…。
これ日本丸にいた…。
土方が泊さんに言ったホテルにいた不審な人物ってこいつの事でしょうか?恐らくそうでしょう。
明らかに泊さんと土方さんをマークしています。
土方さんは気づいたのでしょうねぇ。
ん?この日本丸っていうNPO法人にやたらと寄付が多いな。
NPO法人に寄付…。
NPOを利用した脱税か?あっ!日本丸って確か狙われた泊さんがかつて援助を受けていたNPO法人ですよ。
つながったな。
さっきの話泊さんの研究への援助は契約の期限切れではなく泊さんの方から断ったそうじゃないですか。
ああ…そうだったかな。
随分前の話なんで記憶がね。
勘違いですよ。
へえそうですか。
(ノック)
(富田)失礼します。
お邪魔しま…。
(ため息)なんで先に来ちゃってんだろう?警部殿困りますね。
捜査の邪魔です。
これは失礼。
しかしあなた方はグローバルエネルギーの方を洗っていたのではありませんか?ええ。
まあそうなんですけど。
グローバルエネルギーからこのNPO法人に尋常じゃない額の寄付がされていたんですよ。
おやどういう事でしょう?
(三橋)それはグローバルエネルギーさんが我々の理念に大いに賛同頂いているからですよ。
なるほど。
グローバルエネルギーとこちらはつながっていましたか。
となるとおや三橋さん。
土方さんがあなたの名刺を持っていた事も見過ごすわけにはいきませんねぇ。
は?土方さんこいつの…こちらの名刺を持っていた?なんすか?それ。
警部殿そういう重要情報はこちらに上げてもらえますか?失礼。
今後気をつけます。
あの…どういう事ですか?それは。
さあ一体なんの事だか…。
それから…。
泊さんが泊まっていたホテルにあなたいらっしゃいましたねぇ。
泊さんと土方さんの様子を探ってましたよねぇ?あっこれもお知らせしておけばよかったですねぇ。
(伊丹のせき払い)あんたがやらせたのか?うちはただグローバルエネルギーの志村社長に…。
前にお前のところが金出してた泊ってのなどうも動きがあるみたいだぞ。
動きですか?ああ。
ボディーガードがついてるってちょっとした噂になってる。
その研究になんらかの進展があったんじゃないのかってな。
わかりました。
ちょっと当たってみましょうか。
(三橋の声)それでとりあえずあのボディーガードに接触してみたんですよ。
あっすみません。
こちらは個人の身辺警護も請け負ってもらえるんですよね?ええ。
あの私こういう者なんですが事情がありまして警護をお願いしたいなと考えてるんですけど。
そうですか。
では中でどういうご事情か詳しくお話を伺いましょう。
どうぞ。
あいや…えっと…また改めてお邪魔します。
それじゃ。
こりゃあダメだなって。
買収は諦めました。
それで土方さんがあんたの名刺を持っていたってわけか。
とにかくうちはもともと研究がどうなっているのか探ろうとしただけなんですよ。
だからあの事件とは関係ありませんからね。
ケッ。
どうだか…。
土方さんではダメだと思って別の人間を買収しましたか。
何言ってるんですか。
ではなぜ彼が泊さんのホテルを知っていたのでしょう?当然イージス警備から仕入れた情報ですよね?記憶にございません。
なんだ?それ。
てめえふざけた事言ってねえで知ってる事全部吐いちまえ!記憶にございません。
(伊丹)ふざけてんのか?お前。
泊さんの話によると土方さんは不審な人物の尾行に気づきうまくまいたそうです。
ところがまいたはずの不審な人物が今度はホテルに現れた。
そこで会社から情報が漏れていると気づいたようです。
そんな…。
だから土方はホテルを変えた。
でもあなた土方からホテルを変えるって報告受けてないですよね?会社と泊まっていた南急ホテルの往復だけだったので。
つまり日本丸の三橋さんに情報を流していたのは新見さんあなただという事ですよ。
三橋から聞いたよ。
あんたに金を掴ませて警備報告書を見せてもらったってね。
警備報告書はあったにも関わらず我々に隠したのは不正をしているという後ろめたさからでしょうかねぇ。
すみませんでした!見せただけです。
それがまさかこんな事になるなんて…。
言い訳はいいからさっさと警備報告書を見せて。
なにとぞ穏便に…穏便に…!お願い致します!すぐに持って参りますので!泊さんは2月21日にアメリカ大使館に足を運んでいるようですねぇ。
アメリカ大使館?なんの用だったのでしょう。
ええ…。
しかし土方は上司も信用できないたった一人の状況で泊さんを警護していたんですね。
ええ。
とてもSPが怖くて辞めたとは思えませんねぇ。
おい宮里。
(宮里)はい。
確かに土方さんはSPの仕事が怖くなって辞めたわけじゃありません。
それは?
(宮里)自分たちが箕島大臣の警護の任務についている時でした…。
もしもし土方さんですか?マル対が勝手に保護下を離脱しました。
(土方)「まかれただと!?お前何やってんだよ!」すいません。
「とにかく捜せ」「俺もすぐそっちに行く」はい。
土方さんは先着警護で既に大臣の自宅にいました。
大臣はちょっと気分が悪いと言って車を止めさせて外に。
それで…。
まかれてしまった。
まさかまくとは思ってもいませんでしたので。
大臣はどうしてそんな事を?あとでわかったんですが愛人に会いにいったんです。
愛人かよ…。
ええ。
(土方)俺たちが愛人の事どこかに暴露するわけないのにな。
ええ。
宮里…俺にはあの大臣の警護はできない。
えっ?
(宮里の声)それで土方さんは箕島大臣の警護からはずしてほしいと上に申し出たんです。
えっ…じゃあどうして怖くなって辞めたって話に?それは…土方さんが本当の理由を話さなかったからです。
本当の理由?土方さんが警護できないと言った本当の理由は自分たちを…SPを欺くような大臣の警護はできないと思ったからなんです。
箕島大臣が実際襲われるかもしれないと思ったからでももちろんまかれた事に腹を立てたわけでもありません。
確かに信頼関係を築けなければマル対を守る事はできませんからね。
ええ。
でもそれならちゃんと理由を言えばよかったんじゃないの?多分それが土方さんの哲学だったんだと思います。
自分は警護中に知ったマル対の秘密は話さない。
たとえそれが警察内部であっても。
土方さんには本当に申し訳なかったと思っています。
自分は隠したかったんです大臣にまかれた事を。
だから土方さんが辞めて怖くて辞めたんだって噂になっても何も言い出せませんでした。
土方は自分を信頼し自分も信頼できるマル対を守る警護員だった。
ええ。
あいつ本当に逃げたんでしょうか?もう一度防犯カメラを確認してみましょう。
(操作音)
(操作音)土方さんは横を向いて走り出していますねぇ。
ええこっちの逃げる方向ですよね。
僕たちは大事な事を見落としていました。
えっ?神戸くん。
はい。
狙撃地点から現場まで距離にして300メートルです。
300メートル…。
あっ!ええ恐らくそれでしょう。
(角田)おい聞いた?例の泊って人。
なんですか?研究やめちゃうみたいだよ。
さっきニュースで言ってた。
研究をやめる…。
ああ。
なんだかすげえ研究だったんだろ?もったいない気もするけどまああれか命狙われたんじゃしょうがねえか。
命って…。
なんだよ!?泊さん。
刑事さん!あとは我々が。
はっ。
今日から復帰ですか?ええ。
研究を断念なさると聞きました。
残念ですねぇ。
ええまあ。
やはり命には代えられませんから。
そうですか。
事件について重大な事がわかったというのは?お呼び立てして申し訳ありません。
いえ。
それで?その前に泊さん改めて伺います。
土方さんが逃げたと思ったのはどうしてですか?それは土方さんが撃ってきた方向とは別の方向に走り出したんで…。
なるほど。
1発目の弾丸はここから300メートル離れたあのビルの屋上から発射され社屋のあの位置に着弾しています。
つまり弾丸はこの辺りを通過したという事です。
使用されたライフルの弾丸速度は秒速342メートルの音速よりも速いんです。
従って300メートルを超えた狙撃の場合銃声よりもわずかに早く弾丸の方が先にここに到達します。
ええ。
その弾丸は空気を切り裂き専門用語で銃衝撃音というものを発生させます。
そして弾丸は音速より速いためにその銃衝撃音の方が銃声よりも先にあなたと土方さんにええ聞こえていたはずなんですよ。
そんな事が起こってたんですか。
コンマ何秒というわずかの差です。
そして恐らく土方さんはその音に反応したんです。
社屋に向かって歩いていた土方さんには銃衝撃音はこちらから聞こえてきました。
ですから…。
そう反射的にこちら側に走ったんです。
(銃衝撃音)こうした銃衝撃音による狙撃場所の誤認は訓練されたSPやシークレットサービスでも起きる事です。
訓練されているがゆえに反応してしまう。
つまり土方さんが走ったのは逃げたのではなかったという事ですよ。
えっ?泊さん土方のあの行動は…。
あなたを守るためのものだったんです。
そうだったんですか…。
しかしあなたは「逃げた」とおっしゃいました。
あなたはどうして土方さんが逃げたと思ったのですか?いやだからそれは撃ってきた方向と…。
土方でさえわからなかった狙撃場所があなたに特定できたとは思えません。
泊さんあなたが土方さんが逃げたと思ったのはどこから狙撃されるのかあらかじめ知っていたからではありませんか?つまり今回の狙撃事件は狂言だったという事ですよ。
狂言だって!?一体なんのために?我々は研究を断念するまで追い込まれたんですよ?ええですからそれが目的だったんですよ。
はぁ?命を狙われるような危険な目に遭った。
だからもう研究は続けられない。
そう申し開きができるようにするためでしょう。
バカバカしい。
恐らく成果の上がる気配のない研究を成果が出てから中止にしたと見せかけるためです。
成果が上がる気配がないって一体何を証拠に?泊さんあなた襲撃される以前にアメリカ大使館に足を運んでますよね?調べたんですよ。
目的は就労ビザを取得するためでしたね。
いやそれは…。
おかしいじゃありませんか。
今まさに警護までつけて研究を完成させようとしている人間が一方ではアメリカでの仕事の準備を続けている。
つまりこちらでの研究は最初から中止にする計画だった。
そういう事ですよね?泊さん!そのとおりです。
おい泊…。
(伊丹)鷲尾所長。
あなた研究を利用して会社の金を着服してましたね?本社の経理で帳簿を全て確認させてもらったんですよ。
わざわざ裏取りの仕事を回して頂きありがとうございました。
どういたしまして。
あなたが着服していたからこそこの研究には多額の費用がかかってしまっていたのでしょう。
しかし成果は一向に上がらない。
あなたは研究所の所長として責任を取らされてしまう事になる。
だから研究をなんとしてもたたんでしまいたかった。
しかし「できませんでした。
やめます」では本社の人間を納得させる事はできない。
そこで思いついたのが今回の狂言です。
泊さんも巻き込んであなたが着服した金を損金として葬り去るつもりだったんですね。
あなたのつまらない計画で罪のない1人の人間が命を落としたんですよ。
人が…人が死ぬような計画じゃなかったんです…。
腕のいいスナイパーを雇ったはずだったのに…。
明日の出勤の時にやるからな。
はい…。
スナイパーはこのビルの屋上から狙う。
スナイパーの腕は間違いない。
だから下手に動くなよ。
逃げたりすれば逆に危ないからな。
わかりました。
スナイパーも特定できてますよ。
(SAT隊員)動くな!動くな!
(銃声)一つわからない事があります。
土方さんはあなたの嘘に気づいていなかったのでしょうかねぇ?土方さんは気づいていたかもしれません。
それは?私はこの計画が始まってから所長への不信感が芽生え始めました。
所長ホテルに不審人物がいたそうなんですがそれも所長が?いや。
(泊の声)もしかしたら所長に裏切られてるのかもしれない。
そして本当に撃たれるんじゃないか…。
(泊の声)そんな疑心暗鬼にかられていた私は…。
泊さん…自分に何か隠してる事ありませんか?えっ…?自分はあなたを本当に信じていいんですね?ええ。
土方さん私を守ってください。
(土方)わかりました。
あなたは心からおびえていた。
だから土方さんは警護を続けたんですね?そういう事か…。
取り返しのつかない事を…。
さあじゃあ詳しい話は場所を変えて聞かせてもらおうか。
さあ…。
さあ行きましょう。
どうも。
どうも。
(幸子)じゃあ土方さんという方はSPのお仕事が怖くなって警察を辞めたわけではなかったんですね。
うん…。
それならなおさら残念ですね。
命をかけて守ろうとしたものが結局はなかったわけですから…。
でも土方が最後まで優秀な警護員だったその事だけは忘れないでおこうかなって…。
それがいいですね。
そういえば杉下さんも体を張って私を守ってくださった事がありましたよね。
そんな事もありましたねぇ。
えっ何?その話聞いてないんですけど。
いいじゃありませんか。
もう過ぎた事です。
今度私がゆっくりお話しします。
お願いします。
ところで君も特命係に来てから体を張る事も増えたんじゃありませんか?ええそりゃもう。
杉下さんの下で身も心も張りっぱなしです。
人聞きの悪い事を言いますねぇ。
ハハハッ冗談ですよ。
冗談以外ないじゃありませんか。
そろそろお二人お茶漬けになさいますか?
(2人)お願いします。
わさびは多めで。
(2人)お願いします。
神戸くん。
はい。
あどうも。
2015/12/02(水) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
[終]相棒season10[再][解][字]
ある重要な研究をしている学者がスナイパーにライフルで狙われる!2発目の凶弾で彼のボディーガードが死んでしまう!右京(水谷豊)と尊(及川光博)がこの難事件に挑む!
詳細情報
◇出演者
【キャスト】
水谷豊、及川光博、鈴木杏樹
川原和久、大谷亮介、山中崇史、山西惇、六角精児
【ゲスト】
今井朋彦、合田雅吏、手塚とおる
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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