Q
仕事ができて熱血漢になってしまうA部長がいます。A部長は自分と仕事に対して厳しい分、部下に対しても非常に厳しい態度で接する傾向があります。そのため、若手の社員からは特に恐れられています。うつ発症の社員もいますのでどのように取り扱うのがいいでしょうか。
A
原則としてパワハラは仕事の範囲内で行われる限り適法です。パワハラというと誤解を与えますが、強烈な業務指導のことを意味します。しかしセクハラは原則犯罪ですから違法です。
厚生労働省がパワハラを定義し、公表しました。それによれば、以下のように定義しています。 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」 となっています。この定義では抽象的なのでわかりづらいです。まず部下を指導する立場にある人は以下の点が重要です。
1.叱咤激励する等、厳しく叱ることも部下を指導する上で時には必要であるが、その場合も暴言はしてはいけません。言葉を選び、少なくとも「給料泥棒」等人格を非難する言動は避けてください。言うとしたら、計画を達成していないので、君は労働契約上の債務不履行である。賞与の査定は相当厳しいものになると背告げることです。
2.部下に対して注意・非難する場合でも、できる限り人前で注意・非難しない等、しつこい非難を避けます。ただし年度当初に目標達成しなかったときや、ミスした時には人前で叱る事前に告知しておくことです。その約束に従って堂々と人前で叱ってください。 精神的打撃も時には必要です。それで潰れるようなものは会社から追い出しましょう。
3.威圧的な行為は避ける・・・暴力はアウトです。「ダメではないか」「営業目標を必ず達成しろ」と命令形で言うのは一向にかまいません。
4.明らかに実現不可能な業務や無駄な仕事の強要を行わない。能力の130の仕事を与え、結果を出させるように日ごろからこまめに注意すること
5.追放したい部下には、徹底したノルマを与えて厳しく指導することです。公平に扱うことは部下の能力を殺すことになるのです。
6.部下に対して、私的な話を聞いたりしたりしてはいけない。仕事が終わったら飲みに行ってもいけない。付き合いは減速しないことです。上司と部下は仕事の役職の差にすぎないのです。ペタッとした人間関係は無用です。
パワハラに該当する場合、行為者(加害者)の責任として、民事上の責任について、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)がある。他方、刑事上の責任について、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)などに該当する可能性があります。
また、会社の責任を追及される可能性も高い。すなわち、従業員が業務遂行について不法行為を行ったときに負う使用者責任(民法715条)、代表者の行為についての損害賠償責任(会社法350条)、会社自身の不法行為責任(民法709条)、安全配慮義務違反・職場環境配慮義務違反という契約上の配慮義務違反に基づく損害賠償責任(労働契約法5条、民法415条)である。 さらに、精神障害等を引き起こした場合には、労災補償制度の対象になるというリスクもあります。
ですから顧問社労士と相談の上、正しいパワハラを行ってください。