(テーマ音楽)北海道の南日高地方。
太平洋へと注ぐニカンベツ川です。
河口から少し遡るとそこから先は手付かずの清流です。
サケが放流ではなく自然に産卵する北海道でも数少ない川です。
太古からここでいくつもの世代をつないできました。
サケは水辺の生き物たちの命を支えています。
深まる秋北国の清流に繰り広げられる命の営みを見つめます。
北海道の襟裳岬からおよそ20キロ。
太平洋へと注ぐニカンベツ川です。
全長10キロほどの短い川です。
秋が深まる10月中旬。
河口近くに大きな魚の群れがいました。
サケです。
体長およそ70センチ。
4年北太平洋で回遊し産卵のために帰ってきました。
ニカンベツ川では人の手によるふ化や放流が行われておらずサケ本来の行動が見られます。
遡上を阻む人工物も一切ありません。
産卵場所を求めて今年もサケの群れが川を遡っています。
ニカンベツ川はサケだけでなくさまざまな魚が暮らす上で絶好の環境が整っています。
川の上流まで遡ると大きな石がゴロゴロと転がっています。
ダムがないため川上から押し流されてきました。
大きな石は速い流れを生み出しその下流に深いよどみをつくります。
そこは流れが緩やかで多くの魚の住みかとなっています。
白い斑点の…体長20センチほど。
サケの仲間です。
多くは海に下りますがここで一生を過ごすものもいます。
森からの湧き水が流れ込むため夏冷たく冬は凍らない最適な住みかです。
一回り小さい魚はヤマメです。
こちらもサケの仲間で美しい姿形から「清流の女王」と呼ばれています。
他にもハナカジカやフクドジョウなど渓流にしか住めない魚が多くいる北海道でも有数の川です。
10月下旬。
河口から僅か3キロほどの中流部です。
下流にいたサケが遡上し繁殖の季節を迎えていました。
サケの群れは長さ150メートルほどの限られた範囲にいます。
普通サケは上流まで遡上しますがここでは海からあまり離れていない中流部で産卵します。
一匹のメスが尾びれで川底を掘り始めました。
卵を産みつけるためのくぼみをつくっているのです。
手前にいるのはオス。
どうやら2匹はペアのようです。
なぜニカンベツ川では川の上流部ではなく中流部のこの場所で産卵が見られるのでしょうか。
川底を見てみると大きさ2〜3センチの小石が広がっています。
サケが卵を産みつけるのに適した大きさです。
ダムがない事で大きな石だけでなくこうした小石も流れてきます。
水が泡立つ事で卵の成長に欠かせない酸素を豊富に含んでいます。
こうした条件が重なった事でニカンベツ川では河口から3キロの中流部でサケの産卵が行われるのです。
先ほどのサケです。
メスの手前鼻先が曲がっているのがオスです。
オスは体を震わせてメスに産卵を促します。
メスは尾びれで川底の同じ場所を掘り続け卵を産むくぼみを仕上げます。
おや?オスが尾びれを川底にたたきつけました。
まるでくぼみを埋め戻すかのような動作です。
メスの方も掘るのをやめてしまいました。
するとオスは別のオスと激しい争いを始めました。
実はくぼみを埋め戻すしぐさは他のオスを追い払いに行く間産卵するのを待たせるためだったのです。
争う事10分。
ようやく他のオスを追い払う事ができました。
オスが戻ってくるとメスは再び尾びれで川底を掘り始めます。
メスは半日ほどかけて卵を産みつけるくぼみを丁寧に仕上げていきます。
水辺では別の生き物も繁殖の準備を始めています。
体長20センチほどのカワガラスです。
水に潜り獲物となる水生昆虫を取って暮らします。
これから卵を産みますがその前に縄張りを確保します。
次世代を残すための争いです。
一方あのサケはいよいよ産卵の時が近づいてきました。
しかし思わぬ外敵が忍び寄ります。
メスの後ろをぴったりマークするように泳ぐ小さな魚。
上流にいたアメマスです。
メスのサケのおなかの辺りをウロチョロしています。
アメマスはサケの卵を狙いにきたのです。
オスのサケは大切な卵を食べられないようにとアメマスを追い払います。
しかしアメマスも栄養が豊富な卵を簡単には諦めません。
メスのサケも突進。
ようやく追い払う事ができました。
それから1時間。
メスが川底におなかを近づけたその時…。
卵を産みました。
メスは2〜3回に分けておよそ3,000個の卵を産みます。
そして命をつなぐ営みを終えると息絶えます。
そのすぐ近くの場所にあのカワガラスがやって来ました。
水中に潜り何かをくわえました。
サケの卵です。
川底に産み落とされた卵はこれから繁殖を迎えるカワガラスにとって貴重な食料です。
しかし卵は川底の小石に守られているため全て食べられる事はありません。
11月。
北国に冬の足音が近づいてきました。
ニカンベツ川の河口です。
その川岸。
中流で命を終えたサケが流れ着いています。
サケの体は無駄になる事はなく北国の冬を生きる生き物たちの貴重な栄養となります。
ニカンベツ川で繰り返されてきた命のサイクルです。
サケが産卵をしていた川の中流部。
サケもほとんど姿を消しひっそりと静まり返っています。
川底にサケの卵がありました。
静かにふ化の時を待ちます。
冬卵からかえった稚魚は春の終わりに海へと旅立ちます。
北海道ニカンベツ川。
北国に残された手付かずの清流が太古から続くサケの営みを支えていました。
2015/11/30(月) 15:41〜15:55
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「北海道 ニカンベツ川」[字]
襟裳岬の北西、太平洋に注ぐニカンベツ川。放流が行われていないため、野生本来のサケの行動が見られる数少ない川だ。産卵期の秋、サケたちは激しい闘争劇を繰り広げる。
詳細情報
番組内容
襟裳岬の北西20キロメートルの海岸で太平洋に注ぐニカンベツ川。深まる秋とともに海からサケが大挙して現れる。放流事業が行われていないため、ここではサケたちの野生本来の姿が見られ、メスを巡ってオス同士が水しぶきをあげて争ったり、産卵場所を奪い合ったり、激しい闘争が繰り広げられる。その産卵場所は、意外にも河口からわずか3キロの下流部。なぜニカンベツ川ではサケが上流まで遡らないのか?その不思議を追う。
出演者
【語り】羽隅将一
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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