Column[ 読みもの ]
玉村豊男ブログ『ワインバレーを見渡して』
2015年08月03日
田んぼの石垣
日本のどこの田舎に行っても、目の前の一面に広がる田んぼを指差しながら、地元の農家は口を揃えて「そのうちこの半分はなくなるよ」と言います。20年後と言わず、10年後でも、そのくらいに減っているかもしれません。では、使われなくなった水田はどうなるのでしょうか。
「スマート・テロワール」(美しく強靭な農村自給圏)を提唱するカルビー元社長の松尾雅彦氏は、水田の跡地は石垣を取っ払ってなだらかな畑か放牧地にするべきだ、と主張しています。「日本で最も美しい村連合」のリーダーのひとりでもある松尾氏は、この春に何度も長野県を訪れ、ワインぶどうの畑を広げることで田んぼの石垣を壊せないか、と私に問いかけました。このままでは下から斜面を見上げると石垣と雑草しか見えなくなる。なだらかな広い丘陵にワインぶどうの樹列が並べばどんなに美しいか。
ヴィラデストでも一部の畑は水田の跡地を借りてつくっています。水田だった土地は脇に水路があったり地下の水位が高かったりして、湿気を嫌うブドウには難しいことも多いのですが、それでも排水管を設けるなどすれば十分ブドウ畑として使えます。が、やはり石垣による段差が問題で、地主さんが壊すことを望まないので、平らな田んぼの跡の畑をひとつひとつ、トラクターが出たり入ったりしながら耕しています。もし石垣を壊すことができれば、1枚の大きな面積の畑として、能率もよく、見た目も美しく、気持ちよく仕事ができるので、松尾さんの構想には大賛成なのですが……。
松尾さんからは、「日本の田んぼの石垣を壊すのがぼくのライフワークだ。いっしょに戦線を組みましょう」と誘われているのですが、これって、誰に頼んで何をどうすればよいのか、いまのところ私にはよいアイデアが浮かびません。