1. Public Image Limited – Public Image
ポストパンクはここから始まった。パンクの王様が次なるシーンも作ったんだから、今考えると凄いことだった。でも、当時は「こんなもんか」という感じだった。噂が先行していたから、とんでもないもんが聴けると思ってましたからね。セックス・ピストルズを辞めたジョン・ライドンは、ジャマイカにレゲエ・アーティストのスカウトに行ったりしてたし、もっとダビーな感じになると思ってたんですかね。なんだったんでしょう。とにかく妄想が凄い時代でした。
しかし、今聴くとかっこいいすね。ジョン・ライドンのヴォーカルが一番レゲエです。イーク・ア・マウスのようです。この時にイーク・ア・マウスがもういたのか謎です。ジョン・ライドンの方が先のような気がします。ジョン・ライドン鋭いです。とにかくキース・レヴィンのトレブリーなギターがかっこいいす。
2. XTC – Meccanik Dancing (Oh We Go!)
日本の良心的音楽ファンから一目置かれるXTCですが、当時2大ポストパンクといえばパブリック・イメージ・リミテッドとこのXTCでした。「えっー」という感じですが、XTCのアンディ・パートリッジが言っているので間違いないでしょう。「そうなん?」と僕も叫んでしまいそうですが、僕もXTCが大好きだったということでそうなんでしょう。ブロック・パーティーなどの第2次ポストパンク評価ブームの時に一番お手本とされたのはXTCです。そういうことなんしょう。
ジャケットもかっこいいですね。ポストパンクがまさにポストモダンだと言っているかのようです。でも、これヒプノシス(超有名デザイナー・チーム)が冗談で作っていたのを、アンディ・パートリッジが「これがいい」と選んだ作品です。パンクな作品をヒッピーなデザイナー・チームが作っていたのかと僕は衝撃を覚えたのですが、そんなもんでしょう。セックス・ピストルズのゲイな感じのチラシもヒプノシスが作っていたのですから。作っていたのは、後にスロッピング・グリッスルとなるピーター・クリストファーソンです。
3. Gang Of Four – To Hell With Poverty
XTCと並んでイギリスの第2次ポスト・パンク・バンドに一番影響を与えたのがこのギャング・オブ・フォーです。今これ聴くとキース・レヴィンと同じギターですね。元々はドクター・フィールグッド的なバンドだったのがこんな風になったと聞いてますが、その説もよく分かります。
ポストパンクとは何か、とにかくみんなファンクというかファンキーなものをやりだしたのです。そうじゃない人もいますけど。パンクが自分たちのアイデンティを探すために、ロックのルーツであるブラックミュージックを排除しながら、自分たちのビートを探す音楽だったので、その反発からいろんな融合が生まれたんだと思います。昔に戻ったといえば昔に戻ったということですがね。さすがポストですね。
4. Wire – I Am The Fly
第1次と第2次ポスト・パンクに多大な影響を与えたバンドはワイヤーでしょう。エラスティカがこれをやった時はワイヤーがポップスになるんだとびっくりしました。ギターにディレイをオーヴァー・ロードさせたエフェクタ一発ネタ、「こんなのアナログ・ディレイを買った時にまずやる遊びでしょ」とつっこんでしまいますが、なんでこうも惹きつけられるんでしょうね。シド・バレットなサイケなメロディもいいですよね。ワイヤーはサイケな感じがいいです。
5. Siouxsie & The Banshees – Metal Postcard
ゴスの女王のイメージが強いので、誰もスージー・アンド・ザ・バンシーズのポスト・パンク的な部分を評価しないですが、パブリック・イメージ・リミテッドよりも先にポスト・パンクをやったのはスージー・アンド・ザ・バンシーズです。元がシド・ヴィシャスがドラムをやっていて、ジョン・ライドンが命名したフラワー・オブ・ロマンスというバンドだったから、当たり前のことなのかもしれないですが。
このスージー・アンド・ザ・バンシーズのヨーロッパ回帰的なものがゴスになるわけですが、まっ、そういう意味でもポストですよね。女性は鋭いということですね。このギターもかっこいいすね。ジョン・マクガフ時代よりも僕はジョン・マッケイのギターの方が好きです。
6. The Slits – Typical Girls
女性が鋭いということでは、やはりこの人たちが一番でしょう。クラッシュのメンバーの彼女がやっていたバンドから“歴史に残るバンド”に。そして、凄すぎて、誰も彼女らみたいなことを出来ません。今スリッツみたいなことをやったら絶対売れると思うんですけど。パンクからポスト・パンクという時代のエネルギーの凄さを体現したバンドだったんですかね。
7. The Raincoats – Fairytale In The Supermarket
レインコーツもそうですね。カート・コバーンのお気に入りバンドです。ライオット・ガールがポスト・パンク時の女性バンドのエネルギーというか思想というか、音楽を一番体現したと思うんですが、なんか違うんですよね。無垢な感じが足りないと思います。またこういう時代がやってくるんでしょうか?
8. The Fall – Totally Wired.
男のポスト・パンクな感じは今もやれますかね。このザ・フォールの感じを引き継いでいるガール・バンドがいます。
ザ・フォール、今思うとキャプテン・ビーフハートをパンクでやっているだけという感じもしないでもないですが、キャプテン・ビーフハート以上に現代の音楽に影響を与え続けてます。日本では誰もザ・フォールとキャプテン・ビーフハートの類似性を言わないですけど、キャプテン・ビーフハートをイギリスで推しまくったジョン・ピールの一番のお気に入りバンドがザ・フォールということも分かりますね。
9. Scritti Politti – The Sweetest Girl
日本だと音楽と政治は完全に切り離されてます。ポストパンクが好きという奴で、政治が好きな奴なんて一人もいないっしょ。言いすぎですかね。スクリッティ・ポリティがすごい政治的なバンドだったとか誰も知らないんじゃないですかね。すごい構造主義なバンドだったんですよ。構造主義も政治と思ってない人がほとんどなんじゃないですかね。思想ということなんでしょうね。
日本では学生運動の頃にしか考えなかった“権力の奪還”を、その後もずっと考え続けているんです。スクリッティ・ポリッティなんか、スピードやって何日も寝ずに権力の奪還について討論していたのです。そして美しい音楽を作っていたのです。そういう討論があったからこそ、こんな音楽が生まれたのです。
10. The Durutti Column – Sketch for summer
デュルッティ・コラムもそうです。この繊細な音楽の背景にはそんな背景があるんです。権力の奪還という思いがあったんです。デュルティ・コラムのヴィニ・ライリーがいたバンドってノーズブリード(鼻血)ですよ。鼻血は俺か。ヴィリー・ライリーが辞めた後ですが、ノーズブリードのヴォーカリストになったのはモリッシーです。モリッシーの歌詞に社会的リアリズムがあるのはそういうことなんです。で、今もそれは続いていると思いますよ。ピート・ドハーティーがいかがわしいアウトローを描くのもそういうことなのです。
イギリスの政治的硬直がパンクを生み、ヨーロッパが米ソ冷戦の戦場になるかもしれないという緊張がポスト・パンクを生んだとも言えるけど、ずっとつながっているものなのです。きっと今もつながっているんでしょう。
(久保憲司)