2015-12-02
■enchantMOON販売終了のお知らせ 
三年前、2012年の11月30日に我々はハードウェア事業への参入を発表しました。
そして現在も好評販売中のenchnatMOON S-IIですが、年内で販売を終了させていただくことが決定しました。
理由は、色々あります。
ひとつの理由は、手書き認識エンジンのMyScriptの開発ライセンス料が、年間契約であること。
これは販売を続けている限り払い続けなければなりません。
なんと驚くべきことに、未だにenchantMOONは月に何台か買っていただいているのですが、それでも一年間に販売して得られる利益よりもMyScriptの開発ライセンス料の方が高くなってきたので、販売を続ける限り赤字が出ることになります。
年内一杯は本体の販売を続けますし、来年以降もサポートや付属品(ペン、充電器など)の販売は継続しますが、一旦、enchantMOON S-IIは販売終了とさせていただきます。
つまりこのデザインの筐体は今月限りで販売終了になります。
- 出版社/メーカー: Ubiquitous Entertainment Inc.(UEI)
- メディア: Personal Computers
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本来、販売終了を宣言するとそれはもう価値が無いということになり、廃棄処分をしなければなりません。
つまり、埋めるか破壊するかして、廃棄証明書を発行してもらうしかないのです。
しかし、enchantMOONは僕たちが文字通り、血と汗を流しながら、いろんなものを犠牲にして作った端末です。
僕にとっては我が子も同然のコンピュータを破壊するなど想像するだけでも辛いことです。
そこで価値がなくなった在庫に関してどうするか。
とはいってもまだ数百台あります。
このへんの数字の読み違いに関しては、まさしく我々がハードウェア事業、つまり製造業に初めて参入することから生じた食い違いです。
最初期に予約していただいた方も、度重なる出荷延期で失望してキャンセルしてそのままになってらっしゃるケースが少なくありませんでした。今でも時々、そういうお客様に会って「やっぱり買っておけばよかった、けど今更二年前の端末を買うのも・・・」とこぼされることもあります。
安売りすることも考えましたが、それはつい最近まで店頭でenchantMOONを売ってくださっていた(通常は二年前の端末を店頭で売るなど考えられないことです)ビックカメラさんなど販売パートナーさんたちに申し訳ないですし、定価で買っていただいたお客様にも申し訳ないことです。
苦肉の策として、enchantMOONを活用して頂けそうな学校や、地方自治体、そして普段はScratchを中心に教えてらっしゃる教育NPOなどにダメモトで寄付を申し出てみました。
私としてはせっかく製造した端末を破砕処分するよりは、少しでも使っていただける可能性のあるところに避難させたかったのです。
しかし普段はScratchを教えていたりすることから、きっと教育NPOの方々はenchantMOONに興味を示さないだろうと思っていました。
ところが蓋を開けて見ると、どの組織も二つ返事で寄付を受け入れてくれることになりました。
それどころか、一部のNPOはenchantMOONを使ったレクチャーを開始するために一度講義を受けたい、とまで申し出て下さいました。
特に品川女子学院には、一学年全員にひとり一台のenchantMOONが行き渡るようバルク品を含めた大規模な受け入れを承諾していただきました。実際、置く場所を確保するだけでも大変なので、寄贈といえど受け入れるのも決して楽ではないと思うのですが、品女には思い入れもあり、私としては非常に嬉しい事でした。
私自身、これまで何度もenchantMOONを使って、子供から大人まで、様々な形のプログラミング教育を実践してきました。
先日から四週間にわたってNHK文化センターで行っているプログラミング講座では、初めてiOS端末のみを用いてプログラミングを教えるということにも挑戦してみました。
しかし実際にはiOS端末だけで教えようとすると、かなり限界が低いところにあることにも気づきました。
まずOSのバージョンが揃わなかったり、アプリを購入できる状態になってなかったり、電波状況が悪かったりして、とにかく第一回の貴重な時間がそういう、本質とは無関係なところで浪費されてしまいました。
enchantMOONを使った教育の場合、電源を入れてもやれることは非常に限られているため、「充電を忘れた」「ペンの電池が切れてる」などのトラブル以外はスムーズに講義を進めることが出来ます。
そしてまた、短時間にプログラミングを教えるためには、自分で適当に書いた絵やインターネットから適当に拾ってきた写真などを簡単に自分のプログラムに取り込めるようにすることがモチベーションを維持させる上で大切になります。
今回、enchantMOONなしでプログラミングを教えてみて、改めて既存端末を用いたプログラミング教育の難しさ、ハードルの高さなどを実感しました。
特に子どもたちにとって、enchantMOONを使った教育プログラムは大きな効果を発揮するでしょう。
さて、販売を終了することに決めた理由はもうひとつあります。
次の展開、我々がS-IVBと呼ぶ段階がようやく見えてきたところです。
もともとenchantMOONの開発プロセスはアポロ計画になぞらえています。
アポロ計画で用いられたサターンV型ロケットは三段式で、第一段はS-IC、第二段はS-II、第三段はS-IVBと呼ばれていました。
いま発売しているenchantMOONは第二段階、つまりS-II段階にあり、最初の製品に比べてかなり高速化されました。
しかしいい加減、アーキテクチャ的には5年前のハードウェアですから、改良を続けるにも限界があります。
ペンとマルチタッチを分離できる端末がほとんど存在しなかった2012年から考えると、いまやiPad ProやMicrosoft Surfaceなど、ペンとマルチタッチを両方備えるマシンは当たり前のように存在していますし、高性能でありながら軽量かつバッテリーの心配もない端末がようやく出揃ってきました。
ならば、敢えて非力なAndroidベースの環境にこだわることなく、ゼロからハードウェアアーキテクチャを見直すことができる時期に来たと言えます。
むしろ我々は今再び、この世に問われているひとつの問いについて深く考えなくてはなりません。
それは、「なぜ今、敢えてハードウェアを作るのか」ということです。
たぶんこれは世界中のPCメーカーが問われている究極の問いとも言えるでしょう。
なぜなら、PCメーカーは構造的に儲からないようにできているからです。
周知のように、今のPC業界で儲かっているのはAppleとMicrosoftだけです。
AndroidだろうがWindowsだろうが、同じOSを搭載すれば、Microsoft以外のメーカーに待ち受けているのは、価格競争の潰し合いです。
独自性を打ち出すためにできることは限られています。
Windows95以来、PCメーカーは知らず知らずのうちにOSメーカーの言いなりになってきました。
メーカーの持つ裁量は大幅に削られ、今やPCの販売価格の30%をOSやオフィススイートのライセンス料として徴収され、メーカーの粗利率はわずか5%〜10%程度しかありません。
それでも、一度出来上がってしまった市場から撤退することほど難しいこともなく、世界中のPCメーカーはいわばリビングデッド(既に大きな成長は期待できないがかといって即死するわけでもない宙ぶらりな状態)から抜けだせないでいます。
だからこそソニーは昨年VAIOを切り離し、IBMは早々にPC事業を中国企業に売却したのです。今後もこうした流れは続くでしょう。あと数年もすれば、PC市場はMacとMicrosoft Surfaceと台湾メーカーのPCだけになってるかもしれません。そうなっても不思議はないのです。もはやPCメーカーはデザインや材質や低価格といったことでしか差別化ができないのですから。
さらには、2000年まではOSメーカーに徹していたMicrosoft自身がMicrosoft Surfaceというフラグシップマシンをつくり、またそれが売れてしまうことによって二重にPCメーカーを苦しめています。
では、我々は既存のプラットフォームで動くアプリケーションソフトウェアの開発にのみ集中すべきでしょうか。
もちろん、そんなことはあり得ません。
なぜなら、プロダクティビティ・アプリケーション分野で最も成功し、支配的地位にいるのが他でもないMicrosoftだからです。MicrosoftのOffice Suiteに対抗できるアプリケーションをたとえ開発したとしても、Microsoftと正面からぶつかったら勝負になりません。
事実、そのようにして国産であれだけの権勢を誇ったワードプロセッサは骨抜きにされていったのですから。
しかしまた同時にMicrosoftもまた構造的弱点を持っています。
それは、既存製品の延長線上からは逸脱できないという、巨大さ故の弱みです。
Microsoftの社内に常に複数のOSを研究するチームがあり、これまでにも数々の新しいコンセプトが産まれてきました。
例えばCourierです。
これはMicrosoft Researchで考えられた全く新しいコンセプトのOSでした。
そしてMicrosoftはこれほどのコンセプトを生み出しておきながら、自らドブに捨てているのです。
Courierのチームは失望し、アプリケーションソフトウェア企業を創りました。
皮肉にも、それが現在、iPad ProのキラーアプリのひとつであるPaperというアプリケーションです。
でもたったこれだけです。
Paperを開発するfifty-three社をMicrosoftやAppleのライバルだと思う人はどこにもいません。
かつてMicrosoftのライバルだったはずの一太郎を開発した浮川夫妻も、今はMetamojiというアプリケーションを開発するいちデベロッパーの地位に甘んじています。
全く新しいコンセプトを考えだしたとしても、それが既存プラットフォームのいちアプリケーションとして提供される限り、新しいコンピューティングのあり方を提案することはできても実際の力をもって実現することはできません。
世界中に何百万という開発者がいて、我々に許された未来は、Macか、Windowsか、Androidか、はたまたLinuxかという選択肢しかないのです。
我々はもっと自由に、新しいコンピュータの未来を夢想し、新しい時代を切り開くべく挑戦するべきではないでしょうか。
過去の偉人が示したアイデアやパラダイムにしがみつき、その壁を乗り越える勇気や情熱を失い、ただひたすら年に二回あるAppleの新製品発表を一喜一憂して見守るだけでは、自分たちの手で未来を切り開くことはできません。
実は昨日まで、私の会社、UEIの開発フロアの廊下には、アラン・ケイの論文や初代LisaやMacintosh、NeXTの紹介記事を貼りだしていました。しかしそれを全て撤去させることを私は命じました。
なぜなら、アラン・ケイの描いた世界観、スティーブ・ジョブズが死ぬまで追いかけ、ビル・ゲイツでさえもついに超えられなかった世界観を乗り超えなければ、未来はないからです。
東大の暦本先生、MITの石井先生、イリノイ大学のトーマス・デファンティ。
確かに新しいことをやっています。ずっとずっと先のことをやっています。
石井先生はアラン・ケイよりもむしろサザーランドを越えようとしているのでしょう。
暦本先生はもっと人間性そのものを拡張することに興味があるのでしょう。
トーマス・デファンティは、日本の一般の人にはあまり知られていませんが、スター・ウォーズエピソードIVのデススター破壊作戦のCGを作ったことで有名で、バーチャルリアリティの大家です。
それぞれの先生が研究されていることは確かに新しく、夢があるのですが、しかし同時に今のコンピューティングとのミッシングリンクを感じさせることは否めません。
ごく普通の家庭にCAVE(デファンティの代表作で、部屋を構成する天井、床、壁面が全てディスプレイになる没入型バーチャルリアリティ)が導入される未来がいまひとつ思い浮かびません。
石井先生のコンセプトが普及するには、人類が材料革命をあと何回か経験しないと無理でしょう。
僕は自分が生きているうちに世界が変わるところを見てみたい。
そのためには、あまりに突飛過ぎても、また平凡すぎてもダメなのです。
明日から使える、明日から使ってみたい、全く新しいコンピュータの世界とはどうあるべきか。
そこで再び、アラン・ケイの時代、1960年代に戻ってみましょう。
その頃はマイクロチップ誕生前夜です。
世界初のマイクロチップ、インテル4004が嶋正利らの手によって開発されたのは1971年ですから、アラン・ケイがパーソナルコンピュータを夢想していた1960年代には影も形もなかったことになります。
しかし半導体技術の進歩がアラン・ケイに大きなインスピレーションを与えたのは間違いないでしょう。
誰もが個人用コンピュータを持ち歩くのが夢のまた夢だった時代、コンピュータがどんどん小さく軽く安くなっていく時代の到来を予見した論文「すべての世代の子供達のためのパーソナルコンピュータ(A Personal Computer for Children of All Ages)」が発表されたのは1972年です。
そしてスティーブ・ジョブズがようやくAppleを法人化した1977年には、もう「Personal Dynamic Media」という論文を発表し、いま現在に至るまで世界中のコンピュータの目指すべき基準となっている、マルチウィンドウ、オブジェクト指向、ネットワークといった要素が盛り込まれていました。
逆に言うと世界は未だに40年前に示されたビジョンのまま、大きな進歩もなく、小さな改良や追加といった形でしか新しいコンピュータは作られてきませんでした。
そこでアラン・ケイの時代になかったものを考えてみます。
半導体技術の発展とマイクロチップの出現がアラン・ケイに大きなインスピレーションを与えたとしたら、今、我々は1960年代のアラン・ケイが想像し得なかった何を一体知っているでしょうか。つまり今、我々にとってマイクロチップと同様に新しいものとはなんでしょうか。
ひとつは、マイクロチップ自身をプログラミングできるというFPGAのようなものの出現です。
これはマイクロチップが出現したばかりの時代では想像しにくかったもののひとつでしょう。
もう一つは、例えばGPUです。もともとGPUという概念を発明したジム・クラークは、アラン・ケイとは兄弟弟子の関係にありました。クラークがシリコングラフィックスという会社を設立したのは、1982年のことです。
GPUの持つコンピューティングパワーは強大で、パソコンにスーパーコンピュータを遥かに凌ぐ性能を与えることを可能にしました。
そしてGPUが切り開いたのは、人工知能分野への応用です。
ディープラーニングは驚くべき成果を上げ続けています。
私が最近驚いたのは、リカレントニューラルネットワークによって写真を説明するAIです。
このビデオでは、ニューラルネットワークがリアルタイムに写っている情景を文章で説明しています。
私が驚いたのは、学習のさせ方です。
I'd like to train on my own data
No problem, create a json file in the exact same form as before:
[{ file_path: 'path/img.jpg', captions: ['a caption', ...] }, ...]
https://github.com/karpathy/neuraltalk2
なんと、学習用データセットの作り方は、「画像」と「この画像はこんな場面ですよ」と説明する文章のセットを用意するだけなのです。
これを通常の一般物体認識のニューラルネットワークの後ろにLSTMを付けたものに学習させるだけで、これだけの精度のAIが作れるというのです。
アラン・ケイがDynabookコンセプトを考案した1960年代から1970年代というのは、第一次AIブームが過ぎ去った頃です。ケイは特にAI研究者のシーモア・パパートと懇意にしていたので、AIについての期待と限界について良く知っていたのではないかと思います。だからこそ、彼が夢想するDynabookは、当時は深い失望感が漂っていたAIやそれに近い存在が全く登場しない、それによってむしろより現実的に感じられるコンセプトになっていったのではないかと思います。
もし、ケイの論文にAIへの言及があったら、それはとても虚しいものと感じられたでしょう。
なぜ、我々は、今、OSとハードウェアを両方作る必要があるのか。
ケイの時代にはなく、今の時代にはある道具が、沢山あるからです。
ここでもう一度、我々はコンピュータとは何か、それはどうなっていくべきか、一人ひとりの思いを確認する必要があります。
私自身、今からちょうど、三年前、2012年の11月30日にenchantMOONの開発を表明してからずっと、いやひょっとするともっと昔から、その問いを何度となく自問自答してきました。
私は新しいものを創りだす時に必ず決めていることがあります。
それは、体験しながら考えるということです。
enchantMOONの最初のハードウェアは、まさに新しいコンピューティングとは何かということを、自ら体験しながら考えるためのマシンでした。
そして体験しながら改良を続け、今でも大勢のユーザーに愛用して頂いています。
先日、UEIの副社長である水野拓宏がとある地方自治体を訪問したとき、役所の方がenchantMOONを片手に現れ、大変驚いたそうです。
UEIの社内でも、私のセクションでは未だにenchantMOONで何ページにも渡って書かれたアイデアの端書が送られて来ます。
enchantMOONを個人的に購入し、毎日愛用している社員のenchantMOONは1000ページを超えました。
私が嬉しいのは、販売終了に伴って、enchantMOONが各種NPOに寄贈されることで、これからさらにenchantMOONを体験するユーザーが増えていくことです。コンピュータ・アーキテクトにとってこれ以上の歓びがあるでしょうか。
そして、次です。
これを踏まえて、次の段階にようやく進むことが出来ます。
アーキテクチャを全てゼロから見直し、今度はマニアのためだけのコンピュータではなく、あらゆる人のためのコンピュータをどのように作るべきか。
そこで、2016年1月30日に、ユーザーの皆様を一同に集め、新しい展開について説明するとともに、皆様の思い思いの理想のコンピュータ像を語っていただくささやかな会を企画させていただきました。
題して「enchantMOON Crew Meeting 2016」です。
今回はライトニングトークが主体のイベントで、FinalFantasy7の開発者で、現NVIDIAの橋本和幸さんや、ロボット用OSであるV-SIDOの開発元、アスラテックの今井大介さん、ラジオアナウンサーでenchantMOONの熱狂的なユーザーでもある吉田尚記さんなどなどを招いてそれぞれ思い思いの「未来のコンピュータ」について語っていただくという企画です。
このイベントの基調講演をどなたにお願いするのが最もふさわしいか。
これが今回、一番苦心した点です。
前回の苦い経験は、私自身が製造業ということに関してあまりに知らなすぎたからこそ起きたことでした。
それならば、製造業のプロ、コンピュータ作りのプロ中のプロに話を聞くことができたらどんなに素晴らしいことか、と考えました。
そこで、私は今回、20世紀で最も美しいコンピュータをデザインし、20世紀で最も素晴らしいユニーザーインターフェースを設計した、後藤禎祐さんにお話を聞きたいと思いました。
後藤禎祐さんはプレイステーション・シリーズのデザイナーとして有名な方です。
特にこの特徴的な形のコントローラをデザインしたことで知られています。
ゲーム機としてのプレイステーションのデザインは衝撃的で、CD-ROM搭載機であることを象徴する円形と、操縦桿のようなコントローラ、そして高性能であることを示す左右の放熱フィンなど、なるほど全世界で1億台売れるというのも納得するデザインです。
プレイステーションシリーズが進化してもこのコントローラだけは同じ形です。
もはやプレイステーションのアイコンにまで昇華しています。
ファミコンのコントローラがどんどん複雑な形になり、その他のゲーム機のコントローラもまたどんどん形状が変化していくのに比べ、プレイステーションのコントローラはどっしりとその基本となるデザインを変えません。20年前にデザインされたコントローラがほとんど同じ姿のままで今も最新のPS4で使われているというのは全く凄いことです。
そしてまた、後藤禎祐さんはVAIOシリーズの名付け親であり、初期に最も成功したVAIO PCG-505のデザイナーでもあります。
VAIOのデビューは実に鮮やかで、鮮烈なものでした。
それまでクリーム色一辺倒で、どのメーカーも(あのAppleさえも!)同じようなPCに見えていた時代に、クリーム色の補色である紫色と、VAIOのためだけに発明された特殊な配合と塗料によるグレー色は、すぐさま他社も追従し「銀パソブーム」を産みました。
PCのデザイン史を3つの時代に分けるとしたら、私はフロッグデザイン期(AppleIIやMacintoshのデザインを担当)、VAIO期(VAIO出現以来カラフルなPCが一気に増えた)、ジョナサン・アイブ期(iMac以降のオフホワイトとキーカラーを特徴としたデザイン)の三期に分けることができるでしょう。
実際のハードウェア開発に関わり、成功体験を持っている方にお話を聞くというのはとても貴重な経験になるでしょう。私自身、伝説的なデザイナーである後藤禎祐さんのお話が聞けることに今から興奮しています。
今回のイベントは地方の方も参加しやすいように土曜日の午後に設定してあります。
例によって会場は手狭になってきたら拡張する予定なので人数確認も含めてお早めにお申し込みをお願いします。
また、イベントに参加していただいた方の中から抽選で新機種の開発プロトタイプのモニターとなっていただく方を選ばせていただきます。
今こそ、我々の手で歴史を切り開く時が来た、と私は確信しています。
これまでenchantMOONをご愛用いただき、本当にありがとうございました。
そしてこれから始まる新展開にどうぞご期待ください。
来年はきっと面白いことがおきるでしょう。