以前のブログで、「京都大学オープンアクセス方針」について話をしたが、京都大学に続いて、筑波大学でも「筑波大学オープンアクセス方針」が打ち出された。記述内容を見ると、京都大学では、極めて強い意志がうかがわれるが、筑波大学は、京都大学ほどではない。それでも、極めて早い対応。それゆえ、京都大学の図書館機構長が、いかに優れた人物かがよくわかる。研究成果を出すことができないエセ研究者から反対されたに違いない。どうせ、研究成果などありもしないのだから、反対することに意味はないのだけれど、エセ研究者たちは、どのような考えなのか、こういうことには抵抗する。京都大学の図書館機構長も、こうした輩を説得するのは、大変だっただろうに(多分、反対しているエセ研究者たちは、納得していないだろうが……)。話はそれるが、名寄せ作業など、所属する研究者たちの研究業績を管理するのは、想像以上に難しい。大学では、その役目は図書館が担っている場合が多く、図書館長の役割は大きいし、ある意味、図書館長は、その大学が研究をする大学であるかどうか、そのことにも関与している(学長から命じられた任務を遂行しているだけ、という意見もあるが……)。
京都大学、筑波大学のオープンアクセス方針のいずれも、原則、所属教員のすべての研究成果に対して、すべての人々がアクセスできるというもの。もはや、この流れは、一部の国を除いて、止められないし、当然の対応になるだろう。研究費(税金)を得て研究を実施しているからには、その一切の権利は国民にあり、国民に対してオープンにすることに異論を唱える方がおかしい。ただし、ここで問題がある。オープンアクセスに極めて非協力的な出版社の存在。そう、エルゼビア。エルゼビアは、まだまだ、あちこちで、オープンアクセス化に関して、もめている(最新の情報では和解しているかもしれないけれど、僕の知るところでは、そのような情報は得ていない。繰り返し言うけれど、僕は専門家でも何でもないから、僕が知らないだけで、この問題は、すでに解決済みかもしれない)。「投資した分は回収しなければ、商売、あがったりだ」というのが出版社の言い分だろうが、同じような言い訳は、特許を免罪符として、高額のエイズ薬を独占販売し、世界中から批判され続けている悪名高い製薬会社と同じ反論。
詳しいことは忘れてしまったが、オープンアクセス化を進めていた編集委員の全員が解雇された(自主的に辞めたかもしれない)という出来事が、ここ数か月内で起こった。編集委員たちがオープンアクセス化を進めたことが、この雑誌の出版社の方針と違うことが原因らしい。もう、こんな問題を起こしたら、この雑誌には、誰も投稿しなくなるだろうなぁ、と普通は思う。
はい。ここからが、本題。
このような話をすると、「心理学系の和雑誌の多くはオープンアクセスなので、問題はない」と考える人もいるかもしれないが、そうではない。むしろ、問題はより根深い。心理学系の和雑誌の多くの場合、オープンアクセスのための費用は、学会の年会費(入会費を含め)によって賄われている。すべての学会会員ではないが、多くの会員は、年会費を研究費から支払っている。研究費の出所は税金。心理学系の和雑誌は、表面的にはオープンアクセスではあるけれど、内実は、出版社に対して多額の税金を支払って、オープンアクセスが実現している。だから、学会費で賄われていない「心理学評論」は、オープンアクセスではないのだ(オープンアクセスにできない)。
そもそも、オープンアクセス化の問題の発端は、各出版社が、論文のダウンロード契約を結ぶ際(年間契約)、多額の費用を各種研究機関委要求し、その費用の内訳を明らかにせず(どのような作業に、どれくらいのお金がかかっていて、どのくらいの利益を上げているのか)、請求費用が妥当であるかどうか検証にしようがない、という点にある。PLoS ONE誌の出版理念や経営の成功が、これまで、出版社が暴利をむさぼっていたことを、世界中が気づくことになった。これがオープンアクセス化の問題なのだ。言い換えるなら、税金が投入された研究に対して、税金を投入して、その成果を閲覧することが問題なのだ(正確に言えば、このプロセスにおけるお金の流れの不当性さ)。それゆえ、論文が無料でダウンロードできたからと言って、オープンアクセスの問題が解決したとは言えない。
このことを踏まえて、心理学系の和雑誌に目を向けると、それぞれの学会が出版社に支払っている費用が適切かどうか、それを検証することこそが、オープンアクセス化のコアであるにもかかわらず、「無料でダウンロードできる」という理由から、その問題を覆い隠して、オープンアクセスの問題が片付いているかのように静観している。税金で得た研究知見を、税金を投入して論文を閲覧している状況であり、このプロセスに費やされる税金の金額が妥当かどうか検証する手段などありはしない。何ひとつ、問題は片付いていない。
出典
筑波大学図書館の説明
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/ja/service/repository-oap
筑波大学オープンアクセス方針
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/sites/default/files/attach/Univ.ofTsukuba-OA-Policy-JandE.pdf
参考
京都大学図書館の説明
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=1677
京都大学オープンアクセス方針
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/uploads/oapolicy.pdf
京都大学、筑波大学のオープンアクセス方針のいずれも、原則、所属教員のすべての研究成果に対して、すべての人々がアクセスできるというもの。もはや、この流れは、一部の国を除いて、止められないし、当然の対応になるだろう。研究費(税金)を得て研究を実施しているからには、その一切の権利は国民にあり、国民に対してオープンにすることに異論を唱える方がおかしい。ただし、ここで問題がある。オープンアクセスに極めて非協力的な出版社の存在。そう、エルゼビア。エルゼビアは、まだまだ、あちこちで、オープンアクセス化に関して、もめている(最新の情報では和解しているかもしれないけれど、僕の知るところでは、そのような情報は得ていない。繰り返し言うけれど、僕は専門家でも何でもないから、僕が知らないだけで、この問題は、すでに解決済みかもしれない)。「投資した分は回収しなければ、商売、あがったりだ」というのが出版社の言い分だろうが、同じような言い訳は、特許を免罪符として、高額のエイズ薬を独占販売し、世界中から批判され続けている悪名高い製薬会社と同じ反論。
詳しいことは忘れてしまったが、オープンアクセス化を進めていた編集委員の全員が解雇された(自主的に辞めたかもしれない)という出来事が、ここ数か月内で起こった。編集委員たちがオープンアクセス化を進めたことが、この雑誌の出版社の方針と違うことが原因らしい。もう、こんな問題を起こしたら、この雑誌には、誰も投稿しなくなるだろうなぁ、と普通は思う。
はい。ここからが、本題。
このような話をすると、「心理学系の和雑誌の多くはオープンアクセスなので、問題はない」と考える人もいるかもしれないが、そうではない。むしろ、問題はより根深い。心理学系の和雑誌の多くの場合、オープンアクセスのための費用は、学会の年会費(入会費を含め)によって賄われている。すべての学会会員ではないが、多くの会員は、年会費を研究費から支払っている。研究費の出所は税金。心理学系の和雑誌は、表面的にはオープンアクセスではあるけれど、内実は、出版社に対して多額の税金を支払って、オープンアクセスが実現している。だから、学会費で賄われていない「心理学評論」は、オープンアクセスではないのだ(オープンアクセスにできない)。
そもそも、オープンアクセス化の問題の発端は、各出版社が、論文のダウンロード契約を結ぶ際(年間契約)、多額の費用を各種研究機関委要求し、その費用の内訳を明らかにせず(どのような作業に、どれくらいのお金がかかっていて、どのくらいの利益を上げているのか)、請求費用が妥当であるかどうか検証にしようがない、という点にある。PLoS ONE誌の出版理念や経営の成功が、これまで、出版社が暴利をむさぼっていたことを、世界中が気づくことになった。これがオープンアクセス化の問題なのだ。言い換えるなら、税金が投入された研究に対して、税金を投入して、その成果を閲覧することが問題なのだ(正確に言えば、このプロセスにおけるお金の流れの不当性さ)。それゆえ、論文が無料でダウンロードできたからと言って、オープンアクセスの問題が解決したとは言えない。
このことを踏まえて、心理学系の和雑誌に目を向けると、それぞれの学会が出版社に支払っている費用が適切かどうか、それを検証することこそが、オープンアクセス化のコアであるにもかかわらず、「無料でダウンロードできる」という理由から、その問題を覆い隠して、オープンアクセスの問題が片付いているかのように静観している。税金で得た研究知見を、税金を投入して論文を閲覧している状況であり、このプロセスに費やされる税金の金額が妥当かどうか検証する手段などありはしない。何ひとつ、問題は片付いていない。
出典
筑波大学図書館の説明
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/ja/service/repository-oap
筑波大学オープンアクセス方針
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/sites/default/files/attach/Univ.ofTsukuba-OA-Policy-JandE.pdf
参考
京都大学図書館の説明
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=1677
京都大学オープンアクセス方針
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/uploads/oapolicy.pdf
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2015.12.02 00:05 | 研究こぼれ話 |
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