「地球温暖化との戦いと、テロとの戦いを分けることはできない。我々が立ち向かわなければならない二つの大きなグローバルな挑戦だ」

 同時テロが起きたばかりのパリで始まった国連気候変動会議(COP21)で、議長国フランスのオランド大統領が、開幕の演説で力を込めた。

 その認識を共有したい。

 温暖化とテロは21世紀の世界が直面する喫緊の課題であり、一国だけでは対応できない世界共通の脅威である。

 COP21を契機に、国際社会はその危機感を改めてともにし、連帯して向き合う決意を新たにする必要がある。

 確認したいのは、二つの脅威が実は関連していることだ。

 温暖化がテロや紛争の土壌を生み出すという考え方は、これまでも複数の国際的な報告書などで指摘されてきた。

 たとえば、こんな道筋だ。

 気温の上昇で雨の降り方など気候が変動し、干ばつや洪水、海面上昇などを引き起こし、水不足や食糧不足を招く。

 その被害は、とりわけ貧困層ほど大きくなる。難民が生まれ、政治の不安定化や国家機能の喪失につながる。

 そこにテロや紛争のリスクが芽生える可能性が出てくる。統治の行き届かない空白地帯にテロ組織が入り込み、貧困にあえぐ人びとを巻き込んで、テロの温床が形作られていく――。

 このような悪循環はどこで起きるかわからない。中東やアフリカかもしれないし、アジアかもしれない。気候変動のリスクは、国境も意味をもたない。

 だとすれば、各国がそれぞれの国益を追い求める従来の発想を乗り越える必要がある。先進国と途上国の垣根も、取り払わなければならない。

 国家の単位では対応しきれない問題でもある。国際機関やNGOなどとともに、国家を超えた枠組みで取り組まなければ、解決の糸口はつかめない。

 温暖化防止も、テロ対策も、容易な解決策はない難題だ。各国が得意分野を生かした役割分担をしながら、息長く、粘り強く立ち向かうしかない。

 安倍首相はCOP21の首脳演説で「先進国、途上国がともに参画する新たな枠組みを築くべき時だ」と訴え、途上国の温暖化対策への支援を年約1兆3千億円にする方針を表明した。

 人道支援の分野を中心に、日本として、さらに何ができるか。何をすべきか。

 NGOなど民間の意見にも耳を傾けながら、具体的な連帯の方策を探る必要がある。