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【社会】

マイナンバー、一斉提訴 「プライバシー権を侵害、違憲」

提訴後に記者会見する奥山妙子さん(右から2人目)らマイナンバー違憲訴訟の原告団=東京・霞が関の司法記者クラブで

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 来年一月に運用が始まるマイナンバー制度は個人情報漏えいの危険性が高く、憲法が保障するプライバシー権を侵害するとして、東京や大阪などに住む百五十六人が一日、国に個人番号の収集・利用差し止めや削除、一人当たり十万円の慰謝料などを求める訴えを東京、仙台、新潟、金沢、大阪の五地裁に起こした。 

 弁護団によると、マイナンバー制度をめぐる集団提訴は初めて。今後、名古屋、横浜、福岡の三地裁でも提訴するという。

 東京地裁に提訴したのは元国立市長の関口博・国立市議や医師、税理士、自営業者ら三十人。

 原告側は訴状で、日本年金機構がサイバー攻撃を受け約百二十五万件の個人情報が流出した例を挙げ、マイナンバー制度に関する行政機関や民間企業の安全対策は不十分で「税や社会保障などに関する個人情報漏えいの危険性が高い」と主張。「個人番号カードの不正取得や偽造で他人が本人に成り済まし、借金するなど経済的被害も発生しうる」と指摘した。

 マイナンバー制度は個人情報を本人の同意なく集めており「自分の情報をコントロールできる権利を侵害している」とも訴えた。

 提訴を受け、内閣府番号制度担当室は「訴状の内容を見て今後の対応を検討する」とコメントした。

◆原告「今のうちに止めねば」 対策不足、漏えいリスク大

 個人情報漏えいへの不安が消えぬまま、個人番号の通知カードの配布が始まったマイナンバー制度。制度の運用差し止めを求める市民の訴えが全国五地裁で一斉に起こされ、制度の是非が法廷で争われることになった。

 「番号は必ず漏れるし、悪用する人も出る。今のうちに止めないといけないという一心だった」

 東京地裁に提訴した原告の一人、元杉並区議の奥山妙子さん(58)は一日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで代理人弁護士とともに記者会見し、提訴に至った心境を語った。「勝手に番号を割り振られ、拒否すらできない。この怒りは言葉で説明できない」と声を張り上げた。

 マイナンバー制度をめぐっては、自治体が番号を記載した住民票を誤って発行するなど、運用開始前にトラブルが相次ぐ。制度を悪用したニセ電話で、現金などをだまし取られる詐欺被害も起きている。

 代理人の水永誠二弁護士は「マイナンバー制度は一億三千万人の個人データを扱う巨大インフラで、動きだしてから修正するのは事実上不可能だ。大量の個人情報流出など、実際に弊害が起きる前に運用を差し止め、見直す必要がある」と訴訟の意義を強調した。

 二〇〇三年に本格稼働した住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)では、番号を扱うのは行政機関だけだったが、マイナンバー制度は、企業も個人番号を扱うことになる。訴状では、一社平均百九万円の対策費が必要という試算を示し、「準備不足のまま運用開始を迫られる企業も多く、漏えい事件の発生は必然だ」と指摘した。

 住基ネットをめぐっては同様の訴訟が起こされたが、最高裁は〇八年、「制度やシステムに不備はなく、プライバシー権を侵害しない」と、合憲と判断した。

 水永弁護士は「マイナンバー制度の危険性は、住基ネットと比べ格段に大きい。住基ネットが合憲だったからといって、マイナンバー制度を合憲とする理由にはならない」と話した。

 

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