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ブラジルGDP4.5%減 7~9月、過去20年で最悪

2015/12/1 23:11
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ルセフ大統領の支持率は低迷している=ロイター
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ルセフ大統領の支持率は低迷している=ロイター

 【サンパウロ=宮本英威】ブラジル地理統計院が1日発表した7~9月期の同国の実質国内総生産(GDP)は前年同期比で4.5%減った。現行統計が始まった1996年以降の継続性のある四半期データでは最悪の落ち込み幅になった。鉄鉱石など資源や穀物の価格低迷で先行きに不透明感が広がり、投資や家計消費がいずれも減退している。与党の有力者を巻き込んだ汚職疑惑とともにルセフ政権の足元を大きく揺るがしている。

 ブラジルの四半期ベースでの前年同期比マイナス成長は7~9月期で6四半期連続となった。前の期に比べると1.7%減で、3四半期連続のマイナス。景気後退局面が一段と深刻になった。

 ブラジル中央銀行がまとめる有力エコノミストによる実質成長率予測は2015年の通年が直近でマイナス3.2%。通年でマイナス成長になれば、リーマン・ショックの影響を受けた09年以来、6年ぶりとなる。

 ブラジルの政策金利は現在、年14.25%で、好況だった06年と同じ高水準にある。景気浮揚のためには財政出動の拡大や金利引き下げが有力な手段になる。ところが、ブラジルの政府、中銀は財政規律回復を目指す歳出抑制や、インフレ抑制のための高金利を当面維持する方針を示している。金融市場の信用力を取り戻し、資金逃避を防ぐことを優先する考えだ。

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 こうした現状も景気テコ入れのための有効な方策が打てない一因だ。

 ブラジルでは国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職疑惑で与党・労働党の実力者が逮捕されるなど内政が混乱している。ルセフ大統領にとっては経済不振とともに大きな打撃となり、支持率は大きく落ち込んでいる。12月上旬に日本訪問を予定していたが、予算関連法案の審議で議会が紛糾していることなどを背景に急きょ、取りやめた。

 7~9月期のGDPで落ち込みが目立ったのは官民の投資だ。ブラジル地理統計院によると固定資本形成(投資)は前年同期より15%減った。3四半期連続で10%以上のマイナス幅になった。経営立て直しに追われるペトロブラスだけでなく、資源大手ヴァーレ、紙パルプ大手フィブリアなど国内の有力企業が投資を軒並み抑制している。外国企業も、ブラジル経済の回復時期が見通せず、新規投資に及び腰だ。

 家計消費は前年同期比で4.5%減。3四半期連続のマイナスだ。9月の小売売上高は前年同月比で6.2%減った。カジュアル衣料大手のエリングは一部店舗の閉鎖を検討し始めた。16年の投資額は前年より減らす方針で拡大路線を見直す。

 消費不振の主因は雇用悪化とインフレだ。10月の失業率は7.9%で、09年8月(8.1%)以来の高い水準となった。ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)によると、10月時点の自動車メーカーの従業員数は計13万2700人と、前年同月より10%減った。

 消費者物価指数は10月に前年同月比で9.93%上昇した。1月から中央銀行の物価目標の上限(6.5%)を上回る状態が続く。電気など公共料金の引き上げや通貨レアル安が響き、沈静化の兆しがみえない。物価高で実質賃金の減少を実感する消費者が増えている。

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