本記事ではこれまで自作ゲームを作ったことがある人に向けてRPGツクールMVを特徴をざっくりと解説します。すごいっす。
■RPGツクールMVのすごいところ
○世界で1番簡単に使えるスマホゲーム制作環境
HTML5(ブラウザゲーム)の形でRPGが配布できます。
通常、スマホでアプリを出すにはAppleやGoogleに開発者登録の費用を払った上で、Appleの場合英語の審査があります。この作業がけっこうしんどい! でも、HTML5であればボタン1発で作成でき、自分のサーバーに置くだけでプレイできます。ユーザーも、URLをクリックするだけでインストール不要でプレイできます。超簡単!
実力のある開発者のかたであればAdobe Cordovaを用いてスマホアプリ化することもできます。その場合はカメラやGPS、広告プラグインをいれての収入などネイティブさながらのゲームがツクれます。
○プラグインがJavaScriptになり自由度が大幅に向上
これまでもRPGツクールはRubyを採用し、ゲームエンジンとして非常に簡単でいろいろなことができてきました。
今回はプラグイン機構がJavaScriptになりました。これにより、さらにプラグインが強化されました。
・ゲーム内のあらゆる要素を自由にコントロールできる
・ネットワークと連動したプログラムが簡単に書ける
・Web用のJavaScriptライブラリの資産が使える
・JavaScriptを扱えるプログラマーの数はとても多い
「やべ、これなんでも作れるじゃん!」というのが素直な気持ちです。
何ができるかを見るには、きゅぶんずさんが作ったサンプルが1番分かりやすいでしょう。スマホで複数人で遊ぶことができます。超おすすめ。
http://kyubuns.net/MMOM
○RPGツクールVX Aceとだいたい同じ
これほど変わったのに操作方法が前作VX Aceとだいたい一緒です。これまでRPGツクールシリーズをさわってきた人であれば、ほとんど違和感なくさわることができるはずです。ウディタとかUnity触れる上級者なら一瞬です。
■簡単にスマホゲームが作れると何ができるか?
まず、単純にプレイヤーが数倍になります。
ご存じの通りPCの利用人口は減り続けており、逆にスマホはゲームデバイスとして3DSを上回る普及率です。ここにゲームが出せるのはデカイ。
コンテンツも変わります。
既存のゲームの世界を「1回のプレイ時間」と「1人で遊べるか」で分類してみました。例えば、LINEゲームは1回のプレイ時間が2~3分で、一人でも遊べるし、友達と競いあうのもよく見られる遊び方なので真ん中上のあたりになります。
これまでRPGツクールというのは「じっくり、一人で」遊ぶゲームに特に向いていました。なにしろRPGですからね。ツクールMVはスマホでのブラウザゲームがツクれます。てことは「生きろ!マンボウ!」とか「cookie clicker」のようにtwitterからひょいっと飛んで「ちょいちょい」遊ぶゲームがツクれます。「みんなで」遊ぶ先ほどのMMOのようなものもツクれちゃいます。コンテンツの種類が増えれば、当然遊んでくれる人の種類が増えます。
つまり、RPGツクールMVの最大の魅力は「多くの人が遊んでくれる可能性がある」ということだとおもいます。これまで素晴らしいRPGをツクっても、なかなか多くの人に遊んでいただけないのが悩みでした。今回は環境面でも、内容面でも、多くの人に遊んでもらえる可能性が広がっています。
■既知の問題
RPGツクールMVの動作は非常に高いレベルです。PCでゲームを作るのであれば、十分に実用レベルで動作します
しかし、スマホという新環境は非常に難易度が高く、まだ万全というわけではありません。
○スマホ(ブラウザ)
・スマホで操作しやすいユーザーインターフェースが確立されていない
・セーブはブラウザのストレージで行われるためデータが消えることがある
・スマホは頻繁にスリープになり、そのときブラウザが自動で落ちることがある。しかしツクールは自動中断セーブになっていないためデータが失われることがある
・素材ファイルサイズがPCを前提としており、大きい
・エンジン本体がまだ十分に安定しておらず落ちることがある
・Twitter等のアプリ内ブラウザで起動した場合と、safari等ブラウザで起動した場合のセーブデータが別になってしまう
・プレイヤーと作者のコミュニケーションが取りにくく、デバッグがPC以上にやりにくい
○ネットワーク
・非同期の読み込みに対応しておらず、低速回線で表示が乱れる可能性がある
・読み込みのエラー時にゲームが止まってしまい、回復できない
○PC・全般
・メモリリークがあり、長時間プレイ時に落ちる可能性がある
・音楽や画像の素材で使わないものも出力時に同梱されてしまう
・素材の暗号化が外部ツールになり、難易度が高い
○プラグイン・ゲームエンジン
・ゲームエンジンや付属プラグインのライセンスが明示されていない
・ゲームエンジンのバージョンアップの方法が初心者には難易度が高い
・プラグインが競合しやすい(あるプラグインを2ついれると動かなくなってしまう)
・十分なテストを経て、ドキュメントが充実したプラグインが少ない
○文化・コミュニティ
RPGツクールMVは世界を広げました。それが故に文化摩擦が起きる可能性もあります。
・RPGツクールは海外のほうが多く売れており、開発文化が全く違う
・JavaScriptのエンジニア文化とツクラーの文化は異なる
・「じっくり一人」RPGファンと、「ちょいちょいスマホ」ゲームファンの文化は異なる
・世界中でゲーム実況が当たり前のカルチャーになり、伝統的なツクールゲームファンと文化が異なる
前作のVX AceはWindows上で円熟した最高の作品でした。今作は全く新しい世界に踏み出したが故に少し不安定ですが、それを上回る魅力があります。こうした問題はリリース後に少しずつ改善されていくはずです。
■個人的な感想
RPGツクールMVをさわったとき、「初音ミク」を見たのと同じような驚きとワクワクで頭がいっぱいになりました。
ミクが出るまえの世界を、覚えているでしょうか。あの当時個人の作ったオリジナル音楽が聴かれることなんて、ほとんどありました。個人の音楽はホームページやヤマハのプレイヤーズ王国といった好事家が集まるところで公開され、どれだけ素晴らしい作品でも仲間内の外に飛び出ることは難しい状態でした。それを「初音ミク」というキャラクターが変えました。「ボカロオリジナル」はもちろん「歌ってみた」や「踊ってみた」「MMD」といった「個人の音楽を楽しむ」世界が生まれました。
RPGツクールMVはそれと同じくらい可能性があります。理由はスマホでプレイヤー人口が多いからだけではありません。まったく新しいゲームが生まれるからです。今のツクールですら十分に商用ゲームとは違う世界なのですから、多様な遊び方ができるブラウザという世界なら、絶対に新しい作品が生まれます。
新しいゲームは、人間の世界を変えることができます。筆者の場合、地下街は「女神転生」が浮かび、新宿にいくと「龍が如く」みたいとおもい、電車は「妖怪ウォッチ」、ヨーロッパはすげー「FF」っぽい。場所だけじゃありません。日常的に「MP減ってきた」と体調を理解して、「あいつの能力値は」とTRPGの概念で理解します。小学校の友人はゲーム仲間だし、いまでも1番仲のいい友達はネトゲの友達だし、友人はPSOで知り合って結婚してました。ゲームってだいたい人生じゃないですか。
そんな劇薬みたいなゲームを、新しくツクれるようになるって、超面白い。
■どこで買えるのか
遊んでみたいひとはニコニコゲームマガジンでサンプルゲームが公開中です。
http://info.nicovideo.jp/gamemaga/mvsample/
ツクってみたいひとは公式サイトで無料体験版が公開中です。
https://tkool.jp/mv/
使用技術など幅広く分かりやすい概要はこちら。
http://tomotaka.tk/tkoolmv-overview/
本記事は「RPGツクールMV(なんでもあり) Advent Calendar 2015」の1日目の記事です。参加者を絶賛募集しています。
http://www.adventar.org/calendars/1119
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