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4K+HDR対応製品や超高速ストレージは将来のゲームやPCにも関係あり? ゲーマー視点で巡る「Inter BEE 2015」レポート
映像制作の世界では,「4K」はもちろんのこと,さらに高解像度な「8K」への移行も進んでいるため,映像制作用PCもハイスペックを求められるという過酷な世界になっている。また,4K映像のストリーミング配信では,大容量のデータをいかにさばくかという,サーバー側の技術にも関わってくる面があるのだ。
岡田氏は,テレビCMの制作に携わっており,PlayStation 4やさまざまなゲーム,そしてGoogleなどのCMを担当した実績がある人物だ。ゲームに関する造詣も深い。4Gamer向きの話もできる人物というわけで,映像制作に関わるハードウェアや映像制作の現状などを聞きながら,Inter BEE 2015会場を回ってみた。
映像制作は8Kのシフトが鮮明に
4Kの制作環境が浸透し,低コスト化も進み始めたことを受けて,Inter BEE 2015で焦点が集まっていたのは,「8Kの制作環境をどう構築するか」であったようだ。
制作現場で使われるビデオカメラは,現状では5〜6K程度の解像度に対応するものが主流である。据え置きゲーム機はフルHD(2K),PCゲームがウルトラハイエンドの環境でようやく4K映像を扱えるようになったのに比べると,かなり差がある。グラフィックスカード1枚で,6Kや8K解像度のゲームがプレイできるのは,いつのことやらといったところか。
ディスプレイ1枚で8Kは難しいとしても,複数台のディスプレイやプロジェクタを組み合わせたマルチディスプレイ環境であれば,現時点でも4Kを超える解像度でゲームをプレイできないわけではない。マルチディスプレイ環境で,FPSやフライトシミュレータをプレイしている人はいるだろうし,アーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」のように,マルチディスプレイによる専用筐体でプレイするゲームもある。
極めて高いグラフィックス性能が求められることを考えると,ごく近い将来に,家庭でのゲーム環境が4K解像度を超えるのは非現実的だろう。そうなると,8Kのような高解像度でのゲーム環境は,ハードウェアコストをかけられる大型筐体のアーケードゲームからやってくるのではないかと,筆者は考えている。その意味では,2016年2月に開かれる「ジャパン アミューズメント エキスポ2016」が楽しみだ。
岡田氏が所属するスタッドの場合,現時点で4KやフルHDの映像を制作する場合,プロフェッショナル向けビデオカメラの専門メーカーであるRED製のカメラを使用し,5K/6Kで撮影している。そして,撮影映像をスタジオで処理したうえで,出力先に合わせて納品時にリサイズするという工程になっているそうだ。
大きめに撮影しておき,リサイズして出力というのは,デジタル一眼レフカメラによる写真や映像撮影と同じである。「大は小を兼ねる」ではないが,工程にトリミングを含む場合,ソースは現時点で最大の解像度であるほうがいい。
素材の解像度が高くなれば,それだけ制作システムに求められる処理能力も高くなる。たとえば,RED製のカメラ「EPIC DRAGON」の場合,解像度6144
岡田氏いわく,「感覚的には,ゲームのグラフィックス設定を最大にしたうえで,解像度を4K,フレームレートを120fpsに固定させた環境といったところ。そのうえで『実況配信もしたい』となったとき,どんなPC環境が必要なのか考えるのと似ているんじゃないか。きれいなな画面で,サクサク動く環境が必要というのは,ゲームでも映像でも同じ」とのことだ。
NVM Express接続SSDのRAIDは当たり前?
高速なストレージ製品に注目が集まる
高解像度かつ高フレームレートの映像編集が主流になっているという背景があるためか,PC関連のデバイスでInter BEE 2015会場に多く展示されていたのは,高速で大容量のストレージ製品だ。
コンシューマ向けのPCでは,Serial ATA接続のSSDでシーケンシャルリード(逐次読み込み),シーケンシャルライト(逐次書き込み)ともに500MB/s程度の性能を持つものが珍しくなくなってきた。スピード面では十分に思えるが,プロの映像制作用途では,巨大な無圧縮データを扱うための大容量と,接続インタフェースによる処理のもたつき回避を両立しなくてはならないそうで,まだまだ問題も多いようだ。
そんな前提を踏まえたうえで会場を見回ってみたところ,映像制作向けのストレージは,SSDではなくHDDで構築されたシステムが多いことに気がついた。単純に,HDDのほうが低コストで大容量だからだが,速度性能面ではSSDに遠く及ばないため,その点はRAIDを構築してフォローするというわけだ。
岡田氏によると,映像制作用の環境では高速なストレージに加えて,膨大なメインメモリを搭載することで,データの読み込み速度を確保しているという。4K 30Hzの映像を作るには,4K 30Hzを表示できないと仕事にならないので,岡田氏が常に重視している部分だそうだ。
コンテンツ制作者向けを謳うG-Technology製のRAIDストレージ。HDD 4台,または2台の製品がある。接続インタフェースとして,USB 3.0やIEEE 1394,eSATAに対応するそうだ |
HGST製のUltrastarシリーズは,ヘリウムを封入することでプラッタ枚数を増やしている。密閉性の高さを示すために,HDDをフロリナート漬けにしたデモを披露していた |
もうひとつ,注目に値するものとして,「Thunderbolt 3」対応製品があった。Thunderbolt 3は,データ転送速度が最大で40Gbpsになる高速なインタフェース規格である。
データ転送速度が最大20Gbpsの「Thunderbolt 2」は,Macと映像機器で使われているものの,Windows PCで対応する製品は少なかった。しかし,Thunderbolt 3はUSB Type-C 3.1とコネクタ形状に互換性があること,Intelが対応コントローラ「Alpine Ridge」(開発コードネーム)をマザーボードメーカー向けに提供していることもあって,今後はPCでも普及が見込まれている。
現状ではストレージ接続用途がメインのThunderbolt 3だが,
4K Blu-rayとともにやってくるHDR対応製品
近いうちに製品として登場する新技術に関する展示で,ゲーマーにも関係ありそうなものが「ハイダイナミックレンジ」(High Dynamic Range,以下 HDR)だった。
ここでいうHDRとは,映像信号の輝度ダイナミックレンジを大幅に拡大した映像規格のこと。詳細はこちらの解説記事を参照してほしいが,要は従来よりも自然な明暗分布を表現できるようになると考えればいい。
ゲームグラフィックスやスマートフォンのデジタルカメラ機能でも,HDRでレンダリングしたり撮影したりという機能が備わっているものもあり,それがHDRを規格に含む「ULTRA HD BLU-RAY」こと4K Blu-rayの登場によって,家電の世界にも広がろうとしているわけだ。
筆者は,「HDRは制作段階で配慮するもの」と思っていたのだが,ソニーや東芝ブースでのHDRに関する展示を見聞きしたところ,ディスプレイ側の機能になり,制作段階では特別な処理はしないとのことだ。とはいえ,出力先のディスプレイがHDR対応であれば,それを考慮したカラーグレーディングは,制作段階でも必要になるという。
さて,ゲームの場合,HDR映像を開発者の意図どおりに表現するには,ディスプレイやテレビ,PCやゲーム機,そしてゲームのグラフィックスエンジンが,HDRに対応する必要がある。
このうち,グラフィックスエンジン側は,内部的にHDRでレンダリングするケースも増えているので,対応は比較的容易だろう。問題はハードウェアのほうで,とくにHDR対応のディスプレイやテレビに買い換えが必要となると,4K解像度の製品を買ったばかりという人は,買い換えをためらうかもしれない(関連記事)。
グラフィックスカードや据え置き型ゲーム機がHDR出力に対応するのが,いつ頃になるのか筆者には分からないが,映像業界はすでにその準備に向けて進んでいるということは,覚えておくといいだろう。
プロ向けビデオキャプチャデバイスをゲーム実況に使ってみる?
次の話題はビデオキャプチャデバイスだ。
最近はゲーム実況配信が当たり前となり,PCやPlayStation 4(以下,PS4),Xbox Oneで実況や動画投稿を楽しんでいる人も多いだろう。筆者は昔から実況配信をしていたのだが,機材の用意だけでも大変だった当時と比べて,今ではボタンひとつで配信できるくらい洗練されてきているので,少し不思議な感じもしている。
さて,実況配信は完全なリアルタイム映像ではないが,それをキャプチャする段階では,リアルタイムでの作業が必要になる。そうであれば,同じようにリアルタイムで作業を行う中継映像の制作現場で使われる製品は,そのままゲーム配信用の機材としてアリではないだろうか。機材を1つ追加するだけで,配信時の手間が減るのもよく体験している。
そんな観点で,岡田氏に「お勧めの製品は?」と,控えめの価格で適当なものはないかと聞いてみたところ,「今はWindowsでもThunderboltが安定しているから,複数の映像ソースをまとめたいなら,Blackmagic Design製品がいいかも」(岡田氏)ということだった。
Blackmagic Designは,ゲーマーの間で知名度の高い企業ではないが,ビデオキャプチャ製品のIntensityシリーズなら,知っているという自作PCユーザーもいるのではないだろうか。Inter BEE 2015会場では,「Intensity Pro 4K」という製品が展示されていた。この製品には,PCI Express(以下,PCIe)接続の拡張カードタイプのほか,USB 3.0またはThunderbolt接続に対応する外付けデバイスが存在している。
PCIe拡張カードの製品が2万4980円(税別)と,プロフェッショナル向け製品の中では比較的低価格なので,ちょっと上を目指したい実況者なら,こういう機材を使ってみるのもよさそうだ。
もう1つ,岡田氏がプッシュしていたのが,Blackmagic Designの映像用スイッチャ「ATEM Television Studio」である。4系統のHDMI/SDI入力と,複数の映像を1つの画面上に分割表示する「MultiView出力」という機能を備えており,H.264リアルタイムハードウェアエンコーダを備える1Uラックサイズのスタジオみたいな機材だ。操作はPC用ソフトウェアで行え,放送局で使われるようなトランジション機能や,映像に重ねるグラフィック表示なども可能だ。
プロフェッショナル向け製品ではあるが,HDMI出力がある点と,H.264リアルタイムハードウェアエンコーダーがある点で,ゲーム実況用途にもお勧めであるとのことだった。ちなみに,価格は12万1800円(税別)とのこと。
ロック電源ケーブルは,プラグ差し込み口内にロック機構があり,赤いボタンを押すとロックが解除されるというもの。両端ともこの形状のケーブルもあり,対応する電源タップも販売されている |
小型PCをぶら下げられるほどロック機構は強力だ。電源ユニット側は無改造で利用できる |
それはエイム電子の「ロック電源ケーブル」(関連リンク)。デスクトップPCの電源ユニットにつないだ電源ケーブルの抜け止めを防ぐというものだ。コネクタ内にロック用のピンが用意されており,電源側の対応は不要。足にケーブルを引っかけて,電源が抜けてしまう悲しい事故を減らせる。
この抜け止め防止機能が極めて強力で,小型のデスクトップPCをロック電源ケーブルでぶら下げるというデモが披露されていたほどである。後ほど購入しようと思う。
ちなみに,エイム電子は高品質なHDMIケーブルも製作しており,PS4に同梱されているHDMIケーブルにも関わっているとのことだ。
Inter BEE 2015レポートは以上となる。映像制作の業界は,8Kに突入しつつあるのがトレンドだが,ゲームの映像は当分4K〜フルHDといった状況が続くだろう。だが,いずれHDR対応の4K液晶ディスプレイや液晶テレビが普及してきたら,HDR出力対応のグラフィックスカードとセットで導入したくなりそうではある。
RAID構成のストレージを個人で導入しようという人は少ないだろうが,OS用として,高速なNVMe対応SSDが気になる人はいるのではないだろうか。また,Thunderbolt 3が今後PCで普及するのかも,さまざまな周辺機器に関わってきそうなので,気になるところだ。Inter BEE 2015で披露された技術や製品が,すぐにゲーマーにも身近になるというわけではないが,少し先のPCや周辺機器を考える参考になれば幸いだ。
Inter BEE 2015公式Webサイト
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