高校を卒業した私は絵とは全く関係の無い人生を歩みます。
嫌な記憶を忘れるように、あんなに好きだった漫画やアニメも全く見なくなりました。
絵も全然描かなくなり、稀に『それでも私には絵しかない』と過去の情熱にすがって無理やりにでも描こうとすると、頭の中がカーッ!となって、鉛筆を投げつけて苦しみもがく羽目になり、とてもまともに絵を描く事なんて出来ませんでした。
しかし私の出身校を知った人達は「絵が描けるんだ!今度○○描いてよ!」と口を揃えて言いました。
私は苦笑いで適当に誤魔化すだけ。
いつからだったか、私が好きな絵を描かなくなったのは。
漫画やアニメが大好きで、既存のキャラクターを模写したり、オリジナルキャラクターを作って設定をいろいろ考えたり。
他人の目や世間の「漫画は低俗、漫画絵を描くのはオタク」と言う思い込みに洗脳され、そう思われないように、バレないように、なるだけ周りに合わせて無難に無難に装って、好きだけど好きじゃない真面目な絵を描くようになって。
ある時私の経歴を知った人が、コンテストに投稿された絵を指しながら「こんな絵(漫画絵)より君が描いた方が入賞する!絶対!」と言いました。
喜ばせようとしたのかもしれませんが、その言葉を聞いて私は表では苦笑い、腹の中では激怒していました。
『私がどんな絵を描くか見た事もないくせに!好きな絵を伸び伸び描いている人を悪く言うな!この人の絵の方がよっぽど作品に愛情感じるわ!お前にそれを馬鹿にする権利があるのか!』
私が描きたくても描けなかった絵が、憎らしくも愛おしい。世間体にかき回されつつも、やっぱり大好き。
頭の中はぐちゃぐちゃで自分でも訳が分かりません。
世間体など気にせず自分の好きな絵を描き続けていたら、意外に同じ趣味の知り合いが出来て楽しい時間を過ごせたのかもしれません。
それから5年以上、私は一切絵を描きませんでした。
状況が変わったのはその後。
もうあんなに大きかったペンダコも薄れ、絵を全く描かないので真っ直ぐな線を引く事も出来なくなり、画材なんてどこで干からびているのか皆目検討がつかなくなった頃。
とあるSNSに参加していたのですが、そこでとても上手くて可愛い絵をアップしている人がいたんです。
あまり可愛い絵が好みではなかったのですが、何度見ても、上手い。可愛い。
捻くれていた私はその人の絵がアップされる度につい粗探しをしてしまうのですが…やっぱり可愛い。
(多分「萌」と言うやつだったんだと思います(´`;
ある時、その人のイラスト日記にコメントをしてみました。
腹の中のドロドロしたものは隠して、「毎回アップされるのを楽しみにしてます! 可愛い絵ですね。私には真似できません。凄いです!」と。
するとその人は驕りも謙遜もせずに、「ありがとうございますv ○○をXXXXしたら可愛い!と思って頑張って描きました! そう言って貰えて嬉しいです^^」と、気さくに返事をくれました。
心のどこかで自分には手の届かないレベルの人だと思っていたけど、初コメの私にも普通に接してくれて、何より本当に作品を好きで、楽しんで描いているんだという事が伝わってきて、何か震えるものがありました。
そのSNSにはその可愛い絵を描く人以外にも絵を描く人が何人かいて、アップされては賞賛される彼らの絵を見る度に何か湧き出てくるものがありました。
何かムラムラ…、くそー、私も描けるんだぞ、見てろ、ぎゃふんと言わせてやる。
久しぶりに絵を描きたいような気持ちと、闘争心が湧いてきました。
でも5年以上絵を描いていない私が思うように絵を描けるはずもなく。
PCで絵を描く事もほとんどなかったのでコピー用紙に描いた線画をスキャナで取り込んで(知識も何もなかったのでゴミだらけ)Photoshopでベタベタ色塗り。
満足のいく出来だったかというと微妙なところですが、久しぶりに精一杯、なんだか楽しく描けた気がしました。
ドキドキ緊張で吐きそうになりながらSNSにアップし、1日経ってからまた見てみると、思ってもみない数のコメントを頂いていました。
お絵描きをするユーザーからのコメント、フレンドのコメント、通りすがりの人の揚げ足取り、いろんなコメントがありましたが、とても驚き、なんだかとても嬉しかったのを覚えています。
それからはちょくちょくイラストを描くようになり、アップしては「ここが上手くいかない」と日記に付け足して感想を書き、先輩お絵描きユーザーからアドバイスを貰い、アドバイスを精力的に実践していく日々。
練習の題材になってくれとフレンドにお願いし、フレンドのプロフィール画像を描く事もしました。
他人にあげるものなので必死です。 手抜き無しで分からないところは調べまくって頑張りました。
いつの間にか、絵を描いている時間が楽しくて楽しくて仕方なくなっていました。
世界のいろんなものに興味が湧いてきました。
あれも良い!あれも素敵!あれはどうやってるんだろう!
全く見る事のなくなっていたアニメも見るようになりました。
アニメと言えば日曜朝か夕方枠だと思っていたけど、いつの間にか深夜アニメが当たり前になっていました。
このキャラ可愛い!このキャラカッコイイ!この場面綺麗!このシナリオよく練ってある、凄い!
苦手な絵柄のものも食わず嫌いせず見てみると面白い事面白い事。
正直絵を描かなくなってから無意味で無気力な毎日だったのですが、週1のアニメを見るのが楽しみになって元気が出ました(^^;
SNSで可愛い絵を描いていたあの人とは今でもフレンドです。
お絵描き専門のSNSではなかったのですが、お絵描き好きが何人もいて、誰もリアルなデッサン、真面目なポスターなどアップしたりせず自分の好きなイラストを好きなように描いてましたから、今まで世間体を気にして隠していた漫画絵を隠す必要がなくなったのです。
現実世界で体当たりで同じ趣味の人を探すのは大変ですが、ネットならこんなにすぐ共通の趣味を持つ人達と知り合えるとは!
ネットを始めてたくさんの楽しんで絵を描いている人達の存在を知りました。
皆自分の作品を愛して可愛がって想いを込めて、「これが最高だー!」となんの迷いもなく披露していました。
震えて涙ぐむぐらい嬉しい光景が広がっていました。
何も他人の目を気にしてコソコソ隠す必要も無い、好きなものを好きと表現できる場がいくつも存在している!
大体漫画絵は日本の誇る文化なんです。
世界がルネサンスに代表されるどこまでもリアルな描写を追及していた時、日本は浮世絵ですよ。独自の文化過ぎます。どこからそんな発想出てくるんですか、凄過ぎます。
最近は中国・韓国のイラストレーターの方も漫画っぽいイラストを描く人が増えましたが、やはりどこか写実的で、日本のようにデフォルメされたイラストはなかなかありません。
(個人的感想です。中韓の方の骨格の理解レベルはかなり高いです。)
オタクがなんですか!
好きなものを好きと、生き生き表現出来る事のなんと素晴らしい事!
胸を張っていいんです。
好きなもの、夢中になれるものがあるってとっても羨ましい事なんです。
他人に遠慮して自分を潰したら私のように灰色の人生を歩む事になります。
何も大っぴらにしなくとも、今はネットがあるので表現の場はいくらでもあります。
好きな事はやっぱり好きなんです。
憎むまでになっていた絵に対する想いも、やっぱり根本は好きな気持ちだったんです。
楽しく絵を描きましょう。
疲れたら休んで、絵を描く事を嫌いにならないで。
楽しく絵が描けるよう、有用な情報はどんどん吸収して上手くなっていきましょう。
このサイトが皆さんのお絵描きライフを少しでもお手伝い出来たら幸いです。
2012年08月12日
ありがとう
この記事に書かれていることは共感できました!
私のように、イラストの右も左も分からないような人の背中を押していると思います。
ぜひ、自己満足で良いので発信し続けてくださいー
いきなりのコメント失礼いたします。
この「絵を嫌いになった理由」と「絵を好きになった理由」を読んで,とても心がざわめきました!
今の私は,うろ様の「絵が嫌いになった理由」の時と全く同じ状況にいます。
小さい頃から絵が大好きで,絵がなければ私にはなにもないと思えるくらい,絵が私の全てでした。
いつも絵が私を楽しませてくれた。
幸せをくれた。
そして,もっといろんな物や世界が描きたくて専門学校に通いだしました。
そこまではよかったのですが,
学校に行けば行くほど周りの子との格差の広さ,新しい技術の厳しさにいつしか置いていかれるようになり,とても怖くて実習を重ねて無理矢理みんなについていこうと走るようになりました。
そして結果,絵が描けなくなりました
絵とどう向き合っていいのか分からなくて,
絵の描き方がわからなくなって…
すっかり自分のなかにある絵を失ってしまいました。
あんなに大好きだったのに,あんなに大切な存在だったのに。
あのキャラ可愛い!描きたい!!!と思い,いざ紙に向かうと描けなくなります。
描く気はおきるのに失う。
そんな日々を過ごしています。
そしてこちらのブログを見付け読んだ時,心が握りしめられるようにギューっとしました!!!!!!
うろ様が絵を取り戻したブログで涙が出ました。
そして,私もいつかまた取り戻せると心に希望が芽生えました。
その希望がとても嬉しいです。
描けなくなっても絵は好き。
やっぱり絵は私の中で大切な存在。
また楽しく描ける日を思って前向きに行こうと思いました!!
うろ様のブログに出会わなければ,私はきっと止まったままでした。
本当に感謝しています(^^)
長々と書いてしまい申し訳ありませでした↓↓
またこちらのブログを拝見させていただきたいと思います!
失礼致します。
好きなものを胸張って描いていきます。
またペンを持てそうです。
今の鬱の気持ちを遥かに凌ぐほどたまらなく絵が好きです。
マンガを芸術に何たらかんたら抜かす、お高くとまった現代アートかぶれの池沼は、いっぺん肥溜めに突き落としてやりたくなります。
私はこの記事の後半→前半の状況に
陥っているようです。
はじめはアニメ楽しい!萌え楽しい!で
絵を描くのも楽しい!でしたが
今ではSNSで他の作品を見て劣等感で
「俺なんて描かなくていいだろ」と
なってしまっています。
世の中なかなかうまくいかないものです。
一度絵で挫折して鬱になり、2度と描くものか!と画材を全て捨ててしまいました。
それももう3年前で、また描き始めて半年が経ちます。
ゴリゴリと描かれたデッサンや厚塗りを好んでいましたが、ずっと離れていた漫画やアニメに感銘を受けてデジ絵に移行してまた絵を描き始めています。
今のアニメの技術はここまで進化したのか!と心底驚いております^^
こちらの記事を読んで、もっと頑張ろうと思えました^^ ありがとう^^
ありがとうございます
どうしようなどと考え、生きる目的ややりたいことはあるのに、何もする気が起きないというか本気で楽しめないというか・・・。
せめて絵が上手ければ、、でも、デッサンやら何やらはやる気が起きなくて、、それでも楽しんで描けていれば、逃げでもいいから何かこう、楽しいと思えるようになれば、そんなことを考えていくうちに、いつからだろう・・・絵が描けなくなったのは?・・・人と比べだしてからだ。
競争の果てにあるのは戦争である。
競争から優劣が生まれ、優劣から区別と差別が生まれ、そして、人は人を憎み、妬み、戦いになるのである。
これは私の勝手な自論ですが・・・。何も考えずに楽しんでいられたら、どんなに幸せだったのだろうか、才能が無いのは自分でよくわかっているが、それでもやめられないし、やめたくないし、これしかないし、、でも、描けないし、描かないからゲーム製作は進まないし・・・。まさに、あれですね、オワタ式です。やらないといけない、これが実は一番駄目な考えなのかもしれないですが、、我ながら度し難いものです。
クドクドと自分の事を書いてしまいましたが、主さんは絵を書く楽しさを想い出せたようで、正直羨ましいですが、良かったとも、おもいます・・・ほんのちょっとだけだけどね!それでは、駄文長文を残して失礼いたします。
SNSが発達した今たくさんの可愛くカッコいい絵がどんどん流れてきて、もう自分なんて描かなくていい、どうせ下手だしって言い訳してました。
本当はずっと苦しかったです。下手だと認めるのが辛くて、描かなければ自分が下手だと再確認しなくて済んだから。
でもまた今日から描いてみようと思います。例え下手でも楽しんで自分の好きなものを少しずつ。
勇気をくれてありがとうございました。
と半年から1年くらい思ってたんですけどね。
ふと気に入った思い出を久しぶりに絵にしてみようと思ったとき、
最初こそは思うように描けなかったが自分のことを描くというのは本当に懐かしくも楽しい。
誰かの作品と比較すれば当然技術的に見劣りもするのだが、
何より思い出を一番よく知る自分が描くものだから自分で見ていて気分も良くなるので。
発想も技術も関係なく、ただただ気持ちの良い絵を描いていて楽しいと思えたのは非常に良かったと思っている。