高等教育の核心は、探求心を教え込み、行く手に待ち受けている混沌とした世界に備えて精神を鍛えるところにある。だが、米国のキャンパスは反対方向へ向かっている。現在のスローガンは「安全な空間」をつくることだ。大学の図書館はフィクション作品に「事前警告」を発している。学生は、レイプを描いているという理由でオウィディウスの『転身物語』に近づかないよう警告される。シェークスピアの『ヴェニスの商人』(反ユダヤ主義)、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』(女性蔑視)、ハーパー・リーの『アラバマ物語』(家父長制)も警告の対象だ。
■言葉遣いを自己検閲する教職員
「マイクロ・アグレッション」――疎外された集団に対して無意識に不快な発言をすること――という言葉は日常的なボキャブラリーに加わった。筆者が学部長らと交わした会話で、人の気に障ることを言う不安から自分の言葉遣いを検閲していると教職員が認めたことが何度あったか、もう数えられなくなった。それで仕事を失う恐れが生じることもある。
目標は、人の心から偏見を取り除くことだ。だが、それが人種意識を高めるというゆがんだ効果をもたらすこともある。米国のキャンパスでは(それ以外の場所でも)、ある批評家が「人種セラピー・コンプレックス」と名づけたものが拡大している。大学の教職員室は、多文化指導カウンセラーやダイバーシティー・オフィサー、人種的エチケットについて研修を行う任務を負う人たちで膨れ上がっている。彼らの仕事は人種に関する無神経さを察知することだ。当然、存在しないところに、それを見つける人もいる。そうした職が設けられるほど、その背後の既得権が大きくなる。小説家アプトン・シンクレアが言ったように、「その人の給料が物事を理解しないことにかかっているとき、人に何かを理解させるのは難しい」のだ。
米国の街頭で人種的偏見が健在なのは間違いない。武器を持たない黒人容疑者に対してむやみに銃を撃つ警察の対応の頻度を見ればいい。だが、言論の自由を封殺することは答えにならない。昨年は、学生の抗議によって、大勢の外部講演者――国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏、元国務長官のコンドリーザ・ライス氏、女性の権利の活動家、アヤーン・ヒルシ・アリ氏を含む――が校内イベントへの参加中止を余儀なくされた。
スミス大学の学生たちによると、IMFのトップとして、ラガルド氏は「世界の最貧国で失敗した開発政策の元凶」だった。ライス氏はイラク侵攻を支持した「戦争犯罪者」だとラトガース大学の学生たちは言った。アリ氏はイスラム嫌悪の罪を犯しているとミシガン大学の学生たちは言った。
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