国の来年度予算案の編成作業が追い込みに入った。とかく新たな施策に注目が集まるが、既存の予算をどう改めるか、とりわけ「むだ」とされた事業を見直せるかは重要な課題だ。

 会計検査院は先月、年に1回の決算検査報告をまとめた。予算の支出や税の徴収などで「問題あり」としたのは570件、総額で1600億円に迫る。しかし、その中身は、法律や制度に沿って予算が適切に執行されているかどうかが中心で、政策自体の有効性の判断には及び腰だ。

 省庁に予算の点検を迫る政府の「行政事業レビュー」では、有識者をまじえた公開検証が行われ、原子力関連など55事業について問題点が指摘された。これも個々の政策の存廃には踏み込まない。民主党政権の「事業仕分け」が短時間の議論で次々と廃止や予算削減を打ち出したことへの批判を踏まえたルールだという。

 ともに物足りなさが募り、制度や仕組みの改善が不可欠だが、ここは「政治」の出番ではないか。

 最終的に予算・決算案や個々の制度を支える法案を審議、議決する国会の責任は大きいが、まずは各省庁で官僚を指揮する閣僚や副大臣、政務官に奮起を求めたい。

 3日間行われた行政事業の公開検証では、「行政のむだ撲滅」に熱心なことで知られる河野太郎・行革担当相が連日出席し、国民の関心を高めるのにひと役かった。河野氏が原発政策への批判的な立場を含めて本来の厳しい姿勢を抑えがちだったのは残念だが、政治家が先頭に立つことの意義と効果が小さくないことを示した。

 むだや非効率を指摘されても多少改善してお茶を濁し、同じような予算を要求して、財務省もそれを認める。そんな状況に目を光らせ、歯止めをかける役割は政治にしか果たせない。

 再生可能エネルギーを促進する補助金が今年度、経済産業、農林水産、環境、総務の4省に散らばりながら31もあり、総額は1027億円に達する――。この秋、そんな縦割りの実態が明らかになったが、調査を命じ、役所間の連携を促したのは高市早苗総務相だという。

 政治家の権限は強い。やる気次第で官僚を動かせるし、閣僚でなくてもすべての議員に国政調査権がある。予算への疑問をどんどん示し、費用対効果の観点から政策効果を高めていけるかどうか。

 政治家一人ひとりが問われていることを肝に銘じてほしい。