中国が渇望する「アジア版EU」
東アジアサミットは、2005年12月にマレーシアで、16ヵ国が参加して始まった。ASEAN10ヵ国を中核として、北東アジアの日本、中国、韓国、それにインド、オーストラリア、ニュージーランドの16ヵ国である。
2011年からは、アメリカとロシアも加わり、18ヵ国態勢となった。日本はAPECから引き続き、安倍首相が参加したが、中国は習近平主席から李克強首相に、ロシアもプーチン大統領からメドベージェフ首相にバトンタッチした。今年の主要テーマは、まさに中国の南シナ海埋め立て問題に、どう対処するかということだった。
この東アジアサミットに先がけて、11月21日午後に、ASEAN+1が開かれた。日本、中国、韓国がそれぞれ個別に、ASEAN10ヵ国と向かい合う会議だ。このうち、ASEAN+中国の首脳会議を見てみる。
中国は20世紀後半に、1955年のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)、1960年代から70年代にかけてのベトナム戦争を始めとして、「裏庭」とも言えるASEANの問題に、深く関わってきた。そして冷戦が崩壊した1991年に、ASEANの非公式なパートナーとなった。
胡錦濤政権が始動した2003年には、ASEANと、正式に戦略的パートナーシップ関係を結んだ。2010年からは、ASEANとの自由貿易協定を発効させた。
2013年に発足した習近平政権は、ASEANに「運命共同体になろう」と呼びかけ、さらに接近していった。そして今年10月には、北京で初めて、中国・ASEAN国防大臣会議を開くまでになったのである。
中国がこれほどASEANにコミットするのは、主に経済及び軍事的理由からである。中国とASEANの今年1月から10月までの貿易額は、3,792億ドルに達し、これは日中貿易を遥かに凌いでいる。双方の累計投資は計1,500億ドルを超え、双方の留学生は18万人を超える。双方の観光客は、今年初めて2000万人を突破する見込みだ。
特に今年は、12月31日に、ASEAN経済共同体が発足する記念すべき年である。これは、いわば「アジアのEU」を目指す第一歩で、まずはASEAN10ヵ国の域内関税を完全撤廃する。来年には、人の移動の自由を進めていこうとしている。EUのように共通通貨を作るには、道のりは遠いが、ともかく成長著しい6億人の統一市場が生まれるのである。
中国にとっては(もちろん日本にとっても)、ビッグチャンスの到来だ。
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