最近、日経新聞などでよく聞くROE。なぜ今注目されているのでしょうか。この記事ではROEが注目されるようになった背景をかなり大雑把にまとめています。
ROEという指標についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。
経営指標とは、企業のメッセージである
まず前提としてROEは経営指標で、教科書的な説明になりますがReturn On Equity(自己資本利益率)のことです。簡単に言うと「投下した資本に対し、企業がどれだけの効率よく利潤を上げられるのか」を表す経営指標です。
この経営指標は、これから目標として目指していきますという投資家に対する企業からのメッセージになり、IRなどに記載されます。投資家に対し目標として掲げた以上、企業はその目標を達成するための行動をとるようになります。
プロ野球で打者に例えてご説明します。ある選手がホームラン数を年間40本打ちますと宣言した場合、ファンはホームランを期待しますから、その選手はヒットを量産することではなく、ホームランを打つための行動を取るようになります。それと同じようにROEを指標にすることで、企業はROEを目標数値に近づける行動をとるようになります。
ROEを経営指標に掲げることは、「投資家のお金を使って、効率よく利益を上げていきますよ」という企業から投資家に対するメッセージなのです。
なぜ今ROEなのか
それではなぜ投資家のお金を使って、効率よく利益を上げていくメッセージが求められるようになったのでしょうか。ROEが注目されるようになった背景は大きく3つあります。
①バブル崩壊(1990年代)
バブルが崩壊するまではほとんどの企業が株式の持ち合いといって、株主構成が自社のお付き合いのある企業によって成立していました。そうすると、投資はしているけれど、お互いの経営に口を出さないという状況が続きました。
しかしバブルが崩壊することによって、ほとんどの日本企業は経営が厳しくなりお互い株式を手放しました。日本企業が株式を手放したことによって、外国人投資家が日本の市場に参入してくるようになりました。
日本よりも株式市場が成熟している外国人投資家は「もっと投資家に向いた経営をして欲しい」と声をあげてきました。
②伊藤レポート(2014年8月発表)
「伊藤レポート」は経済産業省が中心となり進めた「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書です。プロジェクトのリーダーを務めた一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄先生の名前から「伊藤レポート」と呼ばれています。
このレポートの中身は大きく2点の提言があります。
一つ目はバブル崩壊後の経済の冷え込みの最大の原因は、日本企業の利益効率が低いこと。
二つ目は日本企業が利益効率性を高めるためには、企業と投資家の関係性を対立的に捉えるのではなく、協調的に捉えて、経営者と投資家がもっと対話すべきだと提言しています。
本来は企業も投資家も、持続的な成長を目指すのなら対話して、実現していきましょうということです。
③日本版スチュワードシップ・コード(2014年2月導入)/コーポレートガバナンス・コード(2015年6月導入)
日本株に投資している国内外の機関投資家に企業との対話を促す「日本版スチュワードシップ・コード」を制定。会社のガバナンスを強化するための「コーポレートガバナンス・コード」を金融庁が制定しました。
日本版スチュワードシップ・コードは投資家に対してのものです。投資家は企業に対し、長期的な発展を促すための対話を重視するものとしています。
コーポレートガバナンス・コードは、東京証券取引所に上場する企業は独立した社外取締役を2人以上置くことなどが求められています。
まとめ
ROEが今求められている理由は、外国人投資家の流入により、投資家からの要請が強くなってきていることと、経済産業省や金融庁などの国策と絡んでいることがあげられます。もっと細かくみていくとアベノミクスとの関わりやスチュワードシップ・コードの歴史など(日本版というからにはもとがあるわけです)があり非常に面白いです。
より詳細につきましては、また別の機会に掲載させていただきます。
参考文献:
「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書 第1版第1刷
著者:小宮一慶
出版社:株式会社PHP研究所