米国のリベラリズムにとって、今は勝利の瞬間であるはずだ。ほんの数年間で同性婚が受け入れられ、マリフアナが合法化された。米国は初の黒人大統領を2度選出し、間もなく初の女性大統領を選ぶ可能性が十分にある。だが、米国の大学キャンパスでのポリティカル・コレクトネス(PC、政治的公正)の復活――そして、けたたましさを増す多くの左派知識層――は別の物語を伝えている。
■多様性の名の下に
左派は言論の自由を擁護する代わりに、封じようとしている。ダイバーシティー(多様性)の名の下に同調を要求する。危険にさらされているのは、米国民主主義の性格だ。アイビーリーグのエリート校が熱に耐えられないのだとすれば、それはどんな厨房になるのだろうか(注:エリート校の学生たちが我慢できないなら、一般の人がどう思うかは言わずもがなだ。If you can’t stand the heat, get out of the kitchen. 「熱がいやなら厨房から出よ」という言い回しを基にしている)。
PC運動は人種問題から脱却するどころか、逆に固定させている。プリンストン大学の学生たちは11月、米国の第28代大統領で元プリンストン大学学長のウッドロー・ウィルソンの名前をキャンパスから消し去ることを要求し、学長室を占拠した。元大統領の名にちなんだものには、名高いウッドロー・ウィルソン・スクール(公共・国際政策学部)や寄宿舎、大食堂の壁画が含まれる。抗議した学生たちは、教職員向けの「文化的能力研修」の実施と、疎外された諸民族に関する必須科目の導入も求めた。
ウィルソンに反対する議論は単純だ。彼は連邦政府機関の職員に人種隔離を再導入した。好意的に見るならば、重要な歴史的人物であることだ。ベルサイユ条約の起草者でもあった。
ひとたび人の名前を消し始めたら、それは終わりのない旅路となる。ロジックに従えば、ワシントンを改名する必要があるだろう。米国の初代大統領は奴隷を所有していたからだ。トマス・ジェファーソンやジェームズ・マディソンなどは、もっと罪深かった。彼らはそれだけに基づいて評価されるべきなのだろうか。ウィンストン・チャーチルは臆面もない帝国主義者だった。だが、ナチズムに立ち向かったことで、歴史は彼に甘い評価を下す。フランクリン・ルーズベルトはどうか。米国の第32代大統領は公民権を促進するために何一つしなかったし、第2次世界大戦中には12万人の日系米国人を抑留した。複雑でない歴史的人物などというものは存在しないのだ。
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