スタジオラグへおいでやす - バンド・音楽・楽器のお役立ちサイト

音楽CDが生き残るためにはどのような考え方が必要か?

読了まで約6分

皆さんは最近CDを買ったのはいつでしょうか?

私は丁度1ヶ月くらい前に買ったのが最後です。

今回はCDが売れなくなったと言われていることに対して考えてみたいと思います。

CDの歴史と現状

CDが登場したのは1982年のこと。

その後CDはみるみる内に社会に浸透していき、すぐに「音楽を聴く為に必要不可欠なメディア」というそれまでレコードが担っていた役割を担うようになりました。

そして1998年、CDの年間生産枚数は過去最大の302,913千枚に登り、それからは現在まで右肩下がりが続いている状況です。

CDが売れなくなった要因としてはまた後ほど詳しく述べますが実際CDが売れなくなっているというのは数字でも示されている事実です。

CD不振の要因と音楽との関わり方

それではここでCD不振の要因を少し考えてみましょう。

TSUTAYAなどのレンタルショップの登場や、iTunesをはじめとする有料の音楽配信サービスなどがよく要因として挙げられますが、ここではそれに加えてYouTubeなどの動画投稿サイトやスマホのアプリなど無料で好きな音楽を聴く事ができるサービスも加えて検証してみたいと思います。

レンタルショップ

TSUTAYAに代表されるレンタルショップは1980年に東京都三鷹市に日本で初めて登場し、その後エイベックスの現CEO松浦氏が学生時代に働いていたという「友&愛」など数多くの貸レコード店が登場しました。

このようなレンタルショップでは新品を購入するよりもずっと安くレコードやCDを聴くことが出来るためどんどん人気を集めました。

しかし当時はそのようなレンタルショップに関する法律が整備されておらず、著作権侵害だとして訴訟を起こされるなどの問題が相次ぎました。

そこで1985年に著作権法が改正され、発売日から1年間は著作者がレコード・CDのレンタルを許諾または禁止することが出来る貸与権と、レンタルショップがレンタルによって得た報酬に対して著作者が報酬を請求出来る報酬請求権が定められました。

このように法律的にも認められたことから1989年には全国で6,213店舗にまで増えました。

しかしそれをピークにレンタルショップの数は減少し続け、2015年6月には2,370店舗まで減少しています。

これらの事から、一概に店舗数のみで語る事は出来ない面もありますが、TSUTAYAなどのレンタルショップがCD不振の直接的な要因であると言う事は難しいように思われます。

有料音楽配信サービス

2つ目の要因の仮説としてとして有料の音楽配信サービスについて見てみましょう。

このようなサービスが登場したのは1990年代後半で、多くのユーザーに広く普及したのはAppleがiTunes Music Store(現在のiTunes Store)を開始した2003年頃からです。

下のグラフは2005年からの有料音楽配信サービスの年間売り上げ金額と数量の推移です。

図表1 有料音楽配信の年間売り上げ金額と年間ダウンロード回数

有料音楽配信の年間売り上げ金額と年間ダウンロード回数

出展 一般社団法人日本レコード協会のウェブサイト 有料音楽配信売り上げ実績のページ(2015年11月28日)

このグラフにあるように2008年、2009年をピークに右肩下がりになっており、こちらも直接CDの売り上げ低下に影響を与えているとは言えなさそうです。

動画投稿サイト、スマホアプリ

最後にYouTubeなどの動画投稿サイトやスマホの無料アプリなど、お金を払わずに好きな曲を聴けるサービスについて見てみます。

YouTubeが登場したのは2005年、スマホが普及し出したのが2010年で、このようなアプリはその頃から徐々に登場しました。

YouTubeなどの動画投稿サイトにはみなさんご存知の通り、各アーティストやレコード会社のアカウントでPVがアップされていたり、個人ユーザーによって様々なアーティストの楽曲がアップされていたりしていますね。

またスマホアプリでは、そのYouTubeにアップされている楽曲を次々連続で再生したり、プレイリストを作ってそれをシャッフルして聴けたりと、まるで音楽プレーヤーのようなUIで操作できます。

また、この記事を書いている時には見つける事ができなかったのですが、半年くらい前にはYouTubeとは別で、どこかのサーバーにアップされている楽曲のデータを元に、アルバム単位で曲を聴けるようなかなり黒に近いグレーなアプリもありました。

このような無料で好きな曲を聴ける環境が揃った事はCDが売れなくなった事に大きく関与しているのではないでしょうか。

これを裏付けるデータとして、日本レコード協会が実施した、音楽メディアユーザー実態調査(2015年11月28日)というものがあります。

この調査はユーザーの音楽との関わり方についての調査で、ユーザーを4つのセグメントに分類しています。

1つ目は「音楽を聞くために、音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」有料聴取層、2つ目が「音楽にお金を支払っていないが、新たに知った楽曲も聞いている」無料聴取層、3つ目が「音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴いていない」無料聴取層(既知楽曲のみ)、そして「音楽にお金を支払っておらず、特に自分で音楽を聴こうとしていない」無関心層の4つです。

最新の2013年度の調査では有料聴取層が全体の44.5%であるのに対し、2つの無料聴取層の音楽にお金を支払わない層が全体の38.1%とほぼ同数となっていて、お金を支払わずに音楽を楽しんでいるユーザーが多いことが分かります。

また、2つの無料聴取層が音楽商品を購入しない理由としては、「購入しなくても好きな時に聴取できた(YouTube等を使って)ため購入しなかった」、「パソコン・スマートフォン等で視聴・利用できる無料の動画配信サイト(YouTube等)やアプリで満足している」、「パソコン・スマートフォン等で視聴・利用できる無料の音楽配信サイトやアプリで満足している」、「購入しなくても無料ダウンロードで入手したため購入しなかった」など、YouTubeや無料の配信アプリで音楽を楽しんでいるユーザーが多いようです。

さらに、有料聴取層の音楽商品購入減少の理由にも同じくYouTubeや無料配信アプリで聴取するといった回答が目立っており、無料で好きな音楽を好きな時に聴ける環境があることがCDを買わない理由の大きな要因になっていると考えられますね。

一方でライブは…

ここまでで、お金を払わずに好きな音楽を聴く事ができる環境が整った事でCDが売れなくなっているという事を述べましたが、無料で聴ければCDを買わない理由として、音楽がコピー出来るものとなってしまった事が挙げられるのではないでしょうか。

CDはデジタルな音楽データを円盤に焼いたものであるため、パソコンの性能が上がるにつれてコピーをする事ができるようになりました。

また、インターネット技術の向上によってそのデータをアップロード出来るようになりました。

つまり、CDの中身の音楽にのみ着目して言えば音楽はコピー出来るものになってしまったのです。

その一方で、ライブエンターテイメント市場の拡大が話題となっていて、CDが売れないからと言って音楽産業が一概に右肩下がりであるとは言い切れない状況となっています。

図表2 年間公演数の推移

年間公演数の推移

出展 一般社団法人コンサートプロモーターズ協会のウェブサイト 基礎調査推移表のページ(2015年11月28日)

このグラフは国内で行われるライブやコンサートの年間公演数の推移をまとめたものです。

このグラフを見て頂ければ分かるように、2000年に入ってからの増加が著しく、2005年から2014年までの10年間で2倍以上の公演が行われています。

ではなぜ今ライブが増加しているのでしょうか?

それは、音楽がコピー出来るものになってしまった今、私たち音楽ファンは「生の体験」としてのコピー出来ない音楽を求めているからという事ができると思います。

ライブは映像として記録する事はできますが、会場の空気やアーティストとの身体的・心理的距離、演奏の迫力は映像に記録する事はできません。

つまりライブとは会場に居た人しか経験することの出来ないコピー出来ない音楽なのです。

このようにコピー出来る音楽が当たり前となった現在だからこそ、コピー出来ない音楽の体験の価値が見直されているのではないでしょうか?

360度契約

そしてライブが増えているもう1つの要因がレコード会社とアーティストとの間の契約方法が変わってきていることです。

というのは、従来の契約方法ではレコード会社の権利はアーティストのCDの売り上げのみで、ライブやグッズの売り上げ、テレビやCM出演のギャラなどはすべてアーティストの所属するプロダクションの権利でした。

しかし、今話題になっている新しい契約はこれらのかつてプロダクションの権利であった部分もレコード会社が得られるというものです。

この契約を様々な方面の権利を包括した契約という意味で360度契約と呼びます。

CDが不振となっているレコード会社がアーティストとこのような契約を結んだ上でライブを開催すれば、その売り上げはレコード会社が管理することが出来るのでライブが増えていると言うことが出来ると思います。

最後に

ここまでCD不振の要因とその一方で増加するライブの増加要因、360度契約に至るまでまで比較的幅広く書かせて頂きましたが、最後に私個人の意見や望みも含めたまとめを書いて終わりにしたいと思います。

結局CDはどうなる?

この記事で述べてきた要因に加え、今年に入って話題になっている月額制の音楽聴き放題サービスなども踏まえればCDがこのまま衰退していってしまう事は実際避けられない状況にあると言えると思いますし、至極当然の流れであると思います。

新しい「入れ物」が登場すれば古い「入れ物」は衰退します。

しかし私たち音楽ファンがCDに対する意識を変えることでCDの絶滅だけは避けられるのではないかと考えています。

というのも、ジャケット・歌詞カード・盤面・帯など、CDのパッケージ全てを自らの手でデザインしているアーティストもおり、そこには音楽と同じくメッセージが込められています。

CDを「音楽の入れ物」として捉え中身の音楽のみに関心を持つのではなく、CDを1つの作品として捉える事が重要だと思います。

このような認識は現在のレコードに対する認識と近いものがあるように思います。

音楽を聴くためのメディアとしてのポジションはCDに奪われてしまったものの、いまだにレコードに対して特別な価値を見出しているファンの方も多く、現在でもレコードは新しくリリースされています。

つまりCDも私たちの認識次第でレコードのようにメインストリームからは外れても生き続けることが出来るのではないのかと思うのです。

個人がCDに価値を見出すことが活路を開く

冒頭でも述べたように私自身CDをあまり沢山買う方ではないのですが、数年前から心がけている事がありまして、それはデータのみで音楽をやり取りしないという事です。

私自身バンドをやっていてCDを作った経験があり、1枚のCDを作る大変さや出来た時の喜びを実際に体験しました。

このように一度作り手側に回ってみればCDを1つの作品として考えられるようになりました。

方法は1つだけではないと思いますが、音楽ファンの方それぞれが何らかの方法でCDという作品に対する思いを持って頂ければこれからもCDがなくなる事なく生き続けるのではないでしょうか?

著者プロフィール

羽根佳祐

著者の記事一覧

シェア・RSS登録

このサイトをご覧頂きありがとうございます。

もし気に入って頂けましたら、RSSリーダーの登録メルマガの登録もよろしくお願いします!

関連記事