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 フランスにとって「魔の13日の金曜日」となった先月パリでの同時多発テロを受けて、資本市場には2001年を連想した警戒感が漂い、その翌週明けの東京市場は株安・ドル安・債券高で始まり、上海株も下落した。だが欧米市場は徐々に落ち着きを取り戻し、リスクオフのムードは予想以上に短時間で消失することになった。痛ましい事件が人々に与える心の傷はなかなか癒えないが、資本市場の心理転換は無情なほど早いものである。

上向いてきたフランス経済冷却化も

 2001年9月11日に世界に衝撃をもたらしたテロ事件の際には、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQが早々に株式市場の閉鎖を決定し、その日から金曜までの4日間は取引停止状態となった。当時の為替市場ではドル円が122円台から118円台まで急落、金融機関が一斉にドル調達に走ったことから短期金利が約2%も急上昇した。国債決済への不安感から債券市場では流動性が大きく低下し、ニューヨーク市場は事実上の麻痺状態に陥ったのである。

 だが今回は、市場機能に対する信頼感が損なわれることはなかった。2001年はドルの総本山であるニューヨークが狙われたことで市場不安が増幅されたのに対し、今回はパリが攻撃対象になったことでユーロは下落しているが、金融システムに対する目立った懸念はない。

 無差別テロは確かに個人レベルでの恐怖感を増長するが、経済全体を構造的に委縮させるかどうかは、その攻撃対象に拠る。電気やガス、水道などの社会インフラや金融システム或いは大規模な工場施設の破壊といった行為でなければ、テロリストが狙う西欧社会への攻撃は、それほどの経済効果はないのだ。急速に回復を見せた先進国の株式市場の認識は、そんなところであろう。

 とはいえ、欧州を代表する都市がテロ攻撃にあったことの影響は小さくないかもしれない。ECBのコンスタンシオ副総裁は「投資家の欧州への信頼を損ねる可能性がある」と指摘、プラート理事も家計や企業の心理が冷え込んで景況感が悪化する恐れがある、と警戒感を示している。

 欧州は、ギリシア財政、難民受け容れ、ポルトガル政局といった難問続きの状況にある。景気回復の足取りが進まない中で、中国経済減速という逆風にも直面している。その中で起きたパリ同時多発テロは、7-9月期にGDPが前期比0.3%増と折角上向いてきたフランスの経済を再び冷却化させる可能性がある。季節柄、クリスマス商戦に影響が出ることは避けられないだろう。米国も2001年には、ITバブル崩壊の後遺症があったにせよ、一時的な景気後退に陥ったことが思い出される。

 報復姿勢を前面に押し出すオランド大統領は「これは戦争である」として対シリアの空爆強化を宣言している。2012年の就任以来、殆ど見せ場のなかった同大統領にとっては支持率回復の絶好の機会でもあろうが、欧州内ではテロ再発への懸念が高まる一方であり、フランス以外に消費や投資の意欲低下が波及することも想定される。


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