「リプリー」(原題: The Talented Mr. Ripley)は、1999年公開のアメリカのクライム・サスペンス&スリラー映画です。1960年公開のフランスとイタリアの合作映画「太陽がいっぱい」と同じパトリシア・ハイスミスの小説「The Talented Mr. Ripley」を原作とし、アンソニー・ミンゲラ監督、マット・デイモン、グウィネス・パルトロー、ジュード・ロウらの競演で、愛と富を渇望する青年が自ら招く悲劇的運命を描いています。第72回アカデミー賞で、脚色賞、助演男優賞(ジュード・ロウ)、音楽賞、美術賞、衣装デザイン賞にノミネートされた作品です。
監督:アンソニー・ミンゲラ
脚本:アンソニー・ミンゲラ
原作:パトリシア・ハイスミス「The Talented Mr. Ripley」
出演:マット・デイモン(トム・リプリー)
グウィネス・パルトロー(マージ・シャーウッド)
ジュード・ロウ(ディッキー・グリーンリーフ)
ケイト・ブランシェット(メレディス・ローグ)
フィリップ・シーモア・ホフマン(フレディ・マイルズ)
ジャック・ダヴェンポート(ピーター・スミス=キングスレー)
ジェームズ・レブホーン(ハーバート・グリーンリーフ)
ほか
【あらすじ】
1958年のニューヨーク。貧しく孤独な青年トム・リプリー(マット・デイモン)は、ピアノ奏者の代役を務めたパーティで、大富豪のグリーンリーフ(ジェームズ・レブホーン)に息子のディッキー(ジュード・ロウ)と同じプリンストン大学の卒業生と勘違いされます。とっさにディッキーの友人を装ったトムは、グリーンリーフに気に入られ、地中海で放蕩三昧のディッキーを連れ戻すように頼まれます。これをチャンスと思ったトムは、ジャズが好きというディッキーと話を合わせるためにジャズの知識を勉強、イタリア行きの船中ではディッキーと偽って名家の令嬢メレディス(ケイト・ブランシェット)と知り合います。
イタリアに着いたトムは、作家の卵のマージ(グウィネス・パルトロウ)と豪奢な生活を送るディッキーに、大学の友人の振りして近づきます。父親に依頼で自分を連れ帰ろうとするトムにディッキーは反発しますが、トムがジャズに詳しいと知ると、ヨットやジャズクラブに連れ回して遊ぶようになります。豪奢なバカンスを共に過ごすうちに、トムはディッキーに好意を抱くようになります。
ほどなくディッキーはトムを邪魔者扱いしはじめ、お別れにサンレモへ小旅行に出かけます。ボートで海上に出た二人は言い争いになり、トムはディッキーを撲殺してしまいます。ディッキーの死体を海に沈めホテルに戻ったトムは、ディッキーになりすますことを思いつきます。彼は、トムとディッキーの名で別々のホテルに宿泊、悠々自適の二重生活を始めますが、ディッキーの旧友フレディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と、マージはトムを疑いますが、失意のマージを付き添うピーター(ジャック・ダヴェンポート)に、トムは好意を寄せます・・・。
イタリアの美しい風景や、アンソニー・ミンゲラ監督の演出する上流階級の贅沢で優雅な環境の中で、マット・デイモンの落ち着かない素振りが際立ち、最後までスリリングな展開が続く、完成度の高いサスペンス・スリラーです。名作「太陽がいっぱい」を生んだ原作も素晴しいのですが、本作の脚色も素晴しく、またオスカー俳優が4人、候補が1人という豪華キャストの競演が見事です。彼らはまだ若く、頂点を目指す勢いで輝いている時期です。
- マット・デイモン(公開時29歳)
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)で脚本賞受賞、助演男優賞ノミネート等 - グウィネス・パルトロー(公開時27歳)
「恋におちたシェイクスピア」(1998年)で主演女優賞受賞等 - ジュード・ロウ(公開時27歳)
「リプリー」(1999年)で助演男優賞にノミネート等 - ケイト・ブランシェット(公開時30歳)
「アビエイター」(2004年)で助演女優賞受賞等 - フィリップ・シーモア・ホフマン(公開時32歳)
「カポーティ」(2005年)で主演男優賞受賞等
特にケイト・ブランシェットとグウィネス・パルトローは、それぞれ前年の「エリザベス」と「恋におちたシェイクスピア」で主演女優賞を争っており(グウィネスに軍配)、本作では虚実のディッキー・グリーンリーフを奪い合う競演で、見応えがあります。
トム・リプリー役は、当初、トム・クルーズを予定していましたが、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のマット・デイモンを見たアンソニー・ミンゲラ監督が、マットに変えました。他に、レオナルド・デカプリオやクリスチャン・ベールが考慮されていましたが、それぞれ個性があり、誰がやっても面白そうです。
「イングリッシュ・ペイシェント」(1998年)でアカデミー賞監督賞を受賞したアンソニー・ミンゲラ監督は、本作の他にも「コールド マウンテン」(2003年)などの監督を務めていますが、2008年にガン手術後の合併症の為、54歳の若さで亡くなってしまいました。
原作者のパトリシア・ハイスミスはアメリカの作家で、本作の原作となった「The Talented Mr. Ripley」は彼女の「トム・リプリー」シリーズの一冊です。
- The Talented Mr. Ripley (1955年) 邦題「太陽がいっぱい」、「リプリー」
- Ripley Under Ground (1970年) 邦題「贋作」
- Ripley's Game (1974年) 邦題「アメリカの友人」
- The Boy Who Followed Ripley (1980年) 邦題「リプリーをまねた少年」
- Ripley Under Water (1991年) 邦題「死者と踊るリプリー」
他にも何冊かの長編を書いており、彼女の長篇第1作「見知らぬ乗客」がヒッチコックにより映画化され、長篇第3作「太陽がいっぱい」もヒット映画となり、ハイスミスは人気作家となりました。その後も、数多くの作品が映画化されており、来年、日本で公開されるケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ主演の「キャロル」もパトリシア・ハイスミスの原作です。
マット・デイモン(右)とケイト・ブランシェット(左)
ジュード・ロウ(中央)とグウィネス・パルトロー(左)
イタリアンなライフ・スタイルが美しい
「リプリー」の原作本
アンソニー・ミンゲラ監督作品
「イングリッシュ・ペイシェント」のDVD(Amazon)
映画化されたパトリシア・ハイスミスの作品のDVD(Amazon)
「見知らぬ乗客」(1951)
「太陽がいっぱい」(1960)
「リプリーズ・ゲーム」(2002)
「ギリシャに消えた嘘」(2014)
日本未公開 「キャロル」(2015)